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サーキット

「悲しみを生み出したいですか?」

「悲しみの連鎖を止めたいですか?」

 上の、もっと上の......

 下の、もっと下の......

 これらは、対称であり交わり、もつれあい、存在することを許される。

 選択権のない。ただ一つしかないものは、消えないがゆえに存在することは許されないが、その逆は永遠ではないが許される。

 そういう儚いものに私たちはなることでしか存在を許されない。

「どちらも同じ選択肢だね。僕にとってはどう違うのか全くわからないよ。」

 実態を持たぬ彼は、そう言ったまま姿を現すことはなかった。

「まったく。選択肢が存在していると思えば、実態を許されるというのに....。」

 さっきまで丁寧な口調でそういった彼女はやはり実態がなかった。

「信じていなくても信じたふりをしておけば、存在はできると教えたでしょ!!」

「無理だ。俺は正直なことしかできないんだ。そういうルールなんだ。」

 そういった彼にため息をつきながら彼女は

「ずいぶんとやっかいなルールに縛られてしまったね。逆なら、問題なかったのに...」

そうして、今度は二人してため息をついた。



「難しいなぁ。どうしてこうはっきりしてないんだ。」

「なぞだよね。こんなもつれあいが起こるなんて。神の見えざる手って実はこのことをいうんじゃないかな?」

 最近では、よく聞く量子力学という学問はさまざまな謎を解明してくれる可能性があるといわれている。

生物の体の仕組みも実は、この考え方がぴったりと合うというのだから驚きである。

 その量子力学とは、もつれあい現象を観測することに成功した(成功してしまったともいえる。)あの実験である。あの実験で、波と粒子の両方の性質をもつと解釈せざるおえなくなった。

 そういう結論が出てから今日に至るまで、いまだだれもその理由を知るものはいない。

 ある二人を除いては....



 最悪で最低だ。

 これが、最善で最高になるなんて......

「バカ!...その手段は使わないと約束したでしょ!!」

 そういって彼女は、僕の名前を呼び涙を流していた。

「仕方ないだろ....目的を見失うわけにはいかない。」

 ぼくは、片方の目だけで彼女をみていた。もう片方の目は開いていなかったというより開けなかった。

 周りは、言葉にならないほど息がつまりそうでどうなっているのか理解に苦しむものばかりだ。

「どうして...いつも一人で背負いこむの?」

「それが、ここに戻ってきた意味だからだよ。それに、こうなってしまっては仕方ないんだ。」

 僕の目の前には、赤く染まった彼女が穏やかな姿で永遠の眠りについていた。かつて、そして今でも愛しているその人は今、ここにはもういない。

「やったのは、私....そういうことにするから」

「おまえ!!まさか!!」

 そういうと、彼女は学校ごと爆発させた。


科学と魔術はどう違うのか?僕にはわからない。

なぜかって疑問に思う人は、その二つの意味を履き違えているんだと思う。科学は真実を探求することであり、魔術はなにかを信じさせ操ることである。前者は納得できるだろうが、後者はそもそも考えたこともない者が多いかもしれない。だが、これが事実だ。魔術とは、人々が信じればそれで効力を十分に発揮する。これは、真実でも偽りでもかまわない。信じさせれば、それでよいのだ。また、科学も真実を探求しているだけであって、完璧な真実ではない。しかし、完璧だと思わせることで存在している。もちろん、科学者本人は、完璧とは思っていない。ちょうど、宗教の教祖様もその教えを完璧とは思っていないように。

すなわち、科学と魔術は区別で...

「また難しい顔してなにか別のこと考えているでしょ!」

と、うるさいこいつは、境 円香。僕の幼なじみ。

「べ..別になにも考えてないよ。今度の休日の話でしょ。」

そういうと、彼女はビックリした様子で、

「あれ?珍しいこともあるわね...どうしたの?」

僕は、その時ヤバイと思い走ってその場を逃げるように自分の教室に駆け込んだ。

「今日の治....なにかおかしい。」



「流石は、円香だな。もう異変に気付いている。」

白衣姿に、眼鏡をかけてタバコを吸いながらこの男はこの失態について特に気にしていなそうだ。

「だからいったのに私にバレるって。なんで、解徒なの?ワタシだったら上手く....」

「上手くやれたかもな。」

彼は、間髪入れずに言ってきた。だったら私を選べがよかっただろとは言えない。わかっているからだ。解徒しかいないのだと...

白衣姿の彼、紅 見視野もわかっているだろと言いたげな目でこちらを見ていた。とてもイラつく。何がイラつくって解徒をあっちへ行かせたことだ。

「あの女には会わせたくなかったのに...」

「あはは、嫉妬かな?」

「だれが、解徒に嫉妬なんか!!」

「へええ、解徒君にとは誰もいってないけどね。」

やっぱ、こいつが一番イラつく。

「でも、この方法で向こうにいっても維持できている記憶はほとんどないから大丈夫か不安なんだけどね。」

「大丈夫よ。定期的にこっちには戻ってこれるわけだしね。」




「ああ、せっかく僕が成功するフラグたてたのに、死亡フラグたてちゃったね。」

「仕方ないじゃないの、このゲームのこと事態忘れてるんだから、彼女は。だいたい、あなたがぐずぐずしてるからこうなってるんでしょ。」

実態のない場所で実態のない二人の波動での会話が続く。

「あはは、でもあそこで解徒君があんな行動にでるなんて思わなかったんだよ。」

そういいながら、彼は私のことを睨んでいた。

(くそ。騙せていなかったか....)

