バイト中
小説を書き始めて二日目。バイト中だというのに、私の頭の中は小説のことでいっぱいだった。
続きはあんな展開にしようかな……いや、でもこんなのでもいいなー……王道過ぎる流れはつまんないしな……
ハマるととことん夢中になる私は、今すぐにでも続きが書きたくて仕方がなかった。
早く書かなきゃ今思いついたの絶対忘れる……
今の私は仕事なんかしている場合じゃない!!……いやまぁ、なんだかんだちゃんとするんだけどさぁ……
いつも以上に休憩時間が待ち遠しい。
そして何より、まさかこの私が小説を書いてるなんて誰も思いもしないこの秘密な感じがなんか凄くいい!!
『春川さん?なんか機嫌悪いですか?』
そんな自分に酔いしれている私に、今日一緒に勤務している大学生の早川君が急に強張った表情で話しかけてきた。
「え?別に普通だけど……なんで?」
むしろ私は上機嫌だよ?
『あ、すみません。すっごいしかめっ面だったんで、てっきり俺何かしたかなと思って…』
おっとまじか、小説のことを考えすぎて顔がだいぶよろしくないことになっていたのか…
なんだろう、早川君、なんかごめん。
「あ、ごめんごめん!!ただちょっと考え事してただけだから気にしないで!!!!!」
私は勘違いさせてしまった分、早川君に対して今までにないくらい精一杯の笑顔を向けた。
『なんだ……なら良かったっす』
私の笑顔でかは分からないが、とりあえず強張った表情が和らいだ早川君。
早川君は誠実で真面目ないい子。だがめちゃくちゃ心配性で『でも』『もしも』が多く、結構面倒くさい。
あー、早く帰りたい……早く帰ってお酒を飲みながらパソコンカタカタしたい……
バイトの掛け持ちで、小説に集中出来る時間が少ない私。
そんな私は、とりあえずバイトの休憩中に携帯から走り書きして、帰宅したらパソコンで修正していくという方法を考えついた。
30分しかない休憩で、走り書きとはいえ若多少なりとも考えながら書いていくとあっという間に休憩時間は終わってしまう。
せっかくの休憩も、休憩した感0なわけだ。
帰宅後、その休憩中に書いた小説を眠たい目をこすって読み返し修正していく。
昨日今日始めたばかりの自分の小説なんて、誰も待っていないことは十分に分かっている。
ただ…
きつい中でも必死に小説を投稿する自分が「なんか苦労人の小説家っぽくない?」と、自分自身に酔いしれているのだ!!
……え、これって自分、ヤバいのかな……
例えヤバかろうと事実だから仕方がない。
早川君に謝ったにもかかわらず、その後もずっと小説ことで頭がいっぱいな私であった。
だいぶ話は飛ぶがそんなこんなで4日かけてようやく
プロローグと第1話を投稿した私は自己満足に浸りながら、
いつもより1缶多くお酒を飲み干し、ベロンベロンに酔っ払っていました。
という、果てしなく甘い幻想を抱いてる私だったが、
読んでくださってありがとうございました!!
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