大切な人たちを守るために
結局、凛夏は神様になってしまうのかな。
お父さんはなってほしくはないんだが。僕は娘の幸せを願っている。
凛夏にそんなつらい運命を背負わしてしまったのは僕のせいなのだが。
まあ、凛夏ならなんとかするよね!あはは。
彼の名前は榊原真琴。この物語の主人公の父親であり、神様である。
ご覧のとおり超楽天家の適当男だ。そんなんだけど彼の回りには常に人が集まってくる。それは彼の人懐っこさにあるのだろう。そんな父親の娘も楽天家だったりする。それに、父と同じく人懐っこくて可愛らしく父と同じように彼女の周りにもいつも人がたくさんいる。
「ねぇねぇ、零菜さん。」
この人懐っこくて小動物みたいな子は榊原 凛夏。
「なによ。凛夏。」
私の名前は如月 零菜。
「空を飛ぶのってこんなに気持ちいいんですねっ。」
凛夏はそう言って屈託の無い顔で笑っていた。
「はぁ、天使の翼の発動はそんなに簡単なはずじゃないんだけど。」
今、私は凛夏に天使の翼、天使が持つ羽の習得訓練をしていたのだが私が飛んで見せると凛夏はすぐに習得し隣に並んできた。凛夏はいつもそうだ。そう、あの時もそうだった。
これから、話すことは凛夏が神さまの力に目覚める時の話。それと、私と凛夏の出会いの物語である。
彼女との出会いは私が高校一年生の時。そのとき私は彼女には敵わないと思った。そんな彼女との出会いはとても衝撃的なものだった。出会いは彼女が住んでた神上島という島だった。
「ブーブーブー緊急事態発生、緊急事態発生」
警告音が鳴った。この音が鳴ったということはどこかの島に悪魔が攻めてきたと言うことだ。ここにある機械は悪魔の力や神さまの力、超能力などありとあらゆる異能の力を感知することが出来るのだ。
「今度はどこの島なの?」
最近はなぜか悪魔の出現が多くなっている。
「えっと、神凛島です。」
彼女は私の部下で西条 彩香。彼女は、神さまではなく超能力者だ。ちなみにランクはAランクである。
神上島はこの神上学園の学園島の隣の島である。この国はいくつかの島があり、その島々はつながっている。ヒーローズはランクで分けられており一番上はSランクだ。また私が通う、榊原学園もランク制度が存在する。
「えっ本当にあの神凛島なの?だってあそこには神様がいたはずでしょ?それに神凛島の神様って言ったら、たしかこの組織を創った神様なんじゃ?」
神凛島にいる神様とは私とは違い本物の神様のことだ。私の場合は神様に気に入られ、神さまの称号を与えられたに過ぎない。神さまのことを神憑きとも呼ぶ。
「えっ?そうなんですか?知らなかったです。」
ヒーローズを創ったと言っても、最近はいろいろと忙しいらしく本部にもなかなか顔を出すことが出来てないとかって先輩が話してたけど。
「まあ、そんなことは後でいいから。で、なんで神凛島の襲撃が許されちゃったわけ?」
神様がいるのに島を襲撃されることなどありえないのだ。その前に神様に喧嘩を売ろうなんて馬鹿は居るはずがないのだ。
「あっすいません。えっと今は神様、神凛島にはいないみたいです。今日は神様、集会があるみたいで。」
島の神様は土地神と言い、島を守っている。ただし、土地神には天界つまりは天国でどうしても行かないといけない集会があるらしい。
「だとしても、今まではそれでも襲われれことなんてなかったじゃない。」
なのになんで?今までもそんなことは何度もあったはずだ。島に神様がいなかったとしても島に結界を張っているため、島に神様がいないことを知ることは出来ないはずなのだ。
「今入った報告によりますと、悪魔からの攻撃が結界を通過したとのことです!」
ヒーローズはほとんどの島に支部が設置されており、神凛島にも勿論支部が存在する。
「まさか!またそんなことが起きるなんて。」
それに、よりによって神上島が襲撃されるなんて。いったいどうやって・・・。
「そういえば、最近多いですよね。」
最近、魔術師と悪魔による島の襲撃が連続して起きていた。
