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第四話「沈黙する回廊」

夕焼けが終わり、夜の帳が静かに校舎を包む頃、ハルキとサクラは「檻の歌」の余韻に囚われていた。


翌朝、学校では妙な噂が広まっていた。「旧校舎で、誰もいないのに音楽室から歌声がする」というものだ。その歌声は機械的に繰り返される旋律で、聞いた者はしばらく言葉を失ってしまうという。偶然にも、噂が立ち始めた時間は、リクと出会ったあの放課後の直後だった。


サクラが呟く。「もしかして、“檻の歌”って、それのこと……?」


放課後、二人は旧校舎へ向かう決心をする。誰も近づかないその廃れた音楽室には、埃をかぶったピアノと、ひび割れた鏡が残されていた。だが、部屋に足を踏み入れた瞬間、空気が変わる。


急に気温が下がり、耳鳴りのような「旋律」が二人を包み込む。その旋律は不気味なほど整っていて、しかし人の声とも機械の音ともつかない。音に導かれるように鏡に目を向けると――そこに映っていたのは、ハルキでもサクラでもない、誰か別の“影”だった。


影は口を開き、ハルキに問いかける。「カナリアの声を、閉じ込めるか、解き放つか――君はどちらだ?」


思わず目を逸らした瞬間、鏡がひび割れ、部屋の空気が元に戻った。鏡の破片の中には、確かに“金色の羽根”がひとつ落ちていた。


その夜、サクラは初めて“夢”を見た。白い鳥籠の前で、リクがこちらを見つめている。「目を逸らすな、サクラ。次は、君の番だ」

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