魔蝶は結局魔物でした
小屋の中に入って気づいたこと。風呂無い。あるのは地下に繋がる階段だけ。そう言えば、見かけ上この小屋結構小さかったな。お風呂があるのかどうか微妙だったんだよね。
とにかくアマミちゃんが落ち着くまで抱きながら頭を撫でてあげる。アマミちゃんの魔女帽子は僕が被っておく。メガアゲハことアゲちゃんは魔女帽子にくっついたままである。
「落ち着いた?」
「ウワーン。次からは貸してと言われても貸さないんです!てっきり撫でてくれると思ったんです。」
まあ、可愛がっているペットを誰かに渡したら目の前で殺されたらそりゃキレるわな。
「後でミネガル先生に伝えておくよ。それよりこの小屋、お風呂場が有るとか言っていたけど…見るからに何もないよ。」
「階段があるんです!」
「そ、それはそうなんだけど。」
「こっちなんです!」
アマミちゃんが階段を下りていくので一緒についていく。地下に行くから暗いのかと思ったけど、所々にアマミちゃんが作ったと思われる光球が点在しているので暗くはない。小屋の中にも明かりがあったし。
「さっき入ったときは真っ暗だったんです!怖かったんです!明るくしたんです!」
お、おう…。で、地下を降りきると…目の前に石でできたお風呂があった件。大きさ優に十数メートル!軽い温泉みたいになっているぞ?!お湯はないけど。
「お風呂なんです!折角なので入っちゃうんです!今お湯をいれるんです!」
アマミちゃんが両手を前に向けると魔法陣がお風呂場に展開されて一気にお湯が出来上がった。さっき小屋を作ったときもそうだけど、流石にこのレベルの魔法だとアマミちゃんに刻まれている顔の横の十字の線とか体の線とかが光輝く。今回は魔法陣と模様の輝きは共に赤紫だった件。
「これで入れるんです!」
で、何事もなかったようにいきなり素っ裸になってお風呂に飛び込むアマミちゃん。そんなに急に飛び込んだら水しぶきが僕にかかるわ!
若干濡れたけど、まあこれぐらい平気かな。アマミちゃんの服をたたんで階段の上の方に置いて、僕も服を脱いでそこに置いて…2つの帽子も全部外してお風呂に向かいました。なお、アゲちゃんもついてきた件。
で、入ってみると意外に暖かい。魔法で出来たお風呂も良いね!…で、アマミちゃん?死体に見えるから仰向けでプカプカ浮いてないで!
「極楽なんです!温泉なんです!」
別に湧いてないだろ。作っただけだろ。後、極楽云々で仰向けで浮いているやつは始めてみたわ!で、なんか飛んでいったと思ったらアゲちゃんがアマミちゃんの胸辺りに止まった。
「アゲちゃんも極楽なんです!お湯に入りますか!沈むと面白いんです!」
アマミちゃんが、アゲちゃんを捕まえようとすると飛び上がった件。そのまま空振ってアマミちゃんはお風呂に潜っていく。
「プハー!酷いんです!アゲちゃんと一緒に潜りたかったんです!疲れたから寝るんです!」
待て待ておいおい!アゲちゃんはメガアゲハっていう蝶の魔物だよ!潜らしたら窒息死するよ!…で、ガチで仰向けで寝てるし!やりたい放題だな!
アマミちゃんの寝息が聞こえる。僕もお風呂に沈みながら今後を考えていると、アゲちゃんがまたアマミちゃんの胸に止まった。
で、様子を見ていると…あのメガアゲハ、魔力をまた吸いとってるよね!…いや、吸い取ってるならまだわかる。吸い取る量がおかしい!さっきアマミちゃんの指に乗ったときは本当に微量だったんだけど…今だと1分間辺り魔術師一人前の魔力を吸いとってるよ!
いや、アマミちゃんなら全部吸い取るのに1000000分かかるから気にしないし、魔力は減っても自然回復するものだからあまりどうこう言わないけど…普通の魔術師なら1分で瀕死である。要は1分で魔術師倒せるぞ?やっぱり魔物じゃないか!
アマミちゃんはこんなので死にやしないので若干アゲちゃんを調べてみることにする。アマミちゃんの方に向かってもアゲちゃんは逃げずにまだ吸っている件。手を近づけても動かない。まるで余裕の態度である。
アゲちゃんの羽を刺激すると漸く嫌がるように移動した。飛ぶわけではなく、足を使って歩いた感じである。…やはり、かなりの余裕がありそうだな。まあ、襲ってこない限り叩き潰したりはしないけど。
で、蝶の位置を動かしたりその後蝶の口元を見たりして分かったこと。どうやら吸う部分によって吸える魔力量が違うみたい。アマミちゃんの胸辺りが一番最大で脇とか腕とかの方に行くと吸収量が激減している。
僕なりの推理だと、肉食動物が草食動物を食べるとき内蔵をメインに主食するのと同じ感じがする。要はアマミちゃんの胸とかお腹とか柔らかい部分からだと魔力の吸収量が多く、腕とかの固い部分は…固いって言ってもアマミちゃんはどこも柔らかいと思うが…魔力の吸収量が悪いらしい。
メガアゲハの狩りとして、僕なりの推測はこんな感じ。基本的には植物の魔力を吸う。とは言え、それじゃあ効率は悪い。ただ、動物だと襲われたり潰される可能性もある。ただ、アマミちゃんの様に上手く蝶として優しく振る舞えば側に置いておくことも厭わない動物も出てくるはずである。蝶なんだし。で、相手が油断して急所を見せたところでそこにガブリつくといった感じかな。…頭脳戦とは言ええげつないなこのメガアゲハ。
少しすると、魔力の移動が終わった。どうやら魔力の吸引が終わったらしい。大体魔術師の5倍程度の魔力を吸ったなこのメガアゲハ。普通に考えれば魔術師5人を食い漁ったことになる。所詮は魔物ってことかな!で、メガアゲハもアマミちゃんの胸の上で羽を広げたまま静かになった。おそらく寝ているのだろう。お腹一杯ってとこかな?で、アマミちゃん殆んど無傷だからね。ヤバイなこの子は。




