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温泉ツーリング同好会へようこそ 3rd  作者: 秋山如雪
第2章 渋温泉
7/43

7湯目 湯田中渋温泉を目指して

 ということで、次の土曜日。


 二手に分かれて、目的地に向かうことになった。何気に、温泉ツーリング同好会としては、こういうケースは初だった。


 1年生組の二人は、午前6時22分発の電車に乗り、塩山から甲府、松本、長野、信州中野を経由し、11時36分に湯田中に着く予定で出発。


 一方、私と花音ちゃんは。


 少し遅れて、7時に待ち合わせ。


 この時期、日の出が4時台とかなり早いが、私たちは後輩たちに合わせて、少し遅めに出発となった。


 待ち合わせ場所に使っている、いつものコンビニに行くと。


「どうも」

 相変わらず、不機嫌な猫のような目をして、黒いライダースジャケットを着た、花音ちゃんが、愛車のホンダ CBR250RRを眺めながら缶コーヒーを飲んでいた。


 渋い、というかおっさんくさい、と思いながらも私は挨拶をかわし、出発となる。


 当然、先頭は私より速い花音ちゃんに譲るが。


 念の為に、釘を刺しておいた。

「速く進みすぎないように」

 と。


 ルートは、国道20号、甲州街道から国道152号を抜けるコースが一番近い。


 のだが、今回は時間もあるので、あえて別ルートを進むことを私は提案した。

 そのコースとは、あえて幹線道路の甲州街道を使わず、裏ルートとも言える国道140号や県道を進み、北杜ほくと市から清里きよさと方面に抜ける。


 そのまま国道140号を進み、長野県佐久市に入り、県道を伝って、東御とうみ市、上田市を経由し、山伝いに県道を進み、湯田中駅へ。


 約4時間半。休憩を入れると5時間はかかるルートだった。


「かったるいですね。高速使ったら3時間で着きますよ。いや、私なら2時間で着きます」

 と、豪語していた花音ちゃんをなだめるため、私が用意した言葉は、


「行き当たりばったりも旅の醍醐味だよ。速ければいいというもんじゃない」

 だった。


 渋々ながらも納得してくれた花音ちゃんを先頭にして、出発。


 実際、この選んだルートは割と快適だった。


 何しろ国際20号、甲州街道は「混む」。場所によっては片側2車線になるが、交通量の絶対量が多いから、いつもどこかの信号機で詰まっていることが多い。


 ところが、裏ルートの国道140号や県道は、交通量自体が少ないから、一部は混んだとしても、全体的に見れば、「流れている」ことが多い。


 このルートで正解だった。


 実際、常に最速を狙っているような花音ちゃんの性格から考えると、甲州街道なんて、イライラするだろうから。


 そのイライラが私にも伝わると、こっちまでいたたまれなくなる。


 旅は順調だった。


 出発から1時間半後。


 山梨県韮崎(にらさき)市、同北杜市を経て、山道を登り、いつしか涼しいというか寒いくらいの気温になっており、ここが高原の上だと気づかされる。


 右手には雄大な八ヶ岳連峰が見えていた。


 花音ちゃんには、先程立ち寄った道の駅にらさきで、あらかじめ伝えておいた。


清泉寮せいせんりょうで停まって」

 と。


 その清泉寮。

 そこは、高原の牧場的な雰囲気の場所で、ソフトクリームが美味しいことで知られている。


 バイクでのツーリングに欠かせないもの。それは甘い物、つまりソフトクリーム。


 私は彼女と共にこれを食することを狙ったのだ。


 その清里。

 かつて80年代のバブルの頃は、東京から観光客が押し寄せたと言われているが。もはや見る影もないほど寂れていた。


 だが、清泉寮自体はやっていた。


 そこで、私たちは休憩を取ることになったのだ。一応、ここも山梨県北杜市。だが、山一つ越えるともう長野県になる。


 標高1400メートルに位置する、高原のリゾート、清里。

 夏には少し早いが、涼しい風が吹いていた。

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