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Infinity job change~デスゲーで仲間と生きる  作者: 寝る人育つ
絶望のチュートリアル
9/24

レベル200の壁

『キュ』


それは突然だった。


俺の視界が青に染まり、次の瞬間



イタイイタイイタイイタイ


骨もろとも、壊れ。一瞬の死痛を終えると、何も感じなくなった



『キュ』


今度は、腹だった


「うっ」



理解してしまった。スライムには勝てない



俺は、腹に手をやった。だが、その時には穴どころか、傷一つ無い。



視点が揺れ、チカチカと目の前が暗くなり。次第にその感覚が短くなってきていた


3度目の死。何をされたのか理解できない。たったの数秒で3度の死………



「あ」


ようやく声が出た、感覚が鈍くなり。時間が経つのが遅くなった様な気がする。だが痛み……痛覚は正常だった……………地獄だ


そうまさに地獄だった。お腹に穴が空きその痛さは尋常じゃない



そして


『キュキュ』



スライムは、上半身を攻撃しても意味がないと判断したのか。次の標的となったのは足。



右足左足を失っても尚、俺は死んでいない。いや、生きていた(・・・・・)




英雄の加護による生半可の強化の影響か、それとも元からのルール()なのか。


一撃で生命力(HP)が無くなるも、一瞬の痛みが生じる。その痛みこそが、この世のあらゆる痛みを超える苦痛とかしてしまう


この世界(IJC)において、『痛覚などの制限あり』と書いてった。だが、その横にこうも書かれていた。


『※注意※ 一定の上限を超えれば、その限りではない』


、と。


(なん、だこれ。イタイ、イタイイタイイタイ。いっそ死んで楽になりたい)


だが、この世界(IJC)は、それを許さない。死にたくても死ねない。それこそがこの世界のルール()と化してしまったから。



死にたい



『キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ』



スライムは、死なない俺を不思議に思いながらも、優しさとは無縁……躊躇することを知らず、もはや俺の肉体(身体)は原型を留めていない。


意識だけの肉片と化している。



『キュ?』


しばらくしてスライムの攻撃が止んだ。



(やっと、開放されるのか?)



だが、その考えの甘さをこの後知ることとなる。



『キュキュ?』



今が逃げるチャンスと分かっていても、体が精神が………本能が理解した。


―――――こいつ(スライム)には勝てない。



それどころか、勝つことはもちろん。逃げることは疎かダメージを入れることさえも……




(うっ)


スライムは俺を食べている。スライムの中はまるで、この世に存在するあらゆる酸よりも強力ななにか。


『キュキュキュ』


なぜ死ねない? 俺はレベル1だ、なのになぜ



そうして俺は、スライムによって喰らいつくされた




――――――――――――――――――――――




side名も無き少年


「勇者様ーーーー」


僕の目の前に新たな勇者様が現れました。僕は勇者様の所へと走りました。ですが突如として勇者様が、まるで初めからいなかった様に消えてしまわれました。


これはおそらく“現世帰り”なるものでしょうか? 


噂では聞いていましたが、実際にこの目で見たのは初めてです。




ですが、こちら()からはただ待つことしかできません。“現世帰り”とはそういもの()ですから。



そして一度“現世帰り”をした勇者様は半年、運が悪いと一年は戻ってこない。その間僕、……僕たちはその場でただ待つことしかできない。一度勇者様を見てしまえば最後。始まりの試練(チュートリアル)を終えなければ制約()により、様々な禁則事項(ルール)が発生する。それが僕たち一族に枷られた罪(・・・・・)


たとえば、3大欲求にあるものが代表的な枷。その他に移動なども含まれている。



――――――



………この世界(IJC)と勇者様の世界(神界)では、時の流れがズレていると語られる。


そのズレは、倍の流れといわれている。ここからが重要だ。僕たち一族(・・)の罪により、勇者様の始まりの試練(チュートリアル)を手伝わないといけません。


ですが、神はそれだけでは都合が悪いと思ったのでしょう。この世界(IJC)の時空を歪め、新たな……第三の世界ともいえよう世界。世界(名無き村)を生み出しました。



その名無き村は、この世界(IJC)と時の流れは、驚異の100倍。勇者様の世界(神界)にとっては200倍になるのでしょうか?



