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再起動

春から初夏に入る頃、夜間に嵐が吹き荒れて宮の周辺にも影響があった。

ルリビタキのメスが抱いていた卵が数日前に孵っていたが、1羽の雛が巣から落ちていた。

ジゼルが発見して巣に戻そうと手を差し伸べたところで「待て!」と初めて聞くような大声でガイが制止した。

雛に人の手が触れてしまうと親鳥は2度と世話をしないそうだ。

平民には平民の知識があり、決してバカに出来ないものだなと思わされる。

ガイは木の枝を2本拾い、それで雛を器用に摘んで立てかけた梯子に登って巣に戻した。

下ではジゼルが「騎士さまカッコイイ!」と心の声がダダ漏れていた。

ニブチンのガイにも流石にこの声が届いたようで耳まで赤く染まっていた。

それに気がついたジゼルも真っ赤になっていて、執務室の窓からそれを見ているのがバカバカしくなった。


※※※


「ようやくジゼルの想いが通じたのね!」


レーナは密かに幸せの青い鳥と名付けたユリシーズの描いたデッサンを感慨深げに眺めた。

はぁ〜とため息をつくお嬢さま自身が恋する乙女になっていることに無自覚なのを侍女たちは微笑ましく見ていた。


※※※


今日毒杯を賜わるかもしれないし明日放逐されるかもしれないが今はまだ王族であるのでそのように振る舞うべきだろうとユリシーズはようやく気持ちを切り替えた。

政治と経済の勉強をし直すことにした。


「征服王と呼ばれ近隣諸国から多くの領土を削りとった国王は貴族には人気が高くとも平民からは嫌われていたという。

平民にとって戦場に出て戦うのは税金を納める以上の意味はないから重税を課されるのと同じということか。

戦うための技術もなく装備も有り合わせでは武勲もなく褒章もない。

命の危険と家族の心配、生活の不安…勝っても生き残れた以上の意味はないとは。」


今までスッポリ抜けていた人心という観点から教材を見直し、疑問に思ったことは以前に師事した教授たちに手紙を書いて教えを乞うた。


書いた手紙と届いた手紙はデーヴィッドが確認することになっている。

護衛とともに監視の役割もあるのだ。

そしてデーヴィッドは定期的に国王陛下に報告していた。

ユリシーズ王子が立ち直り成長するのを静かに待つ父国王に。


現在の継承権第1位はユリシーズの弟王子であるが未だ乳飲み児である。

第2位をユリシーズの叔父である王弟にしようとしたのだが本人が拒絶して第3位のままになっている。

なのでユリシーズは継承権第2位であり謹慎が解ければ王太子として復帰する可能性が高い。

というより関わるすべての人に望まれていると言っていい。

王太子不在では政情不安になってしまうのだ。


現在、フェアファクス辺境伯となっている王弟レオンはユリシーズが立太子するまでは王宮にいて可愛がってくれた、叔父さんというよりは歳の離れた兄のような存在だった。

まだ早いとユリシーズが立太子することに反対した唯一の人物でもある。

よく知っているからこそ優秀と持て囃されたユリシーズの欠点が見えていたのだろう。

低くない継承権を持っているがため、ユリシーズの立太子後に視察と称して辺境に行き、そこにそのまま食客として留まった。

そしていつの間にか辺境伯家の令嬢と恋仲になり婿養子に収まったのだ。


謹慎して3ヶ月が過ぎ、レオンはユリシーズの宮を訪れた。


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