強くてニューゲーム にっ
キョウカが召喚したナイスバディの金髪美女を見る。
光の星5ミカエルかぁ。
私は持っていなかったが、環境でよく見た火力キャラだ。
大体のソシャゲはPvP、対プレイヤーとPvE、対モンスターの2種類が主なコンテンツだろう。
ソシャゲ時代の戦い方は6体で1つのチームが基本だ。
ターン式で、1ターン1回の行動で、素早さ順に行動出来る。
また、キャラ一体に付き、4つのパッシブ&アクティブスキルを持つ。
パッシブは恒常効果、アクティブは任意発動の効果だ。
つまり6体の組み合わせでいかに強力なパーティを作るか、それが大切なのだ。
それはPvEでもPvPでも変わらない。
その点で言えばミカエルは環境に居座れる程の攻撃力、ダメージ倍率を誇るので、サポートさえしっかりすれば、チームの主軸として戦って行けるだろう。
ただ、私の懸念点は、現実になってしまったこの世界で果たして6体のチームを組めるほど、つまり手厚いサポートが出来るキャラが手に入るのだろうか。
最初の召喚は無償だろうが、この世界で簡単に召喚石が手に入るとは思えない。ぽんぽん手に入っていたらすぐにカオスなど死滅させられるだろう。
あいつらHPが多いだけで、ちゃんとしたチームの前だとただの木偶の坊だからね。
つまりカオスがある程度幅を効かせているこの世界なら、召喚石の入手難易度は相当高いと見るべきだ。
ガチャで手に入る最高レアの星5、それも光を引けたことでキャパオーバーでもしていたのか、フリーズしていたキョウカが再起動したようだ。
すぐ後ろにいた私に興奮しながら話しかけてくる。
「見てみてアルー!
光の、ひ・か・りの星5だよー!?
どんなもんよ!」
いつの間にかアル呼びになっている。
仲良しなう。
「普通に羨ましい。そのキャラの名前はミカエル。
かなり強いキャラだったはず。」
「そうなの!?やった!
っていうかアル知ってるねー!」
「…それほどでも。まぁ一応図鑑は熟読してある。」
そうガチャの内容は表示しなければならない法律があったため、全キャラの召喚確率と能力がトオカの図鑑アプリから見れる。
昨日列車の中で気づいた。
「さっすがアル。略してさすアル!」
「私もそろそろ引く。」
「アルもがんばって!
いい子が引けますよーに!」
こういうのはあんまり気張り過ぎてもダメなのだ。
物欲センサーは絶対あるのだから。
とりあえず狙いは星5だ。高望みし過ぎな気がするが、キョウカが激レアを引いた今、この流れなら引ける気がする。
台座に近づくと、手に持っていた召喚石が中空にひとりでに浮かび上がる。
そのまま薄い紫や薄い青の幻想的なゲートが現れる。
ラメっぽくキラキラと光っている。
もちろん虹色、星5だ。
えっっ理のゲートですやん。
うせやろ。これは期待してもいいのでは。
一際大きく光り輝き、理属性の象徴たる青紫の長い髪が目に入る。
年の功は20くらいだろうか。
足元がゆったりしたドレスを着こなしている。
全体的にスレンダーで、決して大きくはないが、存在感はある胸元がこれまた青紫のドレスで強調されている。
瞳は夕焼けのようなオレンジが差し、吸い込まれるようにその目を見てしまう。
「お久しぶりです。我があるじ。
理が1柱、セレナでございます。
あいとうございました。」
前世で私が愛し、私以上の上位勢と張り合えるまでに強強くなれた理由。文字通りの環境トップ。
その実力はtier表で専用のランクが作られる程。
攻撃、防御、速度に至るまで、隙のない万能な能力値。
そして類を見ないまでの量のバフデバフを付与するアクティブスキル。
理が1柱。セレナであった。
周囲の生徒達も完全に呑まれている。
有象無象の星5などとは存在感からして段違いだからね。
ミカエルと一緒にキョウカもフリーズしている。
「……初めましてじゃない?
セレナみたいな美女の知り合いは少ないからね。
改めてよろしくお願いするよ。」
前世があることはあんまり公言したくないので、ぼかしながら返事を返す。
「美女とは嬉しい褒め言葉です。
こちらこそ改めてよろしくお願いしますね。」
この短いやり取りでこちらの意図を察してくれたのだろう。
頭脳まで完璧とは、さすが。
ミカエルと一緒にフリーズしていたキョウカを引っ張り、少し離れた場所に移動する。
周りの新入生や担任らしき中年男性もこちらを追いかけようとしてくるが、セレナのひと睨みで完全に動きを止める。
笑顔なんだけど、有無を言わさない言外の圧力を感じる。
絶対に話しかけられたら長くなるし、ナイスアシスト。
キョウカが嬉しそうな顔と声色で話しかけてくる。
「おー!!あんまりその子のことは知らないんだけど、めちゃくちゃ美人さんで存在感あるね!!
私キョウカっていいます!よろしくね!」
「うん。かなり珍しい理属性の星5。
セレナって名前。
かなり強いから期待出来る。」
「どうも初めまして。セレナと申します。
色々積もる話もありますが、少し場所を変えましょうか?」
「そだね。私が最後だったみたいだし、今日はもう解散っぽい。何処か食事が出来るとこに行ってから東方人街の温泉にでも行こっか。」
「おー!」
「了解です。」
コクコクッ
ふむ、ミカエルは結構無口らしい。