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第十話:真実

 

 親愛なるフィーユへ



 君がこれを読んでいるということは、僕らは死んでいて君がその真相を求めてきたのだろう。


 あの様な別れ方となってすまない。


 君と共に最後の旅をしたあの時、オレイユからの情報でこの国が戦争を起こそうとしているのを耳にした。

 主要な都市では冒険者や出稼ぎの人らを脅しも交えて無理やり招集していることも。


 このまま戻れば、僕らのパーティーも間違いなくその対象になる。そう感じた。


 あの王なら逃げようとすれば僕らの家族を人質に取ってくるだろう。


 だが、フィーユは別だ。

 孤児だった君なら、王都より離れたあの村に置いてくれば招集の手を逃れられると思った。


 真相を教えれば、君は無理にでも着いてきただろう。

 だから強引に追放させてもらった。


 本当に、悪いことをしたと思ってる。

 恨んでくれて構わない。

 許してくれとは言わない。



 君の支援にはいつも助けられていた。

 邪魔だと思ったことなんて一度もない。


 君との冒険は僕にとって最高の時間だった。

 こんな形の別れになってしまったことだけが、唯一の心残りだ。


 どうか、君には争いと無縁の場所にいて欲しい。

 心優しい君に戦場は似合わない。


 ぼんやりしているようで、強かで賢い君ならなんとかなると思ってる。



 最後に



 今まで一緒に旅をしてくれてありがとう。


 ーーーー






 …


 ……


 私がなぜパーティーを追放されたのか、やっとわかりました。


 テトは…みんなは私を守る為にそうしたのですね。



 みなさん、悪い人です。

 私に隠し事なんかして。



 みなさん、優しい人です。

 私なんかのためにここまで配慮してくれて。



 言ってくれたら、付いていったに決まってるじゃないですか。

 死ぬときまで一緒にって、私はそう思ってたんですよ。


 家族のいない私にとって、唯一家族と呼べるあなた達が居なくなったら、私はどうやって生きていけばいいんですか。


 許せません。


 …許せませんよ。



「また…ひとりぼっちじゃないですか」







「フィーユ」


 私の肩にルソンの手を感じます。


「僕がついてる…それじゃ駄目か?」


 私を教会から連れ出した時よりも自信のなさそうな声。


 けれども、私はこちらの方が好きですね。背中を預けるならこのくらいのほうが良いです。


「そんなことありません」


 思い返してみれば、私はルソンのことをあまり見ていなかった気がします。

 自分のことばかり優先して、彼が何を思っているのか、どういうものが好きなのかとか、そういった他愛のない雑談も殆どしてなかったです。


 ルソンはずっと、私のために動いてくれていたのに。


 私は悪い女です。


「ルソンがいなければ、私はここまで来られませんでした」


 あの時ルソンが声をかけてくれなかったら、私はまだあの教会にいたと思います。

 真実を知ることもなく、ただただ泣くだけの日々を過ごしていたことでしょう。


 ルソンには本当に助けられました。


「…これからも、私と一緒に居てくれますか」

「もちろん、フィーユがよければいつまでも」


 割と勇気を出して言ったのですが、即答されてしまいました。

 その表情は真剣そのもので、迷いのない目をしています。


 ルソンはもしかしたら女誑しの才能があるかもしれません。


「二人とも…俺がいるの忘れてないか?」


 …。



「すみません」


 ジャンの存在をすっかり忘れてました。


「まあいいさ、この家の裏手にテト達の墓を作ったんだ。良ければ行ってやってくれ」


「はい」






 少し盛られた土に立つ、簡素な木の杭。

 離れた位置からでもわかる、墓。


 遺体は回収出来てないとのことですが、恐らくもう何も残ってないでしょう。この辺は魔物が多いので遺体が何日も残るとは思えません。


「ルソン、少し一人にしてくれますか」


 私についてきて外へ出たルソンには悪いですが、この時間だけは私と彼等だけにしたかったです。


 一歩、また一歩とその墓に近付きます。


 これまでの重い足取りや早る足取りと違い、遅くも早くもないペースでその場に向かいます。


 心の中は穏やかで、これまでの感情を何処かに置いてきてしまったかのように凪いでいます。


 墓の前に辿り着いてもその心境に変わりはありませんでした。



 すっかり小さくなってしまったテト達の前に座り、息を一つつきます。



「お久しぶりですね」



 返事はない。



「酷いじゃないですか、私だけ置いていくなんて」



 静けさが支配するこの場所で、私の声だけが響く。



「あなたに強く言われた時、ものすごく悲しかったんですよ?」



 待てども返る言葉はなく。



「あの村から頑張ってここまで来たのに、こんな結末だなんて思ってませんでしたよ」



 こみ上げる後悔は一つ。



「せめて…私も一緒に……悩んであげたかったです」


 頬に伝うのは、一体なんだろうか。


 季節外れの雨でも降っているのだろうか。



「テ…ト……」



 私がいても何かができたとは思えません。

 状況が良くなることはきっとなかったでしょう。


 それでも、仲間が苦しんでたのにそれに何もできなかったのはとても辛いです。

 私なんかのためにそうしてくれたことも、それに気づけなかった私自身も恨めしい。








「テト」


 勇敢で優しくて頼りになる、最高のリーダーでした。

 一番危険なことを真っ先に買って出て皆を率いるその姿は今でも尊敬しています。


「オレイユ」


 あなたほどの情報通は、世界の何処を探しても見つからないでしょう。色んなことに詳しくて手先も器用なのに、会話が不器用なのは結局治りませんでしたね。


「ポワン」


 逞しい筋肉は暑苦しかったですが、その背中は一番安心できました。ガサツな所も気兼ねのない関係というのが実感できて好きでした。


「ウィザ姉」


 私を本当の妹のように扱ってくれた、あの手で頭を撫でてくれた時間は最も安らぎました。出来ることなら、もう一度その腕で抱きしめてほしいです。



「みなさん、ありがとうございました」



 彼等の平安を祈りましょう。


 魂が巡り、やがて精霊へと至れるように。


 輪廻の先でまた出会えるように。





 一筋のそよ風が私の頬を撫でたように感じました。



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