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幸せの青い鳥

ユリシーズはレーナへ謝罪の手紙を3連続で送ってしまったことに、迷惑そうな返信を貰ってから気づいて頭を抱えた。

これ以降は不要とあったが、それについてはどうしても謝っておきたかったので簡潔に書いたのだが、それだけの手紙を送るのは更なる迷惑に他ならない。

今の質素な生活を知ってもらえば少しは溜飲を下げてもらえるかもしれないと自嘲も込め、ただし卑屈にならずに赤裸々な謹慎生活を書き足して送った。

と、意外なことに返信が来た。謹慎生活に興味がある様子。

最近の公爵家の様子は分からないが自分のやらかしで社交もままならない状況であることくらいは分かる。

元婚約者の無聊を慰めるつもりで書いてやろうと思った。


※※※


食事は全員でとることにしていた。

今は王族でも平民に堕とされる可能性は少なくない。

それに同じものを同じ時に食べるなら毒味も必要ない。

真っ先に口をつけなければ事足りるだろうとひとり反対したデーヴィッドを説得した。

料理は平民が食すもので構わないので皆が好きなものを作ってくれとクインシーにオーダーした。

大皿に盛られた熱々の料理は食い出があってとても美味しく感じられた。

食事中でもジゼルはよく喋る。ここまで気を遣われないといっそ清々しい。


「騎士さま、ここがいちばん美味しんですよ。

育ち盛りなんだからたくさん食べてくださいね。

あ、デーヴィッドさんもおかわりですか。燃費悪いんですかね。はいどうぞ。」

「「「あからさまな格差!」」」


ガイは年若いので呼び捨てかガイくんと呼ばれているが、ジゼルだけは騎士さまと呼んでいて、普段あまり表情が変わらない奴だがその時だけは嬉しそうな顔をする。


ジゼルが裏庭で野菜を育てている。

実家は農家なのかと聞いたら商家であったという。

大商会の令嬢だったが家業が傾き、食うために野菜の育て方を覚えたそうだ。

教育は施されていたのでありがたいことに王宮に出仕出来たという。

能天気な奴だと思っていたが苦労したようだ。

小遣いを渡し、下町でジゼルが度々絶賛していた庶民の菓子を買ってくるように指示した。

護衛としてガイを同行させた。

落ち着きのないジゼルに必ず手を繋いでいるように命令する。

近衛の矜持にうるさいデーヴィッドが黙認してくれた。

ヒルダとクインシーがニヤニヤしていた。


執務室の窓から見下ろせる位置に木の枝が別れているところがある。

そこにルリビタキの番が巣を作った。

灰色のメスが卵を抱えていてその周りを美しい青いオスが飛びまわっている。

それを見てレーナ嬢の青い瞳を思い出した。


※※※


同封されていた色鉛筆で描かれた綺麗な青い鳥のデッサンは額に入れて部屋に飾った。

レーナはユリシーズの取り留めのない日常が綴られた手紙を何度も読み返していた。

婚約者時代でもこんなに身近に感じたことはなかった。


「ジゼルの恋を皆が応援しているのね。私の瞳の色は覚えてたのか…」


クインシーの大皿料理と庶民の菓子が気になること、ジゼルの恋の行方に夢中になっていること、青い鳥のデッサンが生まれてからこれまでで最高のプレゼントでとても嬉しかったことを書いて送った。

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