「まあ、あっちの彼女も本当に記憶がないのか微妙だけどね。ところで....」

すると、突然さっきまでとは雰囲気が変わりというか、まるっきり別の波動となりかなりの威圧感がそこにはあった。

「このゲームのルール。まさかだと思うけど忘れてないよね。」




「ところで、量子力学ってどんな学問なの?」

唐突に、娘が質問してきた。

「どうしたんだ急に?なにか悪いもんでも食べたのか?」

「私が、こんな質問するのそんなにおかしい?ってそんなことより父さんの専門分野でしょ。教えてよ!」

私は、椅子から立ち上がり戸棚からコーヒーをだした。

「お前も飲むか?」

「いいよ、いらない。」

「でも、昨日はコーヒー飲みたいと夜中遅いのにコンビニまで行ってたじゃないか。だから、コーヒーをさっき買って来てやったのに。」

なぜか娘が嫌そうな顔をしているのが気になった。おかしいな昨日とだいぶ違う。

「も、もらうわ。」

なぜか声が慌てている感じだった。

「では、まずなにから話そうかな?」

「そうね。量子のもつれ合いについて詳しく聞きたいわね。」

「わかった。では、もつれ合いとはなにか知ってる?」

「シュレディンガーの猫がまさしくそうよね。生きていてかつ死んでいる猫でしょ。」

「そう。まさしくもつれ合いとは、どっちかしかありえないのにどっちもありえる状態をいうんだよね。」

「確率がそうよね。」

「ああ、だが物理学者は初めはこの考えに疑問をもった。というよりあの実験をするまではこのもつれ合いという考えは表にすら出てこなかった。だって、物理はこの世のものを基準にしているからね、もしこのようなものがあったら幽霊の存在を認めてしまうようなものだったんだ。」

少し、娘がにやけた。

「幽霊なんていないはずだもんねぇ。」

それに対して私は、首を振り。

「いやいや、それはわからないよ。存在しないことなど人間には証明できないからね。話を戻そうか。」

そのとき、急に娘の顔色が悪くなった。

「ごめん、また今度お願い。」

「あ、ああ」

そのまま娘は扉を開けて部屋から出て行った。




「イメージし、それを信じることで実態化する。それが今回の授業内容です。皆さんやってみてください。」

「はーい!」

たくさんのかわいい返事とともに子供たちの今日の仕事が始まった。イメージし、信じることであらゆる物体を実態化できるこの子たちは、あるチップを脳の中に埋めこまれている。

そこは、小学校だった。かつての小学校の面影は残してある。

はっきり言うが、この授業には先生はいらない。イメージは人それぞれ違うもので、個性ともいえる。

しかし、ここでは別の意味を持っていた。

「先生!見て。こんなのできたよ。」

「あら、よくできたわね。次も楽しみにしてるわ。」

人は、生物は、誉められることで次の想像を創造する。ゆえに、従来のこのシステムはかなり使い物になった。それだけではなく別の意味もあった。私が作ってほしいものを創造させることだ。

子供は、想像力があるがゆえに創造力がある。この世界では、それが常識となっていた。

すべては、あの人の発明から時代が変わった。時代は、完全に努力だけする人が徳をする時代ではなく、優れたクリエイターが天才という時代になった。昔、文明の力は人を殺すとはよく言ったが本来人間は努力だけをする。つまり人のマネだけをしてれば良いのではなく、新たなものを作る存在が必要とされ天才とされてきた。

文明の力が人を殺すのではなくこの新たなる探求ができない時点で死んでいるのだ。かつて、このクリエイターと呼ばれる人々よりも言われたことをマネしてやった方が生活が安定したこともあった。やはり、それは安定してはいるが同時に死んでいるものだという認識が今の常識となっている。

だが、努力しても必ず上になれるわけではないこともこの時代の弊害かもしれない。当然だが、クリエイターには売れるものと全く売れないものがある。どれかがヒットすれば良いがそうならないことの方が多いのはこの時代でも変わらなかった。

この弊害がなければ、こんなことわざわざする必要がなかったのにと私は今でも思っているし、やめた方が良かったと思ってもいるが一度走り出したものは止まらない。





これが、なんの意味をもっているのかなんて最後の結果をイメージできている人以外はわからないだろう。

「また、やるの?」

「ああ、順調だからな。」

「なにがだよ。私あいつになんて言い訳すればいいわけ!!」

「でも、順調さ。」

「どこがよ。誰がどう見たって意味わかんないわよ。なんでこんなことしてんの?」

「それは、姉さんみたいな人がみればそうだよ。」

「‥どういう意味?」

その後、弟は何かを悟ったようなあきらめにも似た目で

「姉さんのレベルじゃまだまだわからないよ。」

もう、何がなんだか弟のことはわからない。本当に。

「じゃ姉さんよろしく。」

「わかったわ記録しておく。」

弟は、夢を記録してくれと私に頼んできたときは驚いた。そもそも、弟にはそんな研究が進んでいるとかいないとかそんなこと知らないと思っていたし、私がそれに関わっているなんて極秘扱いなっていてもちろん、弟にも話したことはない。

「本当、この子って誰なんだろう。」

不意に言ったその独り言が一番今までで的を射た考えだと思い鳥肌がたった。

「そんなわけないわよね。」

そうして、私はそのスイッチを押した。















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