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碧き流星の煌めき  作者: 井嶋勇助
第五章
16/33

《一》

 警察署での手続きを終え、しばらくが経った。

 小耳に挟んだ近隣の高校教員の殺人事件について妙な胸騒ぎがした。先日遭遇した妙な男と関連付けてしまう。

「最近ボーッとすることが多くなったよな」

 渡はそんなことを言う。

「そうかな?」

 首を傾げる。

 朝からまた高校へ向かうことになっており、涼はカッターシャツに着替える。ただこのとき、ボタンを一つ掛け違えていたので渡の言うことも一理ある。

 不甲斐ないことこの上ない。

「なんか悩みでもあるんなら相談に乗るぞ」

 ジャケットを羽織り、ヘルメットを持ち出す。

 今日もいつも通りバイクで出かけるのだ。

「悩みっていうか考えごとだよ」

 涼の返事を聞くなり、ふうんと興味なさそうに返す。

「これから俺は出かけるんだが、バイクって乗ってく?」

「うん。今日も学校行かなきゃだし、よろしく頼むよ」


 いつものように渡の運転するバイクのサイドカーに乗り、スティックパンをつまむ。

「最近朝から出かけることが増えたよね。なにかあるの?」

 そんなことを尋ねる。

 渡はバツの悪そうな顔をする。どうやら兄の涼にも話しづらいことのようだ。

「別に大したことじゃないって。まあ、仲間の不始末を片付けに行くってだけのことさ」

 本人はしきりに隠そうとしているものの、彼が現在暴走族グループに加入していることは見透かされている。しかし、それでも優秀な兄に負い目を感じているのか、ろくでもない自分の肩書きをあまり知られたくはないのだ。ちっぽけな自尊心という奴なのだろう。

「あんまり危ないことはしないでね。また警察のお世話になっちゃうかもしれないし」

 涼としては弟の渡が暴走族に(くみ)することを容認するつもりはない。もちろん、そんな集団とつるむのは即刻やめて欲しいくらいだ。だが渡自身もそういう自分に引け目を感じているようなので非行をやめるのも時間の問題だと思い、余計な口は挟まないようにしている。下手に刺激して重大な事件など起こして欲しくはないのだ。

「分かってるよ。兄貴の心配には及ばないさ」

「そっか」

 涼は優しくほほ笑みかける。


 渡に送られ、高校へ到着した涼はいつものように学校祭の準備に取り掛かる。当日の一連の流れの計画や機材の準備、発注などまだまだ取り掛からなければならない仕事が多く、ここのところ毎日学校に通っている。

 学校祭は九月上旬をリミットとしており、それに向けて制作する。生徒会の役員や時には教職員まで出張っている。

 作業自体は順調に進んでおり、順調に行けば休暇中にほとんど形になる。

 そのおかげか彼らは作業と同時に雑談をするくらいには余裕ができた。そして、そんな他愛のない雑談の最中、不意に涼の耳に聞き逃せない話題が流れることになった。

『ガラの悪い不良グループが連続殺人鬼を追っているらしい』

 自身の弟の所属する暴走族や以前遭遇した不気味な男、それらが連想される話題だった。

 いつしか、そんな話題で盛り上がる生徒の元に歩み寄り、

「その話、詳しく聞かせてくれないかな?」

 と尋ねるのだった。

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