吹っ飛んだ発想の勝利
出発した後も僕達は、荷馬車の上に乗って暇潰しをしている。と言ってもすることないし、僕は適当に本を読むことにした。よく冒険者達が護衛をしたりするような小説って絶対暇だと思うんだけど、どうしてこんなにも暇なことが出来るのかな。と言うよりなんで冒険者なのに護衛依頼とかあったりするんだろう?色々謎なんだよね。で、鉄板の如く襲われるんでしょ?僕らも襲われるのかな。ある意味襲われなかったら小説として成り立たないと言う事象でもあるのかな。
「お姉ちゃん!暇なんです。荷馬車の上あったかいんです!お休みなさいです!スカピー!」
寝るときにスカピーなんて叫びながら寝るのはアマミちゃんぐらいだよ!…てか本当に寝てるし。凄いな!なお、僕とアマミちゃんは荷馬車の淵に足を垂らして座っている感じである。そのままアマミちゃんが寝ちゃうと言う…やっぱりたくましいなこの子!僕も読書程度ではガチで眠くなるけど、今は一応護衛依頼やっているから寝ないようには注意する。で、読書はする。暇だし。
で、なんか下からの目線がすごく気になるんだけど。本を読みながら下を見てみるとある冒険者が定期的にこっちを見上げていることが発覚。
更によくよく見てみると、僕と言うよりかはアマミちゃんの方を見上げている件。…うーん、何をしたいのかは分かったけどそれにクレームをいれるのには勇気がいるし…かえって起こしてまでアマミちゃんに伝える意味もないし…とにかく冒険者は変態が多いと言う認識にしておこう。後は、この座り方はやめた方がいいかな。
残念ながら…いや、本当にごめんね、誰に謝っているか全くわからないけど…何事もなく休憩地点の村につきました。
「護衛のほど感謝する。今日はこの村で待機のため冒険者の皆さんは自由に行動してもらって構わない。宿は全員分予約してあるから、チェックインはしておいてもらえるとありがたい。場所はすぐそばだ。」
商人が指差したところには結構大きめの宿屋があった。
「それと、先程ミカオさんから聞いたが居酒屋はあっちだ。私ら商人や御者も招待してくれて感謝する。ただすまないがこちらは予約等をしていないので空いているかわからないが…他になにか質問はあるか?」
「宿の費用はどうなってるんだ?」
「予約はしてあるが、費用においては個々持ちにしている。宿を使わない等あれば私か宿主に伝えてくれると助かる。他には…まあ、何かあったら言ってくれ。以上だ。」
費用は全部こちら持ちなの?うーん、お金がない。これじゃ泊まりようがないんだけど。どうする?
「ミズハさん?!どうかしましたか?!顔色が悪いです!」
「え…うん。アマミちゃん。僕達お金がないんだ。居酒屋も宿も行ってる場合じゃないんだけど。」
「お金を作れば問題ないです!」
「偽札は駄目だよ?」
「売れば良いんです!」
確かにその手があった!早速村中を歩き回ってみる…うん?なにかが足りない。
「冒険者ギルドなくね?」
「そうなんですか?!」
うーん、見落としか?…いや、やっぱりない。ミカオさんとか何処にいるかわからないし声かけるのも億劫だし。
「どうしようか?別に飲み会に参加する必要性もないし、野宿すれば泊まる必要性もないし…ミカオさんに相談かなぁ。でも、今何処に行ったか分からないし…。」
「お金を作れば問題ないです!」
「だから作っちゃダメだって。」
「このキノコでお金を作るんです!」
「キノコ…って?」
アマミちゃんが取り出したのはいつもネタに使っている毒キノコ2つである。本来なら当に腐っていそうだけど…アマミちゃんの腐敗抑制魔法なり異空間魔法なりで取れたて新鮮であるキノコ。…猛毒だから食べたら即死だけどね!
「さっき採取した物もあるんです!このキノコも6つまで在庫が増えたんです!ミズハさんに食べさせたい放題なんです!」
だから殺す気か!1個で即死だよ!それ以上食べてどうするの!
「キノコや薬草を売れば稼げるんです!稼ぐんです!」
「あー、そうなんだけど…見た限りギルドがなくて売る場所がないよ?」
「道端の人に売るんです!」
いやいや、それやったらビックリするでしょ!第一その毒キノコは見かけは禍々しいからどんなに加工すれば高級品とは言え通行人に訴えられるよ!
「うーん、通行人だと受け取ってくれないと思う。ギルドの素材受け取り所じゃないと厳しいよ。」
「どこですか!」
「この村になさそう。」
「作るんです!バナナパワーで作るんです!」
バナナパワーって何?!
「バナナを加工してお家を作ればギルドの完成なんです!そしてとっても美味しいんです!頭良いんです!」
結局食べるのかーい!1000歩譲ってバナナでギルドを立てたとしても意味ないよね!…と言うよりバナナで家を建てると言う発想が意味わからないよ!お菓子の家だって理不尽だらけなのにバナナの家なんてそれこそ即腐って終了でしょ!
「うーん、やっぱり野宿かな。ミカオさんを探さないと…」
「売りに行くんです!乗るんです!」
「え?」
「良いから乗るんです!」
「あ、ちょっと…」
なんか良くわからないけど強引に箒に乗らされ飛んでいくことになったよ!
「うわーん!ここどこですかー!」
どう言うこと?!誘拐されたら誘拐犯が迷子になったよ!
「え…えっと、何処へ生きたいの?」
「ギルドがあるんです!師匠の家の側にはギルドがあるんです!そこに行きたいんです!」
「え…あ、分かった。何をしたいのか。」
そうか、それだ!売る場所がなければ王都にいけば良い。確かに普通に歩くのに2時間掛かろうが、アマミちゃんの箒なら数分じゃん!いや…常識的にそんな手段思い付かないからてっきり手詰まりかと思っていた。
アマミちゃんは普段から発想がぶっ飛んでるけど、だからこそこう言う手段も思い起こせるのかもしれない。…まあ、最終的に迷子になる辺りはいつものアマミちゃんだけどね!
やっぱり僕は誰かを自分の型に嵌め込みたくないし、逆も嫌。常識なんて馬鹿真面目に守ったってそれこそ人造人間かアンドロイドにでも任せとけって言うもんだよね。こう言う個性的なところが凄い力を発揮してるじゃん!分かったか、普段から常識や正論ばっかしか叫ばない奴ら!




