希望の能力
9月。
夏の暑さ、残暑がまだ居座っていてまだまだ暑い日が続いているこの季節。鳴いているセミたちもどことなく弱々しく感じるその日、俺は大学に向かうために家を出る。今日からまた授業だ。夏休みボケのせいで辛い朝に起きて家を出て大学に向かう。
しかし、初日である今日はガイダンスだけで始まるのは午後からで通勤時間帯から外れているので電車の中は空いていて快適だ。
あれから彼女とは何度か会って飯を食べたりした。スマホアプリのラインでも会話が弾んでいる。おそらく、そんな夏の再会を知った者がいるのだとしたらいっそのこと付き合えばいいのにと思う。だが、彼女と俺の関係はこれが最も良好でこれ以上の踏み込みは互いに拒んでいる。だから、これでいい。これが一番いい。
彼女と再会した8月に俺は10分時間を戻す能力について深く考えた。私利私欲のために使っていた能力。自分の都合にだけ合わせた能力。つまり、逃げるための能力。その使い方を改める必要があった。あのムードメーカーの死から逃げるためにこの能力を使うのを止めた。あれを二度とやらないために俺は能力を使う。
彼女の言ったかっこいいじゃんという言葉が俺の支えとなっている。俺自身がどれだけ責められようと人を助けた事実は変わらない。単純に考えればそれで十分じゃないのか?今のひとりでいる状況下ではその自己満足が一番ベストだ。ならば、俺はそれを貫くべきだ。
「ちょっと止めてください!」
「うるせーな!いいじゃねーか!」
女の人がガラの悪い男に絡まれていた。いや、触られている。主に尻をなめるように触っている。それを女の人は振り切ろうとしているが強引なガラの悪い男は逆にその抵抗を楽しんでいるように見えた。羨ましいという気持ちを払しょくして最低だ。周りにいる奴らは気付いているが相手のガラの悪い男が怖いのだろうか動けずにいる。
確かに正面からぶつかれば俺もただじゃ済まない。だが、俺にはそれをどうにかする手段がある。時間を10分戻せばあのガラの悪い男に絡まれないようにする手がうてる。彼女は俺の頭の回転力があるからこそこの能力が最大限に発揮されている。
現在起きていることが俺にとってはリハーサルで時間を戻した時が本番だ。本番がより良い結果で終われるように俺は今日も当たり前のように呟く。
「戻れ」
いつもの目をつぶった後に聞こえる耳鳴りが今は自然と心地よく聞こえた。
これから俺の能力を取り巻く環境がどう変わろうと俺は生きていく。辛いことがあっても楽しいことがあっても俺にはそれ話せる相手がいる。それだけで俺の心は軽くて気分がいい。
目を開けるとそこは10分前の世界。まだ、あの女の人はガラの悪い男にいなかった。電車が駅に停車して扉が開くとそのガラの悪い男は入って来た。
そこから俺がどうすればいいのか考えはあった。その男がこれから何をするのか。これから何が起きるのか。これから起こる10分は俺は知っている。つまり、この10分間の世界誰の物でもない。俺のものだ。
「この世界は俺の手中の中だ」
そう呟き。俺はことを起こすべく歩き出す。
それがいい方向に進めるように今日も俺は葛藤する。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
実はこのお話を描こうと思ったのにはとある理由があります。
もちろん、10分時間を戻せればいいなっという気持ちもありましたが、一番大きかったのは電車に乗った時に見知らぬ女の人のおっぱいを見て思ったことです。
「時間を戻せればあのおっぱいに触れるのに」
と思ったのがきっかけで書きました。
笑わないでください。
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