よい、よいよい。
どこか懐かしい歌が聞こえてくる。
絶賛、年末進行中の疲れきった心を癒してくれるような――
「せっせっせーの、よいよい、よい」
童歌――ただそれは幼い頃の風習でもあり、トラウマでもあった。
たかが嘘をついただけで針を千本飲まされるだとか冗談ではない。
さりげなく耳にするだけなら良いだろう。
そう思って通り過ぎようとした。
「茶壺に嵌まって、ドッピンシャン」
…………?
ごちゃ混ぜになっちゃあいないか??
地方によっては違うらしいが、あまりにも酷い。
意図せずほどかれた靴紐を結ぶフリをした道端で。
続きに耳を傾けた。
「達磨さんがこーろんだ」
もはや、ぐちゃぐちゃだ。
それ以上、立ち合う価値もない。
「後ろのカゴメ、KAGOME☆」
はい、はい。
すぐさま立ち去ろう――とした時だ。
「ゆーびきり、げんまん」
もう、良い。
「後ろの正面、だあれ?」
その瞬間、崩れ落ちた。
例えきれようもない激痛に。
目先にあったのは、新聞紙の上に不揃いのモノ。
明らかにバラバラのそれは、指先そのものだった。
見覚えのある一際目立つ――一番大きな塊。
わたしの、両足の親指。
気づけば全部、なくなっていた。