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乱用が大胆

 7月。

 梅雨という一つの季節が終わり、空の主役は雲から太陽に変わったこの頃から電車に乗っている人たちの肌の露出が増えてくる。暑さを少しでも解消するためのひとつの手段なのだろう。事実俺の膝下までの紺色の短パンにポロシャツという安易な格好をしている。が、電車通学してつくずく思うのはこの格好だと駅構内とか電車の中だと逆に寒いくらいだということだ。次からはこの上に何かジャケット的なものを羽織ってくるとしようと考える。

 暑さのためか肌の出が増えるというのは俺のような男からすればうれしい時期でもある。それは女性の露出が増えるということは足とか胸の谷間とかを見せに来るファッションをしてくる女性が多いということだ。それは非常にうれしい限りだ。

 こう根暗な俺でも少し舞い上がる。

 この日、1限目の講義が休講になることを前日から把握していた俺はこの通勤時間からずれた人の少ない時間に、電車に乗って大学に向かう。通勤時間帯であったら電車が止まる度に人の波に体がもって行かれそうになって大変なのだが今日は非常に楽だ。

 そんな時間だからこそ、出会えたのかもしれない。

 電車が止まり車両に乗り込んできたのは短いスカートに肩から胸の谷間まで大胆に露出したキャミソールを着た女の人だ。顔も化粧で化けていると言えきれいな部類に入る大人の女性。

 それよりも胸大きいな。胸がキャンソールの布を持ち上げてウエストラインが分かりづらくなっているがホットパンツでくっきりと分かる大きなヒップラインからしてスタイルもいいに違いない。

 だが、所詮眺める程度だ。俺が思っているそれ以上の過ちは犯すことはできない。社会的に。

 触りたい。触ってみたい。あの大きなおっぱいを服の上から服の中から揉んでみたい。

 AVとか見ていて男優の羨ましいことをしているものだと俺はつくずく思う。さすがにおっぱいを触った後、S〇Xまでは行かなくてもいい。童貞だから度胸がないというのは置いておいて一度でもいいからあんな大きなおっぱいに触ってみたいという欲求は収まることはないだろう。

 電車が停車駅で止まる。数人の人が下りて行ったが人が乗ってくることはなかった。目の前の大人の女性は降りなかった。

 俺は次の駅で乗り換えのための降りないといけない。この女性とはもう会えなくなるかもしれない。あのさわり心地の良さそうなおっぱいにはもう会えないかもしれない。そう考えると俺の中の悪魔がささやく。

 だったら、触ればいいじゃないか。10分時間を戻せばなかったことになる。

 確かにそうだ。10分・・・・・いや、5・・・・8分くらいどれだけ邪魔され用が好き放題におっぱいとかお尻とウエストとかを触りまくっても10分前に戻れば何事もなかったかのように元通りだ。俺が強制わいせつ罪で捕まることもない。

「男を見せるんだ。俺」

 手元のスマホに集中していて俺の方に気付いていない様子。

「行くぞ!」

 一歩踏み出した瞬間、電車がブレーキを掛けた影響で誰かが俺の背中を押しているかのように踏み込む足が大きくなるそのまま大人の女性の胸をがっちりと握る。ラッキースケベという形になった。触った方も触られた方も硬直時間があった。

 お互いに顔に一気に熱が溜まっている。俺は顔が熱く、大人の女性は顔を真っ赤に染めている。

 ここまで来たらもう戻らない。勢いのままにもにもにと柔らかな感触を確かめたいと思っていたのだが俺が揉もうとして力を入れた瞬間、大きな胸がつぶれた。

「・・・・・はぁ?」

 胸が片方だけ潰れた。

「あ、あんた何やってんのよ!」

 そのまま頬をパチンと叩かれた。

「この痴漢!」

 ああ、そうだよ。俺が痴漢だよ。

「それよりもあんたのおっぱいどうなってんだよ!」

「痴漢に答える必要なんてないわよ!」

 おい!お前!っと正義の味方を名乗る男が数人俺を取り押さえに来る。まだ、10分には時間がある。せっかく俺が羞恥心と常識を捨てて公衆の面前で見ず知らずの赤の他人のおっぱいを触りにいったのになんだ。この満足感のなさは。

「あんたのおっぱいはブラジャーでごまかしていたのか!」

 そう俺が言った瞬間、大人女性はそのつぶれてまな板同然となった胸を恥ずかしそうに抑えながら俺の頬を再び強く殴った。

「あんたに見せるための胸じゃないのよ!」

 と意味の分からない怒られ方をした。

 あんな偽物のおっぱいを触るくらいならあの張りのあるお尻の方を触るべきだった。

「ああ!戻れ!」

 目をつぶり耳鳴りがすると俺を押さえつける力が急になくなり目を開けると何事もない電車の車内の風景が広がっていた。そして、偽物のおっぱいで色気を出す目の前の女性を見た瞬間、腹が立った。

 10分後、乗り換えの駅についた。女性は降りないようだ。

「偽物のおっぱいめ」

 そういうと聞こえていたのか女性は顔を真っ赤にした。その瞬間、扉が閉まる。何か言いたいような顔をしていたがそのまま電車は行ってしまった。

「いい気味だ」

 満足して乗り換えの電車の来るホームに向かおうとすると、いっしょにおりた見慣れない女の人が俺の言動を聞いていたらしく。

「駅員さん!変質者です!」

「待て!」

 この後、変質者として駅員室に連れて行かれた。結局、時間を戻しても結果は変わらず駅員室に連れて行かれた。せっかく力を使ったのにもかかわらず、俺のおっぱいを触りたいという欲求は抑えられることはなくただ苛立ちだけが募っただけだった。女にはしてやられてばかりだ。

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