仲直りできるブロンズ像の噂
この日の放課後、僕と先輩は昇降口を出た先にあるブロンズ像の前に来ていた。この像は、男女が背中合わせになった形をしている。ここが七不思議『背中合わせの二人』の舞台だ。
「まずは『背中合わせの二人』の噂についてだけど、これはカップルの痴話喧嘩の話らしいね」
「カップル? 銅像なのにですか?」
「うん。なんでもこの二人はお互いに相手への不満を言い合ってケンカばかりしていたようだ。それで、ある日ついに別れることになったんだってさ」
「なるほど……」
「ところが、いざ離れてみると、相手のいない生活に違和感を覚えてしまった。だから、もう一度やり直そうとしたんだ。でも、お互い意地を張って素直になれなかった。結局、またケンカになってしまった」
「…………」
「でも、ある日、恋人からメールが届いた。そこにはこんなことが書かれていた」
『君がいない世界は寂しい。今まで言い過ぎたことは謝る。戻ってきてくれ!』
「こうして、二人は仲直りすることができたそうだよ」
「よかったですね」
「ああ、めでたしめでたしだ。でもね本題はここからなんだ。あとでわかったことなんだけど、このカップルはどちらもメールなんか出していなかった
んだよ。つまり、誰かが勝手に送った偽物のメールだったってわけだ」
「えっ、それじゃあ本当の送り主は?」
「わからない。でも、そのメールには気になることが書かれていたんだ」
『背中合わせの二人のように後悔している。また会って君の目を見て話したい』
僕はブロンズを見て納得がいった。確かにこの背中合わせの像の男女は近くにいても目を見ることはできないな。
「それから、仲直りのためのメールやメッセージを書くときには、この像の前で書くと、うまくいくというジンクスが生まれたらしいよ」
「へぇ~、そうなんですか。知らなかったです」
「ちなみに、この像の名前は『再会の像』っていうんだ。いい名前だと思わないかい?」
「そうですね」
先輩は楽しげに笑っている。
(この人も結構ロマンチストだよね)
「この噂を知っている人はわりと多いんだ。だから、これが三つ目の七不思議ということでいいと思う」
「そうですね、言われてみれば僕もここでメッセージを打っている生徒をたまに見ます。頼りにされている噂なんですね」
「ああ、私もこの像が好きだから、こうやって時々見に来ることがあるんだ。まあ、今日はもう帰ろうか」
そして、僕たちは帰路に着いた。
★「七不思議解明! それは過去に起きた事件と関係していた。調査値+1、霊障値+1」(像の前)
調査値合計:5、霊障値合計:3、残り七不思議、あと四つ