表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧き流星の煌めき  作者: 井嶋勇助
第六章
24/33

《三》

 午後の五時を回った頃だ。長徳高校にて涼は学校祭の準備をしていた。とはいえある程度形になってきたので、仕事を切りあげ、帰宅する事にした。夏休み中に仕上げる仕事は完了しており、かなり巻いて準備を進める事ができていた。長時間拘束するのも気の毒だったので生徒会のメンバーにも帰宅を促す。

 メンバー全員が帰宅するなり、涼も準備をするのに使用していた教室を出て、鍵を閉める。教室をわざわざ施錠する事を面倒くさく思いつつ、鍵を手に持ち職員室まで向かう。

 教室の鍵は職員室で管理しており、そちらへ返却する必要があった。

 職員室へ到着し、担当の教員に鍵を返却する。いつも頑張ってるな、と労いの言葉をかけられる。ニコッと愛想良く返事をする。

『夜道には気を付けるんだぞ』

 別れ際に教員はそんな事を言う。世間では物騒な殺人鬼がおり、夜間によく人が襲われる事から口癖のようにどの教師もそう言うのだ。

 少し前まで、そんな事は女子生徒くらいにしか言われなかった。

 どこか複雑な顔をしながら、さようなら、とはにかんで返事をして昇降口まで向かった。


 昇降口で靴を履き替え、正門まで向かう。学校を後にして帰路に着いた。そんな最中だ。交差点に差し掛かったところで、左から駆け出してきた女性と衝突した。

 急いでいたのか、衝突するなりその女性は涼に弾き飛ばされるような形で後方に倒れた。

 対して涼の方は少しよろけたものの、すぐに姿勢を正す。倒れた女性の方へ向い、

「大丈夫ですか?」

 と手を差し伸べる。

「ごめんなさい、ちょっと急いでて」

 聞き覚えのある声だった。女性は涼の手を取るなり、ハッとした様子で彼を見つめる。

「あれ、偶然!」

「……長瀬さん?」

 どうやら瑞希と衝突したらしい。白いブラウスにジーンズといった服装で、スニーカーを履いていた。

「どうしたの? 随分と急いでたみたいだけど」

「大変なの! 陽介くんが死んじゃうよ」

「えっどういう事?」

 切羽詰まった様子で、焦った様子で涼に掴みかかる。呆気に取られた涼は動揺してしまう。

 陽介が渡からの連絡で殺人鬼の元へ向かったという話だった。

「分かった、すぐに行くよ。で、彼はどこにいるの?」

「分かんない。私に何も言わずに出てったから聞いてないのよ」

 手がかりはなく、打つ手なし。

「とりあえず、手当り次第探すしかないか……」

「二手に別れて探さない? そっちの方が見つけられると思うの。連絡先はこれね」

 そう言ってメッセージアプリのQRコードを見せる。

 彼女の提案通り、連絡先を交換し、二手に分かれて探す事にした。

「彼を見つけたら、帰るように伝えて。そして万が一犯人と会ったらすぐに逃げる事。そして、俺に連絡して」

 そう伝えると、彼は瞬く間に走り出す。

 返事を聞く前に走り出した事で瑞希は呆気に取られ、呆然と立ち尽くす。同時に彼の人間離れした身体能力を垣間見た。インターハイに出場するような陽介の姿を何度も見てきたが、彼に劣らない速度どころか、彼以上にも感じる足の速さに驚嘆してしまう。

「……すごい」

 それだけつぶやくと、そのまま呆然と立ち尽くす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