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温泉ツーリング同好会へようこそ 3rd  作者: 秋山如雪
第8章 高校生活の最後を飾る温泉
41/43

41湯目 大宴会

 鳥取砂丘を堪能した私たちは、ホテルに向かう。


 駐車場から下道でも高速でも1時間あまりで行けるそこが、今回の旅のメインの目的地、三朝温泉だった。


 鳥取県は、さすがに交通量が少ないというか、流れがいい。

 端的に言うと、県民人口も人口密度も低いからだ。


 鳥取県の人口は約55万人。これは全国47都道府県で最も少ない。県庁所在地の鳥取市の人口も18万人程度。


 首都圏や近畿圏に比べても各段に「空いている」のが鳥取県なのだ。


 そして、そのホテルは。

「大きいですね」

 正直驚いた。


 恐らくバブル期に建てられたホテルだろう。

 天神川という川沿いに位置しており、地上10階建て、総客室数は100を超えると言う。


「この辺やと一番大きいホテルらしいんすよ。その割に安かったんで」

 と、美来ちゃんは言っていたが、理由は何となくわかった。


 建物は大きいが、古いからだ。

 古い物を改装して使っている感じがして、今時の若者が好むような、いわゆる「映える」とか「エモい」ものではない。


 その分、値段が安いのだろうけど、私としては一向に構わなかった。


 しかも、夕食つきだった。

 その夕食の前に、全員で大浴場に向かった。


 初めての三朝温泉だ。

 実はこの三朝温泉は、世界有数のラドンの含有量を誇り、世界的にもトップクラスだという。

 あらゆる疾患に効能があると言われるくらい、優秀な温泉だった。


「素晴らしいわね、この温泉」

 と、温泉博士の琴葉先輩もご満悦の温泉だった。


 実際、無色透明で、なめらかなお湯をしている。

「そうですね」

 頷きつつ、私はもうこのまま寝てしまいそうなほど気持ちよく、お湯に身体を委ねていた。


「大田さん。寝ちゃダメよ。実はこの温泉名の由来には諸説あるらしく、その一つが『三つ目の朝を迎えるころには病が消える』ことから三朝と呼ばれるようになったとか」

 相変わらず、温泉博士の蘊蓄うんちくが聞こえてきたが、私には子守歌のように聞こえていた。


 そのまま意識を失うと危ないと思ったのか、

―ガシッ―

 しっかりと腕を掴まれて、私は目を開けて、横目を向ける。


 花音ちゃんが、少し怖い顔で、

「寝ないで下さい、瑠美先輩」

 と睨んでいた。


 仕方がないので、目を開け、彼女たちと他愛のない会話をしながら過ごした。


 風呂上り後は、晩飯だ。


 美来ちゃんが選んだプランでは、1泊2食つき(夕食、朝食)で一人当たり6000円程度。かなり安い、お得なプランだった。


 別にセレブでも働いてもいない、学生の私たちには都合がいい。


 しかも夕食も朝食も、大広間のような大きなレストランで食べることが出来る。元々、バブル期に建てられ、社員旅行などの大勢の旅行客に対応できるように建てられたと思われる、歴史あるホテルだったから、レストランもかなり大きい。


「よし、飲むぞ。お前らも飲め飲め!」

 早くもビールで出来上がっている分杭先生と、そんな彼女に、


「ほら、先生。まだまだ酒はありますよ」

 調子に乗って、次々の酒を注いでいるまどか先輩だった。


「まだ未成年です」

 私たちメンバーのいずれもがまだ20歳を迎えていなかった。


「何だよ、つまんねえな」

 そのことに最も不満そうにしている分杭先生は置いておいて。


「明日はどうするんですか?」

 一応、主催者に聞いてみた。


「ああ。大山だいせんに行って、城崎きのさきに泊まってから帰るか」

 まどか先輩の言葉は明確だった。


 携帯の地図アプリを開く。

 つまり、この近くにある大山に行き、兵庫県の有名な温泉地、城崎温泉に行くというのがプランらしかった。


「ま、ええんちゃいます。ついでに天橋立あまのはしだてに行ってもええですし」

 美来ちゃんも同意していたが、彼女は主催ではなく、ホテルを決める役という位置づけらしく、細かいプランはあくまでもまどか先輩任せらしかった。


 その日、がぶがぶと酒を飲んで、ふらふらになった分杭先生を部屋まで連れて行くのが一番大変だったことは言うまでもない。

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