13.スーパー
すずとりりあがスーパーに足を踏み入れると、
「いらっしゃいませー! 記念すべき圏外島スーパー第一号のお客さんだよー!」
赤いエプロンを身につけ、レジに立っていた凛が笑顔で出迎えてくれた。店員はみんな胸元に小さなクマのマークがついた赤いエプロンを着ているようだ。
スーパーには軽快なBGMが流れていた。
「涼くんはどこー?」
りりあは早速涼の姿を探してキョロキョロしている。
「私以外の店員三人は品出ししてくれてるよー。ほらあそこ」
凛が指差した先では赤いエプロンを見にまとった三人が品出しをしていた。
「やっぱり涼にかかれば、ただのスーパーのエプロンさえ様になるよなー!」
涼の隣で品出しをしていた小山晴人が、からかうように声をあげる。
「ありがたいけどなんかお前に言われるといじられてる気しかしないんだけど」
涼も苦笑しながら楽しそうに返す。
「晴人くんもその赤いエプロン似合ってるよ、明るい雰囲気にぴったり」
穏やかな笑顔で森川小春が言った。
「お、ありがとー! 俺の一張羅にするわ」
晴人が胸を張って得意げに笑う。
その様子を見ていたすずは、思わず口を開いた。
「なんか…みんな仲良さそうだね。すごい活気がある」
「でしょー! 男子たちが特に元気で、おかげでスーパ全体も明るいよ」
凛がニカッと笑って言った。
「いやいや、女子たちの笑顔のおかげやで!」
品出しをしていた晴人が振り返り言ってきた。
「あ、聞こえてた?」
凛が目を丸くして笑うと、その声に気づいた涼と小春も手を止めて振り返り、すずとりりあに「ようこそー!」と明るい声をかけてくれた。
「キャー! エプロン姿もかっこいいー♡」
りりあは涼に夢中だ。
そんなりりあを横目に晴人はすずに視線を向けた。
「はじめましての時に同じ輪にいたよね。っていうか、この涼しか見えてない子以外は全員あの輪にいたよな」
「そうだね」
いきなり声をかけられて、すずは少し驚いたが頷いた。
「やっぱり! 年齢層も近いし仲良くしてこーぜ!」
晴人がニカッと笑う。
「ここではみんな支え合っていかないといけないし、私も仲良くしてほしいな」
小春も続けてすずに微笑んだ。
「もちろん…!私でよければ」
すずの胸に、じんわりと温かい気持ちが広がった。
「じゃあ、せっかくだしなんか買ってく?」
凛が声をかける。
「うん、買ってみる!」
すずは答えたがりりあからの応答がない。
「りりあちゃんはー?」
「……」
「りりあー!」
凛がりりあの耳元で叫んだ。
「ヒャ! ごめんなに?」
別に涼と話すわけでもないが、涼をずっと見つめて悶えていたりりあがやっと現実世界に戻ってきた。
「りりあちゃん、涼くんを見過ぎ! せっかく来てくれたからなんか買ってかないかなあって話してた」
「もちろん買うよー! お菓子欲しい!」
スーパーは二階建てになっており、一階は野菜や果物、お菓子、歯ブラシや洗剤、文房具など生活に必要なものがずらりと揃っている。二階には服やメイクセットなどが置かれ、ちょっとしたおしゃれ空間になっていた。棚の間は広く、歩きやすい。店内は明るい照明で商品が映える。
「島の通貨で買い物するんだよね?」
すずが疑問を口にする。
「そうそう。物によって値段は違うんだけど、紙幣三分の一マークのついた商品は、同じマークのものを三つ買えば紙幣一枚で支払えるの。お釣りは出ないから、三分の一商品一つだけ買うとかでも紙幣一枚で払わないといけないから組み合わせには注意してね」
凛が説明する。
「もし店員さんがレジにいなくても、レジにあるノートに自分で名前を書いて商品に貼られているシールを貼ればOK。監視カメラもついてるから、万引きは絶対バレるよ」
小春が補足した。