「えぇ。それに、一瞬だけど神の力の反応が記録に残っているわ。まぁとりあいず、神凛島に向かいましょう。私も行くから。念の為救護班は一緒に来て。瞬間移動だ出来る能力者と空を飛べる神憑きはお願いね。じゃあ、私は先に言ってるから。」
まずは、状況を把握しなければならない。神凛島にも医者は居るだろうが人手が足りなくなる可能性もあるため念の為こちらでも用意する必要があるのだ。
「「「了解しました!!」」」
警告ブザーが鳴るとこのレーダー室、兼指令室にAランク以上の能力者また神憑きが集められる。ちなみに私はその指揮官みたいなものだ。
「秋菜さん、私に天使の翼を!」
秋菜とは私に憑いている神様の名前だ。神の力をコントロールするには神様との信頼関係が大切なのだが、それがなかなか難しく、コントロールするまで出来る者は少ない。私も苦労したものである。
「了解しましたわ。零菜さん。」
秋菜さんはとても美しくてとてもやさしい女神様。それに髪も長くて綺麗な女神様。
「お願いします。」
そのとたん、背中から白くて美しい翼が生え飛び立った。
「それにしても、どうして神の力が記憶に残っているんだろう?」
なぜ、一瞬だけなのだろう?もし神憑きが関わっているの可能性はあるがそれなら一瞬だけなのはおかしい。神の力が暴走し誰かを襲ったり島を攻撃しようとしたりすることはなくはない。
「さあ、なぜなのでしょう?私にも分かりませんわ。神凛島に行ってみれば何か分かるかもしれませんが。」
神凛島に行けば、もし神憑きが関わっているのなら同じ神様の秋菜さんならなにか分かるかもしれない。「そうね。早く行きましょう!」
神凛島はいったいどうなっているのだろう?魔術師と悪魔に攻撃された島はいつも酷い有様だ。どうにか出来ないものなのだろうか。
「きっと、あなたならなんとか出来ますよ。」
彼女たち神様は基本的に超能力全般使える。なので、人の心も読むことが出来る。
「でも、今までも止められなかった。私なんかが誰かを助けることなんて出来るのかな?」
私は怖かった。また、人を救えないのが。自分の存在価値を否定されているようで怖いのだ。
「あなたらしくないですわよ。零菜さん。」
このままだと力のバランスが崩れてしまう。もし、そうなってしまったら力が暴走してしまう可能性がありますわ。本当に大丈夫なのでしょうか?
「大丈夫です。秋菜さん。」
そんなこといちいち気にしていられない!今は目の前のことに集中しないと。
そんなことを話しているうちに神凛島に着いていた。
そこには、とても信じがたい光景が広がっていた。そこに広がっていたのは、いつもの光景とは何もかもが違っていた。いつもなら島はあっちこっち壊され怪我人もたくさん転がっているはずなのだが、ここにはそのすべてがなかった。
島には争った形跡こそあるものの、怪我人は一人も見当たらなかった。そして、島全体が青く光っていてとても綺麗な光景だった。私は見る目を疑った。まるで、夢を見ているみたいだった。
島の真ん中には女の子がボーっと地面に座って、島を眺めていた。その女の子の体は青く綺麗な光を放っていた。彼女が島の光の根源のようだ。その光は島だけでなく島の人達にも及んでいるようだった。
そこで、彼女に話を聞いてみることにした。
「ねえ、どうしたの?」
彼女と目線を合わせる為彼女の隣にしゃがみこみ、出来る限り優しい声を心がけ話しかけた。
「うーん。りんかにもよく分かんない。」
彼女も、状況がうまくつかめていないようだった。見た感じ彼女はまだ小学生ぐらいな印象を受ける。小さくて、可愛い感じ。
「そうなんだ。この光はあなたの力?」
この感じは神様の力のような感じもするが、この強大な力を操れる神憑きを私は知らない。神憑きはヒーローズに所属することが義務ずけられている為、たいていの神憑きの顔は知っているはずなんだけど。それに、これほどまでの神憑きなら忘れるはずないんだけどなぁ。
ねえ、秋菜はこの子の事知ってる?
