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温泉ツーリング同好会へようこそ 3rd  作者: 秋山如雪
第2章 渋温泉
8/43

8湯目 高原の風

 山梨県北西部の避暑地、清里。


 この場所は、80年代から90年代初頭のバブル期に、大変賑わいを見せ、首都圏から多くの観光客が押し寄せたのだが、その後のバブル崩壊によって、衰退。


 今は、駅前も寂しいものになっていた。


 だが、駅前から離れた場所にある、清泉寮。


 ここは土曜日ということもあり、多くの人で賑わっていた。

 そんな中、私は、花音ちゃんとソフトクリームを食べる。


 清泉寮のソフトクリーム。それは、昔から有名で、濃厚な味わいが美味と言われていたが、その原因は、ここ清里のジャージー牧場で飼育された、ジャージー牛乳が決め手になっていると言われている。


 実際、広大な牧場に放牧された牛、その向こうに見える雄大な山々を見ながら食するソフトクリームは格別だった。


 バイクに乗るライダーは、不思議とソフトクリームを好むらしいが、これは「疲労回復には甘い物がいい」という理屈にもつながるのだろう。


「めっちゃ美味しいですね。濃厚でコクのある味わいです」

 オーソドックスなバニラ味のソフトクリームを食べながら、花音ちゃんが発した一言に、私は、笑顔で返す。


「良かった。花音ちゃん、食レポのリポーターみたいだね」

 彼女とは違う、茶色をしたチョコレートソフトを味わっていた私が言うと、彼女は照れ臭そうに、


「べ、別にいいじゃないですか」

 と、そっぽを向く。


 何だか、そんな仕草が可愛らしいと思うの同時に、久しぶりに彼女とデートみたいな二人きりの旅を楽しめるのが、私的には嬉しかった。


 ソフトクリームを食べて、しばらく牧場を眺めた後、出発。


 再び国道141号をひた走る。


 県境を越えて、長野県に入る。

 JRの鉄道最高地点(1357メートル)の石碑を過ぎ、野辺山のべやま高原がある南牧みなみまき村から小海こうみ町、佐久穂さくほ町と経て、ようやく高原の旅は終わる。


 そこからはいくつかの県道を乗り継ぎ、戦国時代の真田氏で有名な上田市を過ぎ、真田氏本城跡を通過すると、また山道になる。


 国道406号を走り、菅平すがだいら高原を越える。


 最後の休憩は、その菅平高原近くにある、菅平ダムの堤防だった。


 この辺りには、道の駅もコンビニもない。


 菅平ダム(菅平湖)を見下ろす、堤防の上でバイクを停め、ヘルメットを脱いだ花音ちゃんが、


「ふう。いい山道でした。100キロくらいでかっ飛ばしたくなります」

 相変わらず無茶な一言を呟くが、表情は明るいように見えた。


「また、そういうこと言って。事故ったら、死ぬよ」

「私が事故るなんて、あり得ないです」

 その強気はどこから来るのか。


 相変わらず、生意気というか、過信が過ぎる気がして、少々心配にはなった。

 だが、確かに花音ちゃんの運転は上手い。


 バイクに乗ってると、たまに他のライダーの乗り方や運転技術が気になったりするが、見てる分には、彼女の運転は、「メリハリ」がついている。


 つまり、スピードを出す時には出すし、カーブではきちんと曲がれる速度で減速している。


 これが、本当に下手な奴だと、カーブでスピードを出しすぎて、対向車線にはみ出したり、逆にカーブ外に飛び出したりして、事故を起こす。


 その意味では、実は彼女は、「安全運転」をしているのだが、相変わらず言葉だけは強気で生意気だった。


「あと、ちょっとだね。花音ちゃんと二人きりで旅するのも後少しと思うと寂しいな」

「何、バカなこと言ってんですか。さっさと行きますよ」

 私が声をかけると、彼女は照れ臭いのか、顔を逸らして、さっさとヘルメットをかぶってしまった。


 残りわずかで、湯田中温泉に到着する。

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