2023年1月
2023年1月5日(木)
新年明けて五日目。去年と同じような日付の日記を書いている。
でも今年は去年より少し希望を感じている。雫さんという大切な人ができたからかもしれない。
今朝のニュースでは「コロナ第八波がピークアウト」という専門家の見解が報じられていた。本当だろうか。東京の感染者数は一万二千人台で高止まりしているが、少しずつ減少傾向にあるという。
アメリカやヨーロッパではマスク着用義務が解除される国も出てきた。日本でも「マスク着用は個人の判断」という方向性が議論されている。二年半以上続いたマスク生活がついに終わるのだろうか。
会社では年明け早々に「今年の方針」について会議があった。対面での会議は久しぶりで、みんなどこかぎこちなかった。コロナ禍で人との距離感が変わってしまったことを実感する。
編集長からは「今年は転換期になりそうです」という話があった。デジタル化の加速、読者層の変化、広告収入の減少。雑誌業界を取り巻く環境は厳しい。でも「だからこそ、読者に本当に必要とされるコンテンツを作ろう」という方針を確認した。
午後、雫さんと新年の挨拶をした。
「今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ。今年は良い年になりそうな予感がします」
「どうしてですか?」
「なんとなく、ですけど」
彼女の声に優しさがこもっていた。
2023年1月15日(日)
成人の日。街で振袖姿の新成人を見かけた。彼らはコロナ禍の中で高校生活を送り、大学受験を経験した世代だ。マスクをした成人式の記念写真。これも時代の記録になるのだろう。
今日は久しぶりに美術館に行った。上野の西洋美術館で開催されている印象派の展覧会。事前予約制で入場者数を制限しているため、いつもより空いていてゆっくり鑑賞できた。
モネの睡蓮の前で立ち止まった時、雫さんのことを思い出した。彼女も絵を描く人として、どんな感想を持つだろう。今度一緒に来られたらいいのにと思った。
美術館の帰り、上野公園を散歩した。まだ梅は咲いていないが、少しずつ春の気配を感じる。コロナ禍で外出を控えていた分、こうして文化的な施設を訪れることの喜びが大きい。
カフェでコーヒーを飲みながら図録を眺めた。雫さんにも見せてあげたい。彼女の作品にも印象派の影響があるような気がする。光の使い方や色彩感覚に共通するものを感じた。
夕方帰宅すると、雫さんがベランダにいた。
「おかえりなさい。どちらに?」
「美術館に行ってきました。印象派の展覧会です」
「いいですね。私も行きたいと思っていました」
「良かったら今度ご一緒しませんか?」
「それは嬉しいです」
初めて一緒に外出する約束をした。心が弾んだ。