●2023年7月
2023年7月15日(土)
今日は雫さんのアトリエを訪問する日だ。彼女の部屋に入るのは初めてなので、とても楽しみだった。
午後二時に約束していた。ドアを開けてくれた雫さんは、絵の具が少し付いたエプロンをしていた。
「ちょうど作業をしていたところです。どうぞ」
部屋に入ると、想像以上に素敵な空間だった。大きな窓から自然光が入り、イーゼルや画材が整然と並んでいる。壁には彼女の作品がいくつか飾られていた。
「わあ、素晴らしいアトリエですね」
「ありがとうございます。北向きの窓なので光が安定していて、絵を描くのに適しているんです」
彼女の作品を見せてもらった。繊細な水彩画から力強い油絵まで、様々なタッチの作品があった。どれも美しくて見とれてしまった。
「この絵、とても素敵ですね」
ある風景画を指して言うと、彼女は少し照れたような顔をした。
「故郷の松本の風景です。帰省した時に描きました」
山々に囲まれた美しい町の風景。彼女の故郷への愛情が伝わってきた。
「いつか一緒に松本に行けたらいいですね」
「本当ですか? 嬉しいです」
コーヒーを飲みながら、彼女の作品について話を聞いた。技法のこと、モチーフを選ぶ基準、制作にかける時間。すべてが興味深かった。
「絵を描いている時はどんな気持ちですか?」
「無心になれます。雑念が消えて、ただ色と形だけに集中している状態。それがとても心地いいんです」
彼女の言葉に深く共感した。私も文章を書いている時に似たような感覚になることがある。
四時間近く一緒に過ごした。帰る時、彼女は小さなスケッチブックをくれた。
「良かったら使ってください。何か描いてみませんか?」
「絵は苦手ですが、挑戦してみます」
家に帰ってからスケッチブックを開いてみた。真っ白なページを見ていると、何かを表現したい気持ちが湧いてきた。




