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[最終話]雨宿りをしませんか

雨宿りをしませんか4

私はまたあの店に行こうとしていた。

 外は今日も土砂降り、傘をさして学校を出ると

 いつもの店員さんが傘をさして待っていた


 「こんにちは」


「今から行こうとしてて!え、てかなんでここに?」


「紅茶の効果が出たようですね」


「え。紅茶?」


「あなたは自分を封印してしまった。

でもそれは貴方自身の勘違いや、偏見もあるんですよ

 そしてそれを少しの勇気で確かめる

ほんとに封印するのなんて

 確かめてからでも遅くはない

 あなたらしく生きてください

 明日の、いやこれからの人生が晴れるように」


 店員さんはスっと私に近づいて

 手のひらに紅茶の葉っぱを押し付けた


「また何かあったらその紅茶を飲んでください

 もうおまじないはかけてないけど

 きっとあなたはその味でまた前を向くことができる

 自分の力で空を快晴にできます。」

 

 「ああ、その紅茶葉の料金は

 あなたの幸せな話でいいですよ

 また聞かせにきてね美月ちゃん」


 そう言い残せば初めて笑顔を見せた店員さんは

 クルッと後ろを向き歩き出してしまった。


「ありがとうございます!ありがとう!」


 なんで私の名前を?

 なんで私の高校知ってるの?

聞きたいことは沢山あった

 けどそれは今度でいい、

 幸せな話をいっぱい持ってあのお店に行こう

 そう思いながら学校へと戻った。


 ――

 後日また雨が振り出し、

 お店のことを思い出して尋ねることにした


 幸せな話がいっぱい出来たからだ。

 あれ以来ホントの私を出すようにしてみた

 暗い所だって出してみたし

 ドジな所、ほんとはガサツで口も多少悪いところ

 それで離れてしまった人もいたけれど

 今も仲良くしてくれている人は

 ほんとの友達だと心から言える。

 

 それにあの時告白してくれた男の子は

 そんな様子を見ても尚好きだと言ってくれて

 まだまだ私のことは知らないけど

 これから知っていきたいと改めて告白をしてくれて

 初めての彼氏もできた。


 そんな話をするために訪れたのだが、、

なんだか様子が違う

いつもの「雨宿りをしませんか」の看板がないのだ。

不思議に思いながら扉を開けると

 いつものガラス細工たっぷりのお店。


 (なんだ、いつも通りじゃん)


 でもいつもと違うことがあった

 御出迎えしてくれていたあの店員さんがいない

 その代わりにおじいちゃんマスターがいるだけだ


「あ、あのいつもの店員さんは?」


「いらっしゃいませ、

 ?、店員なら私1人ですが?」


「え、、」


 どー言うことだ頭をフル回転させる


「あ、君か!

 よくうちの人形にガラス越しに

話しかけてた小学生は!

 そうかそうか大きくなったものだ」


「え??」


「こっちこっち」


 着いていくと窓際でソファーの

 ミニチュアに座らセられている女の子の人形

それはどこからどう見てもあの店員だったのだ


「そうかそうか、

 ここ最近私が体調崩して休んでる間に

 そんなイタズラがあったとは」


 ご機嫌そうに笑いながらその人形を

 いつものソファーに座らせる


「さあ、いっぱい喋ってあげておくれ」


「え、あの!」


 また奥へと入っていきそうなおじいちゃんを止めて

 話を聞くことにした


するとおじいちゃんはいいでしょうと

 私に対面する形で座りお人形を自分の膝に座らせた

 

 その人形は私が小学校高学年の頃から

お店に出していて

 雨の日はよくガラス越しに

外を見せてあげていたこと

その度に小学生だった私が

その人形に話しかけていたこと


「なんで忘れてたんだろう、、」 


 そう、小学生の私はお店だなんて分からずに

 ただただ可愛い人形に向かって喋りかけていたこと

 雨の日ぐらいしか

外から見える所に置いてなかったこと

だから私は雨の日が大好きだった

 可愛くて大好きな人形との対話の時間だったから


「でもなんで人間なんかに?

 私は幻覚でも見ていたんでしょうか、、」


「いいえ、この子がきっと貴方とまた話したくて

 そうしたんですよ

 現実あなたのポケットに入ってるそれが証拠です」


「!」


 ポケットを漁ると

 人形から貰った紅茶葉


「ほんとだ、、」


「私からお話出来るのはここまでですよ

さあ、きっとこの人形もあなたと

 話したくてウズウズしているよ

 いっぱい幸せな話をしてあげてくれ」


 そう言うとまたソファーにお人形さんを座らせて

 おじいちゃんマスターは奥へと入ってた


 私はお人形さんと目線を合わせるようにしゃがみこんだ


「あのね!!――――」


 ――――


「私が今回美月ちゃんにあげたのは

 “本音のおまじない”をかけた紅茶

 美月ちゃんは最初戸惑ったようだったけど

 それのおかげで

上手くいったようでよかったわ」


「ふふ、また空模様が怪しくなってきたわね

 これはあなたの空かしら

 あなたにもあった紅茶があるみたい

 探してみるわ」


「あなたも雨宿りをしませんか?」

ご愛読ありがとうございました

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