そう、思考を巡らせること3分程経過(・・・・・)した時。


突如として勇者様が“現世帰り”をした場所が光出しました。




そして光がおさまった頃そこには勇者様が立っていたのです。



『なぜいるのでしょうか?』


それが最初に思い至ったことでした。そうでしょう。勇者様の世界(神界)とこの世界(IJC)は200倍もの時の歪みがあり。3分(・・)で戻って来ることじたいが不可能なのです。


そう、近いではない。不可能、ありえない、理から反するです事例です。



いえ、今考えるべきことはそうではありませんね。僕は僕のやるべきことを遂行するだけです。



「勇者様。やっと会えました。今まで何処にいたんですか?」


僕は分かっていながらも勇者様に訪ねました。


『勇者に“現世帰り”の情報を悟られることを禁ず』


これは禁則事項(ルール)に存在する理。そして言わされている(・・・・・・・)ことではありますが。



「まずは、はじまりの街に行くだったか……まあ他にすることないし、はじまりの街に行くか。歩いていたらそのうち付くだろ。」


僕の掛け声に対して帰ってきた答えは実に簡素。いえ、清々しいまでの無視でした。


さらにあろうことか、勇者が何処かへ……はじまりの街まで歩こうとしていた。



ちょっと、いやかなりムカつきましたがが我慢です。これもまた、禁則事項(ルール)の一つ


『勇者に直接的危害を加えることを禁ず』


です。なにで、我慢。そしてさらに続けて僕は言います。


「勇者様、酷いです。無視しないでください。どこ行こうとしているのですか〜」



『名無き村の住民は、外の世界の情報を最低限のみ与える』

『名無き村の住民は、勇者に名無き村の存在を知られてはならない』


たとえはじまりの街の存在を知っていてもまた、禁則事項(ルール)によって知らないふりをしなければならない。そして、勇者様にはこの場所を知られてはならない。



「ん? ど、どうしたの?」


あろうことか、勇者様は演技で惚けようとしました。バレバレですけど……そもそもほんとに気付いていなかった場合


「な、なに」


などあからさまな反応はしません。


知ってた所で


『勇者は正義であり、勇者を疑うような行動・言動を禁ず』


禁則事項(ルール)によって勇者様に悟られる訳にもいきませんが


「そうですか」

「信じて貰えたか」


表面上はそう答えるしかないでしょう。ただ、勇者様の将来が心配です。これが正しく嘘が下手な人に該当するのでしょう


「はい」


「では、勇者様始まりの試練(チュートリアル)を始めましょう。レベルを“2()”に上げることで終了となります」


そうして勇者様の始りの試練(チュートリアル)が始まりました。



「まずステータス確認です。『ステータス』と、唱えてみてください」



僕が言うと、勇者様はステータスと唱えしばらく己の技能(スキル)を確かめはじめました。


そうして勇者様が一息ついたタイミングを見計らい


「一通り見終えたようですね。それでは、勇者様にあった武器を選んで見てください」



その一言を言い終えると、僕は己の技能(スキル)の一つ異空間(イベントリ)から見習いシリーズ。長剣、短剣、刀、槍、弓といった基本武器から盾の様な防御の為の物そして魔法の補助に必要な杖を空中に浮かべて言った


「俺にあった武器…」


そして迷うように少し時間がたってから


「…長剣」


そうお答えになりました


そして勇者様が長剣と決められたので、僕は見習いシリーズを異空間(イベントリ)に戻して


僕の使える技能(スキル)譲渡を発動し、“見習いの長剣”を譲渡をした。


「勇者様、いまステータスから長剣を保持しているか確認し、装備してください。」

「ああ。」


そして勇者様はステータスから、僕が与えた“見習いの長剣”をこの世に召喚させた。



余談ですが僕が持っている異空間(イベントリ)は勇者様にとって技能(スキル)では無く、しすてむ? と言われている。


そして、勇者様なら絶対使えるらしいです。勇者様がこの世にくるまでは、この世界で3人(・・)しか持っている者の存在が確認できない程の技能(スキル)


何事にも例外は存在します、3人(・・)と世間は認知しているはずです。


話がずれてしまいました。





「装備出来たようですね。では、勇者様目の前のスライムを倒し、存在値(レベル)()上げれば始まりの試練(チュートリアル)終了です」


そうして、僕はスライムを指定位置に召喚した。


ですがいくらスライムを倒そうと、勇者様の存在値(レベル)が上がる気配がしません。一瞬上がったと思う場面もありますが、それでも一瞬に過ぎないのです



「少年よ、このスライムの経験値(EX)をどうにか上げれないか?」


そんな時です。勇者様が、ふと僕に訪ねてきました。


「あります、ただ……」


勿論存在します。ですがレベル1の次は……


「推奨レベル1の次は200になります」



その時の勇者様のお顔は、まさに絶望した者のそれでした。まさか僕も勇者様がここまでレベルが上がりにくいとは……勇者様なら“現世帰り”をすればよいのではないでしょうか。



