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◆ 第1-3話 告白 ◆


 「この学校の七不思議を知っているかな? 世壱くん?」

 

 7月上旬。

 まだセミの鳴き声は聞こえないが太陽の日差しが急激に強くなり、すでに気温は真夏日だと報じられる放課後の教室で突然、挨拶もなく他人の席に座りドヤ顔で語りだす小学校からの友人である西条(さいじょう)(まさる)に苛立ちを感じる。


 「なに言ってんだバカ。 この学校はまだ創立された新学校だぞ。 七不思議なんてあるわけないだろ」

 「はっはっはっ。 オレもそう思う」

 

 なんだこいつは。

 自分で語りだしてきたはずなのに否定した側の意見を汲んでくるとはどういう神経をしているんだ。

 とりあえずもう少しで担任が来て終礼が始まるのですぐ様に俺の席から退いてほしい。


 「まぁ聞けよ世壱。 これはキミの為でもあるネタなんだぜ?」

 「存在するはずもない七不思議を聞かされる事の何処に俺の為の内容があるんだよ」

 

 友人は一拍の間を空けて、口を開く。


 「ズバリ、キミの想い人についてだ」

 「・・・続けたまえ」


 まだ担任が来ていないことでクラスメイト達も自分の席に着席していない。

 この隙にまだ席に戻ってきていない隣のクラスメイトの席に座り、マサルの話に耳を傾ける。


 「実はこの学校の土地ってかなり昔は、とある有名なスポットだったらしい」

 「へ~? それってどのくらい昔の話なんだ? 平成? 昭和?」

 「平安」

 「想像以上に時間(とき)が遡った!!」


 昔々の御話。

 ()(もと)と呼ばれた国で怪異と人が共存していた最後の時代。

 とある土地で暮らす人々で噂となった御話があった。

 それはその地域では珍しい桜の木の下で告白をすると恋愛成就するという物だ。

 なんでもその桜の木は村で暮らす1人娘に惚れたお殿様が娘の為だけに埋めたものらしく、娘もそんな大胆な事をするお殿様に惚れ、2人は結ばれたと言われている。

 それから桜の木の下で告白をしたカップルは必ず結ばれるという御話。


 「ほ~。 聞いてるだけだと探せばありそうな話だな」

 「まぁな。 でもこの話には裏の話があると言われている」

 「裏の話?」


 何でもお殿様が村娘に送った桜の木は当時、陰陽師と呼ばれる術者が関わっているらしい。


 「・・・つまり?」

 「実は桜の木には陰陽師が施した(まじな)い的な何かがあって、村娘は本当はお殿様の事なんて好きでも何でもなかったんじゃないかってオチ」

 「なんだそれ」


 今の時代、呪いや魔法なんてオカルトを信じている人間なんて極一部だが、それでも人の思い込みなんてものはバカに出来ない。

 吊り橋効果やプラシーボ効果なんてものは人の心理的現象が起こす脳の錯覚が起こす作用がある。

 告白スポットと呼ばれているのは本当だとしても、本来は誰かが適当に作り出した話が膨れ上がり出来た噂で、その噂が告白する雰囲気をより一層と良い方に創り上げて成功する確率を上げているのかも。


 「それで、結局その話を俺にしてお前は何が言いたいんだ?」 


 マサルは「よく聞いてくれました!」と指をさした後、耳を傾けるよう仕草で手招きをしてきたので。俺は片耳を傾けマサルの声に意識を向ける。

 

 「そのスポットにお前の想い人が呼び出されているらしい」

 「それを早く言えやぁぁあああああああッ!!」


 勢いよく教室を飛び出す際にクラスの担任とすれ違う。


 「あ、おいお前らッ! 何処行くんだ! 終礼始めるぞ!」

 「すみません先生~! ちょっと前野くんとボク、お昼に一週間も期限が切れた牛乳飲んでお腹痛いんでトイレ行ってきます~」


 何やらマサルがとんでもない言い訳をしているのが聞こえたが、とりあえず無視した。

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