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第三話「侵略」


 地上へ降り立った強襲軍将兵達はほとんど抵抗受ける事なく、無事に拠点の確保に成功した。

 続いて本隊も地上へ降りてゆき、工兵隊によって基地の設備等の建設が始まった。皇国では建築物を3Dプリンターで建築する技術が発達しているため、基地の設営には大凡(おおよそ)三十分程度で完成する見込みだ。

 宇宙から降りてきた艦の中には優輝の座上する『アスラ』も含まれており、先に造られていたドックに入港した。


第9001植民惑星派遣軍本部


「さて、今後の計画についてだが」


 総督である優輝の発言にその場にいた全員の目線が集まる。


「そうこっちを見んでも良い。やる事な単純、此処を中心として都市を創り出し今後の大陸制圧の橋頭堡とする」


 優輝は撮影された写真を元に製作された大陸全体の地図を見る。西沿岸部には赤いマーカーで色が塗られており、すでに制圧した地域を示していた。


「そうだなこのペースで行くなら大陸の制圧で約一週間、都市開発で二週間と言ったところか。期限は一か月もあれば十分だろう」


 優輝の予想に一同は肯く。実際、星間国家に所属する軍の展開速度は航宙艦艇の存在もあって非常に早いのが特徴である。更に言えば皇国軍になるとその規模も相まってより迅速に制圧が可能となっていた。

 既に多くの陸戦兵器が陸揚げされ、いつでも大陸制圧作戦に移行する準備ができている。

 つまり優輝の指示一つでこの大陸は瞬く間に制圧できるのだ。


「ただ制圧するのみであればすぐにでも実行できますが、ある程度の固有生物の保護は実施するべきと説法します。環境省にせっつかれると面倒になりますので」


「それもそうだ。大陸制圧とは言ったが、自然公園を作るためにいくつかの地域は残しておけ。話は以上だ」


 優輝の一声によって将官達は立ち上がり、各自の持ち場へと戻って行った。

 ちなみに彼等の降り立った大陸は『瑞土(みずと)』と呼称することになった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




第9001植民惑星派遣軍基地内


「戦車に自走砲、自走噴進弾、重榴弾砲もあるのか?こりゃ戦争でもおっ始める気かねぇ」


 既に陸揚げされた万を超える戦闘車輌の群れを見ながら第7軍団軍団長、山下友寿(やましたともひさ)陸軍上級大将は呑気に呟いた。

 彼の視線の先には未だ途切れる事なく輸送艦から降ろされる兵器の数々が映っていた。これだけで中小国の全戦力と同じだけの量があるにも関わらず、皇国の全戦力の0.01%にも満たないのだから聞いて呆れる。


「総統領閣下は相変わらず容赦という概念をお持ちではないようだな」


 やれやれと肩を竦めながら自身の駆る戦闘指揮通信車に足を向けた。

 ホバー式の通信車内部には既に幹部達が乗り込んでおり、山下上級大将のことを待っていた。


「それでは始めようか諸君、進軍開始だ!」


 暖機運転を終えていた鋼鉄の軍団が唸り声を上げ、大陸東部を目指して侵攻を開始した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




第7軍団所属第一戦車師団戦闘指揮車


 第一戦車師団師団長であるアーストリア・ドラス帝国人の男、ヘルマン・ヴァルヘルム・グデーリアン大将は自身の愛車『アドラー』から各車に指示を送っていた。


「右舷2時の方向より地竜!数6、戦車隊各車弾種榴弾装填!Feure(フォイア)!」


 元々野戦指揮を好む傾向がある彼はオープントップの車内から身を乗り出して双眼鏡を手に攻撃を指示していく。

 グデーリアン大将から指令を受けた八九式戦車、九七式戦車の混成部隊は180ミリと140ミリの榴弾を撃ち出し瞬く間に地竜6頭を沈黙させた。

 逃げ惑う大陸の生物達を追い立てる鋼鉄の軍団、時にはその火力で粉砕し、時にはその数十トンある巨体を以って踏み潰す。


「次、左舷上空から竜種(ドラッヘ)が来ているぞ!対空自走砲射撃始め!」


 グデーリアン大将に呼応する様に九九式対空自走砲が左舷へその銃身を向け、備え付けの12基ある対空ミサイルと30ミリの光電子機関砲から無数の光弾を発射した。

 空に煌く光弾とミサイルは正確にワイバーンの群れに命中し、青い空に赤い鮮血の華を咲かせた。


「良いぞ、このまま進軍だ!他の部隊より先に大陸西端に到達するのだ!」


 グデーリアン大将は機甲師団特有の機動性を生かし電撃的侵攻を可能としていた。

 鋼鉄の軍団は濁流のように攻め立て、大陸の生物達を殲滅していく。

 それは大陸の生物達との戦いと言うより競争(レース)と言った方が正しいと言えた。

 突如現れた強大な軍団を前に、本来なら恐れられる大陸の強者達は惨敗に次ぐ惨敗を重ねていくのだった。

 第一戦車師団が通った後には工兵隊や民間の建設会社の連合が次々と建物や道路等の各種インフラの設置を行い、皇国の版図を広げていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 陸軍が快進撃を続けている一方、西の空には鳥が飛んでいた。しかしそれは金属と合成樹脂で作られた人工の鳥であった。


瑞土大陸派遣軍総司令部


「ふむ、文明の程度としては銃器が作られ始めたぐらいか。大した脅威にはならないな」


 優輝は西側の陸地の調査に向かわせた鳥型無人偵察機『海燕(かいえん)』から送られてきた報告を見ていた。

 現在、海燕が調査しているのはこの大陸から最短距離にある大陸である。


「地球人型コーカソイド(白人)系とモンゴロイド(アジア人)系が半数ぐらいとアールフ(エルフ)型、ヴィストロイド(獣人)各種等々……」


 海燕から上がってきた報告にはその地に生息する人種などの詳細な情報が記載されており、重要拠点と思われる施設や主要道路などの情報も事細かにまとめられていた。


「国境線は現地で聞かないとわからんが、昔の定義に当てはめるなら河川と山脈で判断すれば良いか」


 優輝は資料を自身の机に置いた。その表紙には『浸透計画』という四文字だけが記載されていた。

八九式戦車

全長12.5メートル 全幅3.5メートル

全高3.05メートル 重量48トン

時速120キロ(前進・後退)

主砲:55口径180ミリ戦車砲

副武装:13ミリ重機関銃(遠隔操作式)

    7.92ミリ機関銃(主砲同軸)

乗員:2名


九七式戦車

全長9.5メートル 全幅3.25メートル

全高2.3メートル 重量35トン

時速160キロ(前進・後退)

主砲:45口径140ミリ戦車砲

副武装:13ミリ重機関銃(遠隔操作式)

    7.92ミリ機関銃(主砲同軸)

乗員:なし


九九式自走対空砲

全長7.5メートル 全幅3.4メートル

全高2.05メートル 重量30トン

時速150キロ(前進後退)

主砲:30ミリ光電子機関砲 2基

副武装:九七式短距離地対空誘導弾 12基

乗員:なし

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