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「船さん! 船さんお願い起きて!」

 手の平が腫れそうになるくらい必死で床を叩く。

 その間にも番人の砕けた部分は、あっという間に再生していく。

 焦ったあたしは声を限りに叫んだ。


「あの向こうに、人間の国にアグアさんがいるのよ!!」


 ―― ボウッ!!

 その叫びに反応するかのように船体が光った。

 そしてユラユラと大きく揺れたかと思うと、高速船も真っ青なスピードで球体に向かって突進し始めた。

 す、すごい! アグアさん効果抜群!


 後ろを振り返ると、ほぼ再生を終えた番人が立ち上がりかけていた。

 どうしよう! 間に合わない!?

 すると立ち上がった番人の体が、中に巨大バルーンでも仕込んでいるみたいに、お腹のあたりから急激に膨らみ始めた。


 そして耳をつんざくような破裂音が響き渡り、あたしは思わず両手で耳を押さえる。

 番人の全身が、跡形も無く爆風で吹き飛ばされてしまった。


『今だ! 走れ! 飛べ!!』


 ジンの声が響いた。

 同時に後ろから台風のような追い風が巻き起こる。それに乗って、まさに飛ぶように走る神の船。


 背後の砂地がまた小山のようにみるみる盛り上がる。

 それが番人の体を形成しながら、船を上回るようなスピードで追いかけてきた。

 うわあぁしつこい! まだ諦めてないの!?


「急いでー! 船さん負けないでー!」


 神の船の名にかけて、はにわなんかに負けちゃだめー!


 狂気のように疾走する船。すさまじい風の勢いに、体が船の外に飛ばされてしまいそうになる。

 あたしは左腕で、今にも吹っ飛ばされそうなモネグロスの体をガシッ!っと押さえ込んだ。

 そして右腕で、割れて突き出た板に死に物狂いでしがみ付く。


 どんどん距離を縮めてくる番人。

 追いつかれる! もっと速く! 速く速く速くーー!


 その時、形の定まらない巨大スクリーンのように、透明な球体が歪んで広がり始めた。

 識別不能な歪んだ色彩が大きく広がりこちらに伸びてくる。

 船はそれに向かって一直線に驀進する。

 もう少し! あともうちょっと!


 突然頭上が薄暗い影に覆われた。

 振り向くと、番人の巨大な手の平が頭上を完全に覆っている。

 ああ! ついに追いつかれた!


 唸るような風の音が走り、番人の手が粉々に砕け散った。

 飛び散る砂の塊に押されるように、実体化したジンの体が吹き飛ばされてこっちに飛んでくる。


「ジンーーーーー!!」


 ジンの銀の両目があたしを捉えた。

 その両手があたしに向かって差し出される。


 ジン! ここよ!


 ジンの腕が、あたしの体を守るように強く抱きかかえたと同時に、神の船は人間の国の入り口に思い切り突っ込んでいった。


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