●2024年5月
2024年5月5日(日・祝)
こどもの日。ゴールデンウィークの最終日。
今日は雫さんと一緒に鎌倉まで出かけた。久しぶりの小旅行だった。
北鎌倉駅から歩いて建長寺を訪れた。新緑が美しく、心が洗われるような気持ちになった。雫さんはスケッチブックを持参して、境内の風景を描いていた。
「集中している雫さんも素敵ですね」と言うと、彼女は照れたように笑った。
「見られていると緊張します」
「ごめんなさい。でも見ていたくなるんです」
江ノ電に乗って江ノ島まで足を延ばした。海を見るのは久しぶりだった。波の音を聞きながら、二人で砂浜を歩いた。
「海っていいですね」と雫さんが言った。
「開放的な気分になります」
「私も。普段考えすぎてしまうことも、海を見ているとどうでもよくなります」
夕方、江ノ島の展望台から夕日を見た。オレンジ色に染まった空と海がとても美しかった。
「きれいですね」と雫さんがつぶやいた。
「ええ。でも一人で見ていたらここまで美しく感じなかったかもしれません」
「どういう意味ですか?」
「大切な人と一緒だから、景色もより美しく見えるんです」
彼女は振り返って私を見つめた。その瞳に夕日が映っている。
「葵さん、私…」
「私も、雫さんのことを…」
でもその時、近くにいた観光客が「写真撮りましょうか?」と声をかけてきた。
私たちは慌てて「お願いします」と答えた。でも本当は違う言葉を交わしたかった。




