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温泉ツーリング同好会へようこそ 3rd  作者: 秋山如雪
第3章 下呂温泉
12/43

12湯目 信州のご褒美

 道の駅木曽福島。


 9時半という中途半端な時間にそこに着いたのだが、朝から何も食べていなかったことが幸いした。

「いやあ、腹減りましたね」

 自分のお腹を押さえて、見るからに空腹そうに訴えたのは、美来ちゃんだった。


「そうですねー」

 のどかちゃんは相変わらず、ニコニコしていた。


 そして、

「私もそろそろ何か食べたいです」

 花音ちゃんまで言うから、私は頷いた。


「じゃあ、あそこで食べて行こう」

 そう言って指差したのは、先程の展望デッキに行く途中に見た、そして今、すぐ横にある、道の駅の食堂だった。


 ちょうど、展望デッキに面しており、窓からは雄大な御嶽山が見えるように配慮されているのだろ

う。


 そして、四人でそこに入ったのだ。

 ここのレストランのメニューが、実に豊富だった。


 信州名物のそばはもちろん、定食、カレー、ラーメンまである。


 だが、真っ先に食いついたのは、一番元気な美来ちゃんだ。

「おー! バイキングやっとる!」

 見ると、土日限定で「7:00~10:00までバイキング実施中」と看板に書いてあった。


 当然、全員飛びついた。

 こういう、「予期せぬ幸運」も、ツーリングの醍醐味でもある。


 私は、そばとカレーを食べ、他の3人もそれぞれ色々と盛り付けをしてテーブルに着くが。


「何、それ食いすぎじゃない?」

 向かい側に座った、花音ちゃんが目の前に広がる、美来ちゃんの巨大な皿の盛り付けを見て、眉をひそめる。


 そこにあったのは、山盛りのカレーライス、ラーメン、そば、かき揚げ天ぷら、ソースカツ丼、味噌汁、ヨーグルト、おまけにオレンジジュース。


 私でも驚くくらいの量で、女子というより男子が食べる量だ。


「いやー。だって、ウチ、毎朝必ず朝食食うんすけど、今日は朝早かったさかい、食えんくて」

 と言っては、もう箸をつけている美来ちゃん。


 これだけ食べているのに、彼女の体型は、決して太ってはいないところを見ると、その分、運動をするのだろう。


 どちらかというと、運動が苦手な私には羨ましくもある。


 とにかく、ここでの朝食はある意味、ラッキーだった。


 そして、小食の花音ちゃんが、そばとヨーグルトだけを食べて、あっさりとスマホを触り出した。


「あと、どれくらいかかりそう?」

 ちょうど隣に座っており、彼女が携帯から地図アプリを眺めていたことを横目で見た私が問いかけると、


「ああ。R19からR256、257経由で、なんだかんだで2時間はかかりそうですね」

 相変わらず、ぶっきらぼうな猫のような目つきを向けて彼女が発した。


「遠いですねー」

 のどかちゃんは、呑気なものだった。


 ここで私は、食事を採りながらも、彼女たちに聞いておきたいことがあったことを思い出していた。


「ねえ。二人は免許取ったら乗りたいバイクとか、あるの?」

 バイク乗りなら、そして仲間なら誰しも気になる問題だった。


 すると、

「ウチは、速そうなのがええんで、カワサキの250ccですかね」

「わたくしは、台湾製のスクーターが可愛いと思います」

 意外な答えが返ってきた。


 美来ちゃんは、カワサキの250ccバイクに興味を示していた。我が同好会では初のカワサキ乗りになる可能性があった。

 そして、のどかちゃんもまた、我が同好会では初めての「台湾製」のスクーターノリになる可能性があった。


「台湾っていうと、SYM(シム)とかKYMCO(キムコ)?」

 意外にも、眼を輝かせたのは、花音ちゃんだった。


「はい。その辺りですねー。どう思われますか?」

「いいんじゃない。どっちも元々、ホンダが受注生産してたし。台湾はSYMとKYMCOとヤマハが国内シェアの9割を占めてるし」

 さすが花音ちゃんだった。


 私はほとんど知らない台湾のバイク事情まで詳細に知っており、それを聞いたのどかちゃんが、

「ありがとうございますー」

 ニコニコしながら、彼女にお礼を述べていた。


 一方、美来ちゃんは、

「はいはい! ウチのカワサキは?」

 喜び勇んで、花音ちゃんに問いかけるが、


「カワサキね。まあ、何でもいいんじゃない?」

 と投げやりだった。


「そんなー。何かアドバイスしてくれへんのですか?」

「アドバイス? まあ、カワサキなら大体何でもいいと思うけど。結局、バイクなんて乗り物は、究極的にはその人が『好き』って思った物に乗るのが一番いい」

 そのやり取りに、どうも花音ちゃんからあしらわれたように思えたのか、美来ちゃんは不満そうにしていたが、私も花音ちゃんの意見には同意だった。


 バイクなんて、何を選ぶかは、人によって千差万別で、結局は「好き」な物に乗るのが、後々、一番後悔しないのだ。


 旅は、続く。

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