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温泉ツーリング同好会へようこそ 3rd  作者: 秋山如雪
第8章 高校生活の最後を飾る温泉
37/43

37湯目 運命を決める試験

 そこからはさらに展開が速かった。


 1月に大学入学共通テストでショックを受けてから、私はさらに必死で勉強を重ねて、2月末の志望校の入学試験を目指した。


 そして、やって来た大学入学試験。


 場所はもちろん、東京都八王子市。


 縁起を担ぎ、バイクで行こうとする私に、母は、

「今日だけはやめておきなさい」

 と鋭く指摘してきた。


 確かに、受験当日に事故にでも遭ったら、人生が狂ってしまう。それなら、今日くらいは電車でもいいだろう。


 素直に従うことにした。

 電車でも中央本線を、真っ直ぐに進むだけで八王子に着く。


 八王子市は、思った以上に大きな街で、駅前の繁栄っぷりは、山梨県の県庁所在地がある、甲府市よりはるかに大きかった。


 そんな中、駅前からバスで大学に向かう。


 試験は滞りなく行われ、私は全力を尽くし、それなりの手ごたえを感じながら、大学を後にした。


(4月からここに通えますように)

 と願いながら。


 そして、合格発表の日。


 手元にある受験番号を持って、スマホの前で待ち構える。今やわざわざ大学まで行かなくてもスマホ一つで結果はわかる時代だ。


(あ、あった!)

 初めて心の底から喜んだ、と言っていい。


 今までの苦労が報われた瞬間だった。


 そして、その時を見計らったように、共通グループLINEから通知が来た。

―瑠美先輩。受験の結果はどうでしたか?―

 いつもと違うように感じるほど、遠慮がちに聞いてきたのは、花音ちゃんだった。


 私は、喜び勇んで、

―受かったよ!―

 と返信する。


 すると、まるでそれを待ち構えていたかのように、

―おめでとうございます―

 と、花音ちゃんだけでなく、美来ちゃんやのどかちゃんからも恐るべき速さで返信が来た。


 しかも驚くべきことに、

―よう。よくやったな。お前ならやると思ってたよ―

 懐かしい分杭先生だった。


 普段は、生徒任せで、LINEにも参加しない彼女が、わざわざ祝福の言葉を送ってくれたのが、純粋に嬉しかった。


 さらに、

―瑠美、がんばったな。おめでとう―

―大田さん、おめでとう―

―瑠美! Compli(コンプリ)menti(メンティ)!」

 まどか先輩、琴葉先輩、フィオ。先輩たちまで次々に祝福を投げかけてくれた。


 嬉しくて、涙が出そうになった私だったが、さらに驚くべき言葉が投げかけられた。


―では、無事に合格した先輩に、温泉旅行をご招待します―


「えっ? どういうこと?」

 思わず口に出していた。


 そうメッセージを送ってきたのは、花音ちゃんだった。

―何のこと?―

 聞いてみると、答えの返信の代わりに、すぐに電話の着信が来た。


「はい」

 電話口の向こうでは、複数の人間の声が、がやがやと聞こえていた。


「瑠美先輩。私です」

 確かめるまでもなく、声で花音ちゃんとわかる。


「LINEに書いた通りです。実は皆さんと、瑠美先輩が合格したら、温泉旅行に招待しようと計画してまして」

「ええっ」

 さすがに驚いて声を上げていた。


「とりあえず、詳しい話がしたいので、今から牛奥みはらしの丘に来ていただけますか?」

「わかった」

 一体、どんなサプライズだ。


 そう思いながらも、みんなで私のために、計画してくれた、と思うと、それはそれでもちろん嬉しいのだった。


 早速、私は愛車を駆って、牛奥みはらしの丘へ向かう。

 その日は、2031年3月1日、土曜日で、学校は休みだった。

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