このとき少しずつではありますが、薄々理解してきました。なぜか、僕たち一族の枷が外れかけていることに。このときは、気のせいと思い込んでいましたが…いずれしることになる。枷が外れた僕たちは、わざわざ勇者様にいい顔をしなくていい



…………




絶望をしてもなお、勇者様はスライムをモクモクと狩っています。ですが限界が来たようです


「少年スライムのレベルを上げてくれ。」

「わかりました。レベル200ですよ。死んでも後悔はなさらないでください。」

「……。」



なんと勇者様はスライムのレベルを上げてくれと、言い出したのです。


それでも僕たち一族は禁則事項(ルール)というなの枷により、勇者様に逆らうことは出来ません。


そう、決して僕自ら勇者様に危害を加えようとはしていない。そして嘘も何もついていない。


ただ、勇者様は正義であり、勇者様の言葉を第一に尊重しただけに過ぎない。



そして勇者様は、僕が召喚したスライムが現れたと共に秒殺されました。しかし、勇者様はなぜか生きて(・・・)いました。正確には、元に戻った……時が戻ったようでした。まるで、それが理であるかのように。



スライムは勇者様が死なないと悟り、勇者様を飲みこんだ。



ですが勇者様を全て食らった、と思うや否やスライムが暴れだしたのです。もしや……


(勇者様が何かを仕込んだ?)


いえ、ありえないこと。幾ら時が戻されたとしても、戻る速度よりスライムの中の方が破壊力は圧倒的に上のはずなのに………




信じられない光景です。スライムのお腹から勇者様が表しました。



そう、本当に信じられないことです。なぜ戻っていられる(・・・・・・・)肉片にされ溶かされた勇者様が




――――――――――――――――――――――




sideケン



「グッ」


先程俺はスライムに肉片にされ喰われた筈だ。生き……


(く、苦しい。)


俺が目を開けたその時辺りは薄い青色が見え。よく見ると平原だった


(これスライムの中?)


ガッハ


(息、が……)


うっ



なにかに斬られた感触があった。スライムの魔法だろうか?


先程のように物理とは違っていた。そう、直感した


水……ここでは水斬とでもあらわそうか。イタイイタイイタイ


この痛みは、先程味わった………生きている中でまず味わうことは無い激痛だった。



それから2度、3度程と、同じことを繰り返され、いつの間にか無傷(・・)の状態になる。


そして、一瞬の間に何も残らず殺されてしまう。




何年経っただろうか?


実際は数ヶ月、数日かもしれない。ただひたすら破壊と再生を繰り返す時間。



ああ、また

殺された。


人間は慣れる生き物だ。




何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も………



…何度も、、(破壊)され生き返る(再生)。それを何度も繰り返していくことで


(痛みはもう感じなくなった。こいつの中からどう出ればいい………)



感覚が麻痺していく。何かを考えないと、心が壊れそうになる。




永遠にここ(スライムの中)にいなければいけないのか?


それ以外の思考をただ回し続ける。一度でもそれを受け入れてしまえば、もはや戻れなくなる。その確信が持てた




そもそもこいつに弱点は存在するのか?


こんな化け物に……


(うっ)



気持ち悪い。


幾ら痛みに慣れようと、殺された感覚には慣れないもので、物凄く気持ち悪い。


本能が、悲鳴を上げ。これ以上の攻撃を受ければ死ぬ。と、命令をする。


だが命令をしたときには既に遅い。スライムが俺を殺すのに、秒もかからないからである。



そう言えばスライムが攻撃するまで一瞬のラグがあるような……



殺され、少し(一瞬)の余裕ができたとき、ふと頭に浮かんだ言葉



もしかしてその間は無力?




そんな筈はない。もうここから出られるはずがない。そう分かっていても、試したくなる。


一度気がついてしまえば、そのことしか頭に入らず、ほんの少しだが余裕を持てた気がした。





そして一つの起点が訪れた。いや、運命の分かれ道といったほうが正しいだろうか。


ここで、気が付かなければ。俺は幾分かの時を経て、心が折れていたに違いない。


ある意味そちらの方は良かったのかもしれない。これに気がついたことによって、俺は修羅の道に進む事になった。まるで、物語の英雄譚に存在する英雄(・・)のように。

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