七行詩 40.~60.
七行詩の40番~60番です。
『七行詩』
40.
信号の赤に 待つことはあっても
渡りきるまで 待っていてくれはせぬように
君の気が変わるのを 待つことはあっても
僕を待たずに すぐにどこかへ行ってしまう
踏切で足を止めるとき
電車が君を 乗せていたことに気づいたけど
手を振る間もなく 過ぎていったよ
41.
特別な日々なんて無くて
もらった分だけの支えと
頑張った分だけの見返りで
いつまでこうして 立っていられるか
その時を待つように 数えている
けれど 特別な理由もなく 何かを気に入ると
それだけで 少し得した気分になるんだ
42.
膝をつく 想いに墓を 建てるなら
貴方の手で この名をともに刻んでください
今一度 時の長きに 身を浸し
心ゆくまで 眠りましょう
あたたかな その呼び声を 待ちましょう
永永無窮の時が過ぎ 光が夢を 醒まさせば
必ず守り抜くからと 黒い瞳に誓いましょう
43.
君を傷つけはしない、と
傷だらけの手は そう言った
君はいつも笑っていて、と
真っ赤になった 目が言った
君は君のままで居て、と
僕に捨てられ ゴミ箱の中で僕が言った
己を偽る鏡など 君は信じはしないのに
44.「Autumn in Tokyo」
小さな町で 歩を止めてみる
長い通りをいっぱいに 人はすれ違ってゆく
若さや老いを グラスに透かしてみる
人生の 苦さや甘みが 染み渡ってゆく
そんなことを こうして話しているなんてね
“たとえば今が暗闇でも 人は出会う”
“呼び合うように 引き合うように”
45.
出会わせた 時の悪戯に 笑い合う
天気予報が 嘘を吐いた日
電車が遅れた その日だけ
ほんの少しずつ 近づけたみたいに
何も予定通りには行かなかったけど
別れの日だけは きっちりと
来てしまうものなんだね
46.
この度の 出会い別れを 云うならば
君にとっては よくできた喜劇で
真実の愛を確かめるための
寄り道の一つに 過ぎなかった
けれど 突きつけられたのは 悲劇ではなく
君がくれた本には確かに
「幸せ」と 書かれてあったよ
47.「クロック・ワークス」より
君はもう一人じゃない
僕らはきっと同じだね
来るはずのない人を ずっと待ってた
巡り会えた、旅をした
路線図から外れた “この場所”という駅で
The clock works. Anytime, all time
今は逆らわず 在るがまま 重ねてゆけばいい
48.「私のアトリエ」より
絵に描いた 無謀な夢や 暮らしなど
この狭い部屋に収まる
小さな 小さな ものだった
目の前の 大好きな風景も
合いの手なしでは 遠く感じる
もしも貴方が傍にいたら
その時間こそが 最も愛しい 絵になるのに
49.「東京スカイツリー」より
窓の向こうに映る夜景に 浮かぶ僕の影
思わず漏れるため息だけが言葉に
まるで海が隔てているように
遠くて見えない姿も
見下ろす町明かりに浮かべて 胸にしまった
ああ、隠せない思いを
全部 詰め込んだような 輝きで
50.
遠くへ出かけたら
それきり帰りたくないような
空っぽな毎日だったのに
解けない魔法にかかっては
毎日が冒険みたいだね
今夜も同じ 夢を見る
貴方と同じ 夢を見る
51.「トワイライト」より
今日が一番いい日だったと
思うなら声にしてみよう
誰より深く 息を吸って
後は気持ちに任せばいい
“このまま何も見えなくなってしまったら”
“鮮明に思い出せるのは ”
“君の顔と 今日この日だけ”
52.「アカツキ」より
“赤く染まる陽は まだ沈まない”
“息を止めてみても 鼓動は止まらない”
あの空の向こうまで 届くだろうか
胸の奥で 同じように燃え上がり 滲む
真っ赤な顔した 君を思い出し祈ったよ
涙は闇に消えゆけど 夜明けは必ず訪れる
瞼の裏に 焼きつき焦がす この色を合図に
53.
声を上げ 僕らが歩いたことは もう
砂浜に残す 足跡のように
風に消えゆく だけなのか
空に散らばる 星屑のように
紛れ その名も 忘れるのか
色まで鮮やかに残す
フィルムのようには いかないか
54.
綱を引き この首輪にも 杭を打とう
聞き分けの悪い 自分が嫌で
一度甘えてしまっては
もう それなしでは 居られないから
君みたいに
呼吸をするように 嘘を吐けたら楽だろうね
僕はその優しさに 何度でも騙されてしまう
55.
約束をしよう 小さなものから
この生涯に 渡るまで
君の手帳をいっぱいにして
明日がいつ来ても いいように
新しいものを 見つけたら
笑顔とともに 残してゆこう
アルバムには 大事な写真が増えていくよ
56.
いつの日も 歌う小鳥は 愛されて
その身を寄せる 止まり木がある
ならば 僕らは どうしよう
風のない日に 羽ばたくのは
坂を駆けるより 大変だから
“追い風に変われ”と ここで待とう
誰よりも 空の近くへ 飛び立とう
57.
心に嘘は つけないからと
勇気とは 調子の良いものです
心はいつも 嘘つきで
進め、と 貴方の 背を押しただけ
行かないで、と 肩を引き寄せたかった
同じように 自分がわからなくなることが
貴方にだって ありませんか
58.
想いには 際限などなく 満ち溢れ
言葉を生む度 涙は流れ
いつも飲み込んだ 言葉こそ
本当は一番 大事なこと
だけど そのうちのいくつかを
貴方には 伝えることが できたから
私の中で いつまでも 貴方は特別な存在です
59.
駆け抜けて 尽きた心を 休めましょう
黄金の鐘が鳴り響く
生涯一度の ひとときは
この胸に刻み込まれました
息を詰まらせ 読み終えては
夢見心地に 酔いしれて
物語との出会いに感謝し 本を閉じるのです
60.七夕
張り詰めた 緊張の糸は 途切れても
絆は 頼りなく伸びて 七月の空に河となる
強く引き寄せることはせず
それぞれの場所で 老いて行きましょう
視界に明かりが 消え失せても
眩しい空で 会えたなら
その声の主を 間違えることはないでしょう