prologue
ーーー♪
ー涙色に染まる 青空の寛さを
ー目に焼き付けるたびに
ねぇ、ジーク
あなたのことが、大好きでした。
黒曜石のように輝く漆黒の髪
空のように鮮やかな蒼い瞳
不器用で優しげな微笑み
全部ぜんぶ大好きでした。
ーあの頃のままの君の笑顔の面影を
ーただ想っていた
闇しか見えなかった私に
光をくれたのはあなただった。
絶望しか知らなかった私に
希望を教えてくれたのはあなただった。
世界に連れ出してくれたのは
世界の美しさを見せてくれたのは
あなただった。
ー君は知らないでしょう?
ー私がどれほど君を愛しているかなんて
空をくれた。歌をくれた。
あなたから貰ったものは多すぎて数え切れそうにもない。
あなたがいたから
私は生きてこれた。ここに在ることができた。
きっと、私はあなたがすべてだった。
ーたとえ どんなことがあっても この身が朽ちても
ーずっとずっと君を想う程に
裏切られたなんて思わない。
憎しみなんてなかった。
だって、あなたは私の願いをたくさん叶えてくれた。
私にたくさんのものをくれた。
だから、今度は私の番
ー太陽を背にして 輝く君と
ーずっと一緒にいられはしないと気付いてた
覚悟なんてできてない。
全身の震えはちっとも止まらないし
助けて、と大声で叫びたい。
でも、私があなたを救うから。
あなたの愛したこの世界を、きっと守ってみせるから。
これが、私にできる最初で最後の贈り物。
ーそれでも 痛いほど切ない世界で
ー歌い続けるよ この愛の唄を
目を閉じれば 大好きなあなたが見える。
神様、どうか聞こえるのなら叶えてください。
ジークを幸せに。
彼の大切な人たちが、幸せであるように。
ー過去から今へ 今から未来へ
ー永久に祈り続けよう
ー君と君の大切な人が
ーずっと幸せであれるように
自分に溜まる魔力を感じる。
もう、時間切れ、か。
ねぇ、ジーク
「清らなる光よ ここに集え」
強がったけど、本当は、本当は、
「我は 聖魔法を授かりし者なり」
もう一度だけ、あなたに会いたかった。
「今ここに 世の汚れを浄化せよ、《ホーリー・サンシャリテ》」
辺りに光が満ちる。
体に力が入らなくなり、崩れ落ちる。
ーーフィア、ーー
あなたの声が、聞こえた気がした。
セピア色に滲む世界が段々と見えなくなってくる。
頬を伝った涙は何を思って流れたんだろう。
「ジー、ク」
私の歌は届きましたか?
祈りの声が、聞こえましたか?
あなたがずっとずっと幸せでありますように。
私に出会ってくれて、笑いかけてくれて
ありがとう。
そして、世界は真っ暗になった。