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第1章 変わらない日常

「あぁ〜、面倒だなぁ、、、」

照りつける日差しの中、体育の授業で絶賛長距離走中の俺──星見(ほしみ)カナタは呟いた。

「なんであの先生、こんな暑い日にわざわざ走らせるんだろうね?」そう言って隣を走るこいつは俺のクラスメイトであり親友、里崎さとざき 彼方かなただ。高校入学の日、中学の時の同級生と話していたら、そいつに紹介された。

なんでも、中学の時クラブチームのチームメイトだったらしいが、彼方はめちゃくちゃサッカーが上手く、将来を期待されていたらしい。

ただ、今は怪我をしているため、全力を出せず活動を自粛しているようだ。

なんで俺が彼方と仲良くなったかの話に戻そう。紹介された後、お互い軽く自己紹介をしてみたが、なんと、名前だけでなく、血液型、果ては誕生日まで一緒だったのだ!

これには俺も驚いて、2人で「実は双子だったのかもな」なんて笑いあっていた。まあ、実際双子なら同じ名前なんてありえないんだけどな。

そんなこんなで仲良くなった俺たちは、その後の高校生活を共に過ごすことが多くなった。

「、、なた??かーなたー?」ふと隣から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。そういえば今は持久走の途中だったな。

「ったく、カナタってば走ってる途中にボケっとしてどうしたんだ?そんなんだからバカナタって馬鹿にされるんだぜ?」

「そんなこと言ってくるのはお前だけだし、そもそも周りにバカナタって呼ばれてるのはお前の方だ。」

そう、彼方は運動神経こそものすごくいいものの、根本的に馬鹿だった。それはもう見るも無残に。

一方俺はと言うと、運動こそ出来ないものの、勉強面では毎回の定期考査でトップだった。お互いがお互いに出来ないところを補い合う。これも彼方に惹かれたことの要因の一つかもな。それに、こいつは馬鹿だが、優しい。今だって怪我してるなりに本気を出せばクラスで1番にゴールできるはずなのに、俺を気遣って隣を併走してくれる。そんなものは友達ではない。という奴もいるが、俺と彼方の関係は、これくらいが心地良い。

「てか、ほんとにどうしたカナタ?いつもならもうそろそろ死にそうになってるのに、今日は元気じゃん?」

彼方に言われ、思い出した。そう、俺の体力はもう限界だってことを。

「うぅ、、、、疲れた、、、しんどい、、、だるい、、、帰りたい、、、、」

「いや!さっきまで元気に走ってたじゃん!なんでいきなりそーなんだよ!!」

「お前が思い出させたからだ、持久走の途中だって。」

「カナタって頭はいいけど、なーんかバカっぽいよな」

そう言って余裕そうにケラケラ笑う彼方を後目に俺は残りの距離を走り終えた。タイムは、、、聞かないでくれ。

授業が終わって教室に帰ると4つ机をくっつけた上でワイシャツの前を広げたまま大の字になる彼方の姿があった。

「おかえりカナタ〜」

「一緒にゴールしたはずなのになんでお前はもうこんなとこにいるんだ?」

「やだなー、だってカナタゴールしたあとしばらく校庭で死んでたじゃん」

そう、こいつは余裕を持って走っていた、故に走り終えたあとも直ぐにエアコンの効いた快適な室内へと戻って行った。そう、俺を置いて、、、

「この恨みは一生忘れない」

「怖っ!カナタこわっ!!」

「いいからとりあえず着替えるぞ、はやくしないと女子戻ってくんぞ」

「いやー、俺のこの練り上げられた肉体なら、女子も満足してくれるはず!」

「そんなの誰も見たくないから。」

後ろから突然声がしたので、振り返って見ると、そこには小柄だが、はっきりとした顔立ちと、腰までかかる黒髪のストレートで確かな存在感のある、恐らく美人に分類されるであろう女子がいた。

「おー、なんだよ、女子戻ってくんの早くね、悠希」

そう、この女子は俺らと同じクラスであり、友達の石動(いするぎ) 悠希(ゆうき)だ。

「誰もあんたの体見ても興奮しないし、目障りだから早く前閉めて」

「とか言いつつ、実は見たいんだろ?ほれほれ?」

そう言って肩にかけたワイシャツの前をヒラヒラさせると、

一言

「死ね」

と言って悠希は去っていった。

「冗談の通じねーやつ」

「いいから前閉めろ、目障りだ」

「そんな!カナタまで!!」

「てか、もうHRやって帰るだけなんだから、早く帰る用意しろよ。」

「あーい」

こんなのが俺らの日常、な?退屈だろ?

「「「さよーならー」」」

「気をつけて帰るんだぞー」

担任の声が鳴り響く

「終わったー!帰ろーぜカナター!」

「ったく、終わった途端に元気だな。」

「そりゃ!あとは帰って、寝るだけ!あ、けどその前にちょっとだけ練習して帰るか!」

「おーおー、頑張れよー」

「カナタは今日もあそこに行くのか?」

「まあな」

素っ気なく返すと、彼方はニコッと笑い

「そっか!じゃあ気をつけて帰れよー!またな!」

そう言って彼方は足早に教室を後にした。

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