07.はじめまして
参加者たちが突如現れた街に驚いている中で再び可愛い声でのアナウンスが鳴り響いた。
「みなさまー! ここでの生活の説明をする前に、まずは近くにいる方と十人くらいで集まって、自己紹介タイムをしましょー! 皆さんは敵ではなくこれから協力してこの圏外島での生活をしていく仲間です。仲良くしていってくださいね!」
参加者たちは戸惑いながらも自然と周りの人たちと輪を作る。
すずも凛の後ろで小さく息を吸い、近くにいた十人くらいの輪に加わった。
凛は笑顔で手を振る
「じゃあ、私から! 藤堂凛、十九歳です。みんなと楽しく過ごせたら嬉しいです! 私から時計回りでいきましょ!」
「森川小春、二十歳です。あまり目立たないけどよろしくお願いします」
優しく微笑んで小春が続ける。
「三上凪、二十三歳です……よろしく」
少し間を開けて凪は小さな声で
「高橋涼、二十二歳です。皆と楽しく過ごせたら嬉しいです!」
涼は少し照れながら爽やかに
「山本誠、五十三歳です。多分年配組になるので困ったことがあれば声をかけてくださいね」
誠は落ち着いた声で
「小池翔、二十五歳です! フリーター兼YouTuberやってました! ここで面白いことたくさん見つけたいです!」
翔は元気に
「佐藤直樹、二十八歳。しがないサラリーマンです。よろしく」
直樹は少し照れつつ
「田辺千夏、三十二歳です。看護師をしてるので怪我した時は私に言ってください」
千夏は優しく
「長谷川真美、二十九歳です。先週になって赤ちゃんがお腹にいることを知り今妊婦です」
真美はお腹に手を当てながら周りを見渡す。
その場の空気が少し静かになった時、千夏が優しく微笑んで声をかけた。
「大丈夫ですよ、真美さん。もし体調で困ることがあったら私が助けますからね」
真美はほっと息をつき、小さく頷く。
「遠藤智也、二十歳です。東京で法律を学んでる現役大学生です。観察と勉強が好きです。よろしく」
智也は丁寧に
「小山陽斗、二十一歳です! 明るく楽しむの大好きです!」
陽斗は満面の笑みで
「村上悠馬、二十三歳です。浪人中です」
悠馬はボソリと
「川崎すず、十八歳です。よろしくお願いします」
すずが緊張しながらも最後に締めくくった。
全員の自己紹介が終わると空気が少し和らいだ。
(少しだけほっとしたかも)
自己紹介をしただけでも、さっきまで何も知らなかった他人よりは身近に感じられ少しだけすずの気持ちが楽になった。
アナウンスが再度流れる。
「みなさまー! では街の真ん中にある広場に集まってください!」
「真美さん、無理せずゆっくりね」
千夏は赤ちゃんのことを気にかける真実に寄り添っていた。
百人が少しずつ街の中心に集まり、広場には自然と人の輪ができていく。
四角く整えられた石畳の真ん中に噴水があり、周囲にはベンチや花壇が並んでいる。
人が増えるにつれて、ざわめきが広がっていく。
噴水のそばでフリルの服を着た少女が両手を合わせて小さな声をあげる。
「わぁ〜♡ この街、インスタ映えしそう〜!」
一方、広場の隅では腰の曲がった老人が、杖をつきながらゆっくり歩いている。
白い長い髭を蓄え、瞳がどこか鋭く、何もかも見透している仙人のような雰囲気だ。
他の参加者のざわめきをよそに、ただ静かに噴水の水音を見つめていた。
(いろんな人がいるなぁ……)
アナウンスの声が再び響く。
「全員集まりましたかー? これから、この島での暮らしについて簡単に説明しますねー!」
広場の空気が期待と不安でさらに膨らんでいく。