「この島特有の斬新なレジの仕方なんだねー。なんとなくわかったからお菓子コーナー行ってきていい?」
りりあは今にも走り出しそうな勢いだ。
「いいよー。行ってらっしゃい!」
凛がそういうと、りりあは「行ってきまーす!」と一目散にお菓子コーナーへと駆け出した。
(かわいいなぁ)
素直なりりあをすずは微笑ましく思った。
「すずちゃんは何買うのー?」
凛が尋ねてきた。
「私はまだ役職もついてないし、そんな使うのも気が引けるから……。飲み物くらいにしとこうかな」
「OK! 飲み物コーナーはこっちだよー。実はね自動販売機では紙幣一枚分の飲み物もスーパーで買うとなんと! 紙幣三分の一の価値で買えるから紙幣一枚で三本買えるよ」
「え? めっちゃお得。じゃあ、三本買おうかな。自動販売機じゃなくてスーパーで買うしかないね」
「そうそう。一応、スーパーは朝の九時から夜の二十時までしかやってないからそれ以外の時間で買いたければ自販機で買うくらいで、日常的には絶対スーパーの方がいいよ!」
「へぇー。いいこと聞いた! じゃあ、お茶と水とりんごジュース買うね」
「まいどありー! じゃ、レジへどうぞー!」
凛に連れられてレジへ行き、すずは紙幣一枚と引き換えに飲み物三本を手に入れた。
そこへ、両手いっぱいに駄菓子を抱えたりりあが駆け込んできた。
「紙幣一枚でこんなにお菓子買えるのすごくない?」
「駄菓子は紙幣十分の一とかあるからねー。そりゃいっぱい買えるわけだ」
凛がノートにシールを貼ってりりあの名前を書きながら言った。
「りりあちゃん、レジ袋いる?」
「あ、お願いしまーす。レジ袋は無料なの?」
「一応、無料だけど自分のカバンとかで持ち帰れるならそっちでお願いしてほしい感じかな」
「あー、頑張れば自分のカバンに入ると思うからやっぱりいいや」
りりあも紙幣一枚と引き換えに大量の駄菓子を手に入れて、自分の持参していたカバンに詰め込んだ。
「OK! 二人とも買いに来てくれてありがとう! また来てねー!」
「ありがとうございましたー! またのお越しをお待ちしておりまーす!」
レジ近くで品出しをしていた晴人も明るく声を張り上げる。
「また涼くんに会いにきまーす♡」
りりあが元気よく言うと、涼は苦笑しながら軽く手を振った。
スーパーを出ると、広場の片隅で見慣れない組み合わせが真剣に話し込んでポスターのようなものを作っていた。派手な衣装のマリアと人間観察大好きな智也だ。
「何してるのー? 二人で怪しいことしてる?」
りりあが小走りで二人に詰め寄った。
「キャー!」
マリアが大袈裟に驚く。
「びっくりしたじゃない! これはねぇ……。内緒の作戦会議よ♡」
「明日には分かると思うから、楽しみにしてて」
智也も続ける。
「えーー! 気になるじゃん!」
りりあが身を乗り出すが、二人は顔を見合わせてニヤリと笑っただけ。
「ふふん、まだ教えないわよー。明日広場に来てくれたら分かるから明日までのお・た・の・し・み♡」
「僕も楽しみなんだ。観察しがいがあるからね」
「観察? あ、なんかあの不気味なノート関連?」
りりあは何も考えずにズバズバとものを言う。
「不気味? まあ、それはよくわからないけどかすってはいるかもね」
「言い過ぎは禁物よー。お嬢ちゃんたちは早くここから去りなさーい」
マリアがヒラヒラと手を振る。
「えー! 怪しすぎるでしょ!」
りりあが頬を膨らませる。
「レディが眉間に皺を寄せたら可愛い顔が台無しよ♡明日わかるから我慢してちょーだい。そんな大それたものでもないから期待もしないでちょーだい♡」
「そんなこと言われたら余計に気になるよー」
りりあがそんなことを言いながらも二人はその場から追い出された。
――そして翌日、広場には“とある催し”を告げるポスターが張り出されることになる。




