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九話「海戦」

今回も駄文、短文になっています。


ビストリア連合王国南東の海


 南東の沖合には既に出撃を終えた帝国艦隊が一路ビストリア連合王国東側の都市、アクスプールに向けて航行していた。この艦隊の目的は陸戦で圧倒しているであろう国境線の部隊と共同し西側から陸軍、東側から艦隊と海軍海兵隊による挟撃を実行するためである。

 その多くが船体両舷に巨大な外輪を付けた蒸気動力船で、船体中央から飛び出した煙突から黒煙を吐き出していた。



セザール艦隊旗艦『サン・アンドレオ・トルニダー』


 全長151メートル、全幅23メートル、排水量1万トン以上の鋼鉄製の船体に24センチ、15センチ、8センチの後装式ライフル砲を両舷合わせて54門搭載したコンキスタ帝国海軍最大の軍艦が総勢200隻以上の艦隊を引き連れて巡航速度8ノットで航行していた。

 彼女の甲板にこの艦隊の司令官を務める男、ジュリオ・セザール大将が単眼鏡を片手に立っていた。その隣には艦長であるシュバリエ大佐が立っており、セザール大将の指示にいつでも応えられるよう待機していた。


「艦長、君は今回の戦をどう捉える」


「はっ、偉大なる祖国のための重要な戦いだと認識しております」


 シュバリエ大佐のお手本のような解答に若干がっかりするも、セザール大将は顔に出さず頷く。


「そうか、ではこの戦いに我々は勝てると思うか?」


「間違いなく勝てると思います。大日照皇国と名乗る国家がいる分、不確定要素はありますが最終的に勝つのは国力で勝る此方かと」


「なるほど、ありがとう。一つの参考として覚えておこう」


 謝意を口にしながらセザール大将は内心辟易としていた。シュバリエ大佐の解答がおそらくこの艦隊に属する者達の意見なのだろうが、彼からすれば読みの浅さが見え見えだった。


《艦長、君もか。今になっては東三国は以前のように容易に攻略できる敵ではないというのに。何故陛下はそのことに気づかないのか》


 セザール大将の想いは誰に知られることもなくただ波の音だけが耳を叩いていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ビストリア・ウッドガルデン連合艦隊

旗艦『サントラ・ビストーリア』


 大日照皇国から購入した新鋭艦のみで構成された艦隊が巡航速度30ノット以上の快速で航行していた。旗艦級である巡洋艦8隻と護衛である駆逐艦24隻の艦隊は来るであろう帝国艦隊を警戒して西側に向かっている。

 クリーブランド改級である本艦には連合艦隊司令部が設置されており、そこにはビストリア連合王国海軍将官の他、ウッドガルデン王国海軍の将官が集まっていた。

 連合艦隊司令長官である海蛇族の老将、イラブ将軍は海図を前に腕を組んでいた。その近くには大型の通信機材があり、偵察機から敵艦隊発見の報を待っていた。


「西側の海域を偵察飛行していた機から入電!『我、敵艦隊発見ス。装甲艦32、蒸気戦列艦64、フリゲート、コルベット多数。敵主力艦隊と認める。位置は……』」


 通信士からの報告に場は湧き立つ。直ぐに艦隊は進路を偵察機の報告にあった海域に向けた。


数十分後


 連合艦隊が敵艦隊発見の報を受け取ったのと同じ頃に近くのウッドガルデン空軍基地から攻撃隊が出撃した。

 その攻撃隊は多くが新型攻撃機のA-1『スカイレーダー』で、多数の爆弾か航空魚雷を翼下もしくは機体中央に懸架している。

 その数24機。

 更に護衛のF8F『ベアキャット』4機と共に飛行する編隊は現在のウッドガルデン空軍が保有する最新鋭航空戦力の三分の一を誇っていた。

 前方を飛んでいた機が敵艦隊の発見を伝えると燃料タンクを放棄し、戦闘に備える。

 攻撃隊隊長機に乗る犬人族の大佐ドーベンは各機に向かって通信する。


「いいか、この攻撃は我等『ドーベン隊』の初陣である!気を引き締めて行け!」


『『『『『はっ』』』』』


 隊長機に続いて各機が急降下を始め、雷撃機は海面スレスレを爆撃機はその上空を飛行し、その様子は猛獣の口を連想させるような陣形だった。

 その強靭な牙は今まさにセザール艦隊を食い破らんとしていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




セザール艦隊旗艦


「左舷10時の方向より敵騎来襲!数24!」


「対空戦闘用意!全対空魔導士は弾幕を張れるように待機しろ!」


 いち早く敵騎来襲を目撃した見張員の報告を聞いたセザール大将は直ぐに迎撃準備を指示した。

 甲板では慌ただしく人員が動き、その中には小型の魔仗を持った兵士達の姿がいた。彼らは対空戦闘に特化した魔導士で、帝国の魔仗に関する研究成果によって基本的に誰でもなれる。

 対空魔導士達は敵騎に向けて魔仗を構えると短い詠唱と共に魔法陣を形成する。次の瞬間には無数の拡散する火矢が放たれた。

 しかし、所詮人による操作では遅くとも時速500キロを優に超える攻撃機の前ではほぼ無意味に近かった。放たれた火矢の多くは攻撃機が通った遥か後方を抜けるばかりで全く当たらなかった。

 攻撃隊はセザール艦隊の対空防御網を物ともせず突破すると爆弾、もしくは魚雷を投下した。艦隊には魚雷や航空爆弾が降り注ぎ、巨大な水中を昇らせて轟沈するか爆弾による火災で炎上していった。

 それだけに留まらず攻撃隊は反転すると残りの爆弾を投下し、更に小型艦に対して20ミリ機関砲による射撃を加え、フリゲートやコルベットを蜂の巣にした。


「クソったれが!」


 セザール大将は去って行く敵攻撃隊に対して悪態を吐く。

 幸運だったのかわざと攻撃目標から抜いたのか旗艦には大した損害は無かったが、次の魔の手が海底に引き摺り込まんと近づいていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 攻撃隊に遅れて敵艦隊を搭載されたレーダーで探知できる距離まで接近した艦隊は、新兵装の実戦試験を兼ねて巡洋艦に後部砲塔を撤去させて搭載された筒型の物体が動き出す。

 その筒の正体はNATOコードで『スティックス』の名で知られるP-15『テルミート』対艦ミサイルである。このミサイルは皇国の手で改良が加えられており、電子戦にある程度対抗できる他に射程距離が100キロにまで延長された。

 船体後部に設置された三連装発射機が回転し、敵艦隊にその照準を定める。


「諸元入力完了」


「全艦目標に照準を合わせました」


 砲雷長と通信士の報告を聞き終えた後にイラブ将軍は号令を掛ける。


「対艦誘導噴進弾発射!」


「発射」


 勢い良く射出されたミサイル24発は重複することなく目標に向けて飛翔した。

 そして寸分違わぬことなく目標に命中し、敵艦隊の旗艦を含めた装甲艦の多くは底の藻屑と消えて行った。


「さらばだ」


 イラブ将軍は何も分からず死んでいった敵将兵に告げるように呟くと全艦回頭を命令した。

 ここに海域の名から『サンアルデルテの海戦』は終わった。連合艦隊が使用した新兵装の数々によりその戦いは非常に一方的で淡々としたものだった。


最近、小説の筆が進みませんが完結できるよう頑張ります。

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