いえ、わたくしも存じておりませんわ。でも、なんだか懐かしい感じがしますわ。
念の為、テレパスを使い会話をすることにした。もし、彼女が神憑きで無かったとしたら私は見えない何かに話しかけている変な人になってしまうのから。
「ん?違うよ。」
そう言って、彼女は笑った。
まあ、とりあえず過去に戻って見てくることにするか。
「秋菜、お願い。」
島の人達に話を聞いて回るのもめんどくさいし、過去に戻ったほうが手っ取り早いか。
「了解しました。では、行きます!」
過去に戻る瞬間、さっきの女の子と違う声が聞こえたような気がするんだけど・・・。
そんな事を考えている間に、時が戻り過去に来たようだ。そこには、まだ平和で普通の日常があった。
あの女の子の姿が見えた。あの女の子がいるのは神社みたい。しかも、巫女の格好をしている。
「頑張るぞー!おーー!」
彼女は楽しそうにルンルンと箒で掃除をしていた。そして急になにかを叫びだした。
すると、そこに白くて大きなオオカミが女の子の隣にきて座った。白くて大きくて青い目が綺麗なオオカミ。座って女の子と同じくらいの大きさ。
女の子になでられてとても嬉しそうに笑っている。そうやって二人はじゃれあっていたが次の瞬間オオカミが人間の姿に変わっていた。
「凛夏様、今日はなにかあったんですか?嬉しそうですね。」
子供のように目を輝かせニコニコ笑いながら女の子に話しかけた。
「ん?そう?今日はお父様がいないから私がお父様の代わりなの!うふふ。だから、頑張んなきゃ!」
さっきの男の子と同じように目を輝かせながら、空に向かって宣言した。
「張り切ってるんだね。凛ちゃん。あっ、ごめんなさい。凛夏様。」
あの二人どんな関係なんだろう?凛夏様って呼んだり凛ちゃんって呼んだり。
「ううん。大丈夫。」
一瞬だけだか悲しい目をした気がするのだが気のせいだろうか?
とそんな時、島の結界が壊れる音がした。
「零菜さん。今、一瞬ですが私と同じ力の波動を感じましたわ。」
島の外、海の遠くの方を見つめながら秋菜さんが小声で話しかけてきた。
「と言う事は、神憑きが悪魔の仲間にいると言う事?」
もしそうだとしたら大変な事になる。
「そこまでは分かりませんが、でも、なんだか私の力の波動とは少し違うような気が致しますが。」
少し違うってどう言う事なんだろ?
「「来る!」」
二人同時に叫んだ。得体の知れない何かが大きな鳴き声をあげ、近づいて来ていた。
「凛夏様!島になにか起きているようです!」
オオカミの姿の男の子が人間に戻り、凛夏という女の子に言った。
「いったい、何が起こっているの?」
凛夏と言う女の子はとても不安そうに音がした方を見つめていた。
次の瞬間、その鳴き声を聞いた島の人たちが島に近づいてくる得体の知れないものを見つけ、恐怖に怯えて悲鳴をあげ、その得体の知れない何かから逃げようと走り出した。
「きゃーーーー。何かが島に近づいて来る!逃げなきゃ!」
「おい!早く逃げろー!」
島中が混乱に満ちていた。逃げようとするがどこに逃げたらいいのか分からないようだった。
「どうにかしないと!」
そんな人たちを見ていると、私はじっとはしていられなくなった。どうにかしたいと思った。神憑きとして何とかしなければ、と思った。
「ここではわたくしたちは何も出来ません!」
もし、ここで何かしてしまったら世界が、未来が変わってしまう!だからここで、力を使う事も、誰かに話しかける事すら禁止されている。
そんな時、さっきの女の子の声が神社のところから聞こえてきた。
「慌てなくて大丈夫です。みんな、神社の中に入って!神社の中なら、お父様の結界があるから!神社なら、安全だと思います。」
凛夏と呼ばれてた女の子がみんなに聞こえるよう大きな声で、かつ優しい声でみんなに声を掛けけた。
背が低いから背伸びして手を伸ばしてぴょんぴょんしながら。超絶可愛い。
「りんちゃん。そうなの?分かったわ。あなたを信じるわ。」
「おーー。俺も信じるぜ。りんちゃん。」
島の人たちが一斉に神社の方に向かいだした。その途中、凛夏と呼ばれてた女の子につぎつぎと話しかけて神社に向かっていった。随分と島の人たちに信頼されているようだった。
「翔ちゃん、他の人にもここに来るように呼びかけ来て!固まってくれた方が守りやすいから!」
そう言うと、女の子はどこかに走っていった。
「えっ。あっ、はい!任せてください!って、凛夏様はどこに行くんですかぁー!」
翔ちゃんと呼ばれた男の子は一瞬、凄く嬉しそうな顔をしたが、すぐ心配そうな顔になった。
「大丈夫!この島もこの島の人達も私が守って見せるから!」
そう言うと、彼女は走っていってしまった。そのあと、男の子は健気に彼女の命令通り、島の人達を神社に誘導していた。
島の真ん中にある小さな丘に向かっていったみたいだ。そこには赤い鳥居が立っていた。
そこに着くと女の子は胸の前で手を組み目をつぶった。
「お願い。私にもお父様みたいな力を。島の人たちを助けたいの。」
そういって、女の子は涙を流していた。
すると、それに呼応して凛夏と呼ばれていた女の子の前に着物をきた小さな女の子が現れた・・・。
次回は凛夏の力が覚醒し、凛夏の大切な人たちを守る。