夜中に動く石膏像の噂
その日の放課後、僕らは新たに聞いた噂の調査をしていた。それは『夜中の三時になると、美術室にある石膏像が動き出す』というものだ。
「こんなのどうやって調べるんですか?」
「もちろん学校に夜中に忍び込むんだよ」
先輩は平然と答えた。
「えっ、そんなことできるんですか?」
「当たり前だよ。学校のセキュリティなんてザルもいいところさ」
先輩は自慢げに語る。
「いや、そうかもしれませんけど……」
「まぁ、でも西来路くんが困ると思って他の方法を考えておいた。ビデオカメラを仕掛けておくんだ」
「ああ、なるほど!」
僕は納得して手を叩いた。
「石膏像が撮れる位置に置いておけばいいんですものね」「そうそう、それなら夜の学校に入っても大丈夫だろう?」
「そうですね」
「よし、決まりだ」
先輩は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、今日は準備をして明日決行しよう」
「わかりました」
こうして、僕たちはビデオカメラを仕掛け、仕掛けた次の日の朝に回収した。
「よし、さっそく観てみようか」
先輩はウキウキとした様子で言った。
「えっと、このファイルを再生すればいいんですよね?」
僕は先輩から借りたビデオカメラを操作しながら尋ねる。
「そうだよ。古めの型だけど、まだちゃんと動作するはずだ」
先輩は笑顔で答えた。
「……」
僕は緊張しながら再生ボタンを押して、動画を再生する。すると、画面に白い光が現れ、それがだんだん大きくなっていく。そして、画面全体が白くなると映像が途切れてしまった。
「あれ? 壊れたんでしょうか……」
「おかしいね……。ちょっと戻してもう一度見てみるか」
そうすると動画が映った。時刻は午前2時55分だ。
「よしよし、タイマー録画がちゃんと成功してるな」
先輩は満足そうな顔で呟く。
動画には真っ暗な美術室の様子が写っていた。
しばらく何も起きなかった。だが、突然、部屋の電気がついた。僕は驚いて、ビクッとする。
「びっくりしました……」
「私もだよ」
先輩も驚いたように目をパチクリさせている。
明かりがつくと同時に、ゴトン!という大きな音がした。
「何の音でしょう?」
「石膏像を倒したようだね。ほら、画面に映っている」
画面の中では、机の上にある倒れた石膏像を誰かが起こしていた。その人物は、ビデオカメラに近すぎる位置にいるため、誰なのかわからない。ただ、制服の形から、うちの女子生徒であることがわかった。
彼女は石膏像を元に戻すと、カメラの前を右往左往している。
「何をしているんでしょうか……」
「うーん……。まぁ、探し物をしているんだろうね」
「でも、こんな時間にですか?」
「まぁ、普通じゃないよね」
「ですよね……。一体、何をしているんでしょうか……」
僕が首を傾げていると、画面の中の女子生徒がビデオカメラから少し離れた。
「これで誰かがわかりやすくなりますね」
彼女の姿を見た瞬間、僕は息をするのを忘れるほど驚いた。なぜなら、彼女には首がなかったからだ。
「ひっ!?」
僕は思わず悲鳴を上げてしまった。
隣にいる先輩も青ざめている。
その時、突然動画が切れた。「どうしたんですか?」
「電源が落ちたみたいだ……」
先輩は震えた声で答える。
「えっ……? なんで急に……」
「わからん……」
先輩は力なく呟いた。
その後、いくら試しても、二度とビデオカメラは起動しなかった。
あとで美術部の部員の人に『夜中の三時になると、美術室にある石膏像が動き出す』噂について聞いてみると
「絶対動いてる。だって、朝来てみると石膏像の位置が変わってることあるから」
「石膏の粉が机の上に落ちていることもあるよ」
という返答が帰ってきた。
「たしかに石膏像の位置は変わっていましたね」
「うん、まぁ、それは些細な問題だったけど……」
「これはもう七不思議認定でいいですよね。僕はもうこの件には関わりたくないです」
「奇遇だな。私もだよ」
そう言って先輩は苦笑いを浮かべた。
★「ある七不思議について詳しい情報が載っている本やビデオテープを見つけた。調査値+1、霊障値+1」(美術室)
調査値合計:8、霊障値合計:5、残り七不思議、あと一つ




