やたらと絡んでくる幼馴染、かなり嫌われているみたいなので極力避けてみた。
1日目。月曜日
今日もいつものように学校へ登校。
自分のクラスへ入室し、友人へ挨拶し席へ腰掛ける。
「おはよう、拓」
「ういー、おはよう秀」
いつもの一週間の始まりだ。
だが、いつもどおりではない。
先週金曜日、俺は決意した。
もう何を言われても反応したりしないし、こちらから向こうへ話しかけるのもやめにした。
いつもなら、朝の挨拶もしていたが今日からはもういらないだろ。
だって挨拶したって返ってくるのは罵倒だけ、最後にかならず気安く話しかけないでいただけるかしら
と付け加えてとてもにこやかに、本当にうれしそうに対応される。
俺はただ、仲直りしたかっただけなんだがこっちからおこすアクションはもはや向こうにとって
気分を逆撫でする効果しかなさそうだった。
なので、残念だが俺はあきらめる事にした。
小さいころからの幼馴染で昔はよく一緒に遊んだりしたが時は残酷で
今はその片鱗すらも見られない。
いったい俺の行動の何が彼女をそこまで憤慨させているのだろう。
何度と何時間思考しようと結論はでず、ついにそれを放棄した。
母さんにも相談してみたのだが自分で考えろと面倒くさそうな顔でいわれた。
なんだよ、息子と幼馴染の関係が悪いままでいいってのかよ
向こうの親と仲良いくせに子供の話になったとききまずくなんないのかね。
なんて思考を働かせていると「いつものあれ」がきた。
「今日もさえない面しているわね、もう少ししゃきっとしたらどうかしら
朝くらいもう少しテンションあげてみたら?あなたのような冴えない顔でも幾分かましな顔つきになるとおもうわよ」
「……」
一瞥もくれず俺の席の隣に静かに着席し、登校早々こちらに暴言をなげつけてきているのは佐藤院楓だ。
社長令嬢で雰囲気からしてお嬢様。
容姿はいつも寸分の狂いもなく均一に整っていて所作はやまとなでしこそのもの。
紅茶というよりは、和室でしんしんとお茶をいただいていそうな感じの和のお姫様に近いかな。
俺は、心に硬く誓っているのでもうたやすく話しかけたりしない。
なので今の罵倒には何も返事せず何食わぬ顔でスルーする。
1分ほど静寂が訪れる。
俺は目を閉じ体を机に伏せてホームルームまでの磐石な体勢を確立する。
彼女がこちらに視線を向けているのかちょっと観られている感じがする。
無視されたのでちょっと怒ってるかも知れない。
だが、俺の作戦は完璧だ。
至近距離での無視は俺の胸中にちょっと罪悪感が沸くので耳にはワイヤレスイヤホンを仕込んで
まあまあの音量で流している。
彼女も仕方ない、たまたま聞こえなかっただけだと思っているころだろう。
彼女が席を立ったので少し顔を上げて声がするほうへ視線を向けると、友達と談笑する姿があった。
どうやら無視されたとは思っていないみたいだ。
無駄に怒りをかわなくてすんだ。
こんな感じでこれからの日々、彼女に対処していこうと思う。
4時限目が終了し、お昼の時間になった。
すぐさま俺はポケットからイヤホンを装着して鞄から弁当をだして席を立つ。
いつもは4時限目終了後、教科書を片付けている段階でお隣さんに声をかけてみるのだが毎日断られていた。
今日からはそそくさと片づけをして誘わず彼女の後ろを通って教室後ろのドアを抜けて速やかに移動する。
「ぇ…」
後ろからあっけに取られたのか小さく彼女の声が聞こえて少し背中に視線を感じたが
それには気づいたそぶりを見せずまるでこれまでもそうだったかのような
流麗な無駄のない動きをみせる俺。どうよ?
「かえっちー、おひるいこー」
「あ、あーしもいくいくー」
教室を出る際、そんな彼女に声をかける女子たちの声が聞こえる。
うん、これまでもこんな感じでよかったんじゃないだろうか。
あれだけ嫌われていたのに話しかけるとか俺がどうかしていたのかもしれない。
俺は基本、大人数で食事を取ることはない。
なぜかって?
静かなのが好きだからだ。
食事は、生きていくうえで必須だが楽しみの一つでもあるよね?
俺はこの楽しみを他人に一切乱される事なくゆっくり自分のペースでかみ締めたいのだ。
じゃあなぜ彼女を誘っていたのかって?
そりゃ、誰だって特別なかのいい友達や恋人なら自分の領域に踏み込んでも許せるだろう?
というか一緒に楽しみ共有したいでしょ。
そういうこと。
彼女は前者で幼馴染で仲がよかったからもしかしたら誘っていたらそのうち乗ってくれるんじゃないかと思って誘っていたけどダメだったね。
なので今日は一人で飯だ。
拓と、もう一人いつも一緒に飯くうやつがいるのだが今日は風邪で休みみたいだ。
帰りに見舞いにでもいってやるか。
さてはて、5時限目、6時限目が終了して帰り。
帰りも普段はお隣さんを誘う。
帰路の方向は一緒だ。というか家が隣だし。
帰りのホームルームが終わる。そそくさと準備して
席を立とうとしたときお隣さんが絡んできた。
「今日はずいぶんとおとなしいのね?」
「…」
さすがに話しかけられて無視は人として終わってるので話しかけられれば返そうと思う。
「…ああ、じゃあな」
何かまた余計な事を喋っても罵倒されるだけなのでそれだけ言葉を残し教室を出ようとした。
が、制服の袖をつかまれた。
「っ…ちょ、ちょっと待ちなさいよ。な、なにか急ぎの用事でもあるのかしら?」
なぜかあわてた様子で引き止められた。
どうしたというのだ。
「急ぎといえば急ぎかもな…今日は千夏が風邪で休んでるだろ、だからその見舞いだ」
「ふ…ふーん…あなたもそういう気まわせるのね、でも病気で休んでる女の子の家に男一人で行くのはちょっとよくないと思うわ。あなたけだものだもの。千夏に何をするかわからないし私もお見舞い行こうと思っていたし一緒にいくわ」
「なんもしねーよ…するわけないだろ…まあ、そういうことなら佐藤院に任せる。お前の言うとおり男がいくのはあれだしな。千夏によろしく言っておいてくれ」
「え…ちょっと!」
なぜかうろたえているが気にせず
そう楓に伝えて俺は教室を出た。
校門を出たところで、千夏にsnsでいけなくなった旨を伝える。
すると「はくじょーものー!」とうさぎの涙目で叫んでるスタンプがポップアップしてきた。
かわりに楓がいく、俺がいるとあいついつも不機嫌だし病人の前で空気悪いのもな…
とそのまま思った事を伝えてsnsアプリを閉じた。
が、間髪いれずポンっと着信音がなると同時にうさぎがこちらをジト目でみつめているスタンプがでてきた。そのあとに「バーカ」と送られてきた。
どういう意味だよ…