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第39話・つまり時間を飛ばすのもテンプレってことだ

ものっそい時間が飛びます


いきなり話が変わって俺TUEEEな話にはしないようにするつもりですが・・・


それでもよろしければご覧ください

「むむっ」

 

 キラリン☆とリナの目が光る。

 シャインが「転職しよう」と話した瞬間、リナの動物大好きセンサーに引っ掛かる存在があった。

 ちなみに彼女は犬派。

 

 場所的にはちょうどシャインの後方、シャインが教会を背にして座っているので、つまりは教会の壁際近くということになる。

 リナから見て左側が正面入り口になるので、その反対側にあたる裏手のほうということになる。

 裏口なんて無いので建築基準法とか大丈夫かとツッコミをいれたくなるが、さすがにゲームにそんなツッコミをいれる人はいない。

 

「転職つってもよぉ、レベルあがるまでどんだけかかんだよ」

 

「確か40以上が転職条件よね?

 今すぐどうこうできるとは思えないわよ」

 

 トライとトロンがシャインに疑問をぶつけているが、リナにしてみれば今はそんな場合ではない。

 何故か? それはリナの目が正しければ、あれはリナが好きな動物の中でも特に好きな種類だ。

 

「むむむっ」

 

 間違いないかと確認するようにまじまじと見つめるリナ、他の三人がどうしているかと言えば。

 

「もちろん今すぐにって話じゃない、でも今のままであのイベントをクリアするのは無理だ。

 だからまずはできるだけ早く転職をさせようってことさ」

 

「しかしよぉ、あれクリアしねーとリナが強くなれねぇんじゃねぇのかよ?」

 

「それとこれとは別でしょ? リナちゃんだけ別のクエストが発生してるんだし」

 

 今後の方針決定で忙しいらしく、睨むような勢いである一点をガン見しているリナに全く気づいていない。

 

 リナも自分の名前が出出たような気がするな、とは思ったものの、そんなことよりこっちのほうが大事だと言わんばかりに曖昧な「……えぇ」と一言返しただけだった。

 

「でもあいつを倒すのはいつかやるだろ?

 だったら倒せるような予定を組んでだな……」

 

 さらに白熱しはじめた三人を横目に、リナはトテテっと聞こえそうな可愛らしい走り方で、その動物のほうへと近寄って行った。

 三人がそれに気づいた様子は無い。

 

 

――――――――――

 

 

 ジーーーッ。

 

 ぴくぴく←耳

 くあーっ←あくび

 ふよん←尻尾

 

 間・違・い・な・い。

 リナはそう確信した、これは間違いなく。

 

「柴犬だっ」

 

 そう、柴犬だった。

 陽溜まりの中、伏せの状態で足をカエルのように投げ出し、あくびをしたあとは気持ち良さそうに目を瞑っている。

 

 柴には赤毛・黒毛や珍しい某大手携帯メーカーのCMに出ているような謎のパパ的な白毛などがいる。

 ちなみにパパ自体は柴犬ではなく北海道犬という別の種類らしい。

 共通する点として腹側の毛は白い。

 この子は黒毛だったようだが、腹の白い毛が少ない気がする。

 顔は多分キツネ顔というタイプに分類されるのだろうが、正直に言って好きでもない人にはそんな微妙な顔つきの違いなど分からないだろう。

 

「こんにちわ、ワンちゃん」

 

 犬を撫でる時はいきなり頭の上に手を持っていってはいけない、慣れてない犬はビビって吠えたり噛みついたりしてくる。

 

 チラッと片目を開ける柴犬は、リナを見た後で鼻息を短くフッと出して再び目を閉じる。

 人によっては馬鹿にされたと怒り出しても仕方がない態度なのだが、リナが感じたのはそれではなく、自分が間違ったのかもという疑問だった。

 

「あれ、もしかして犬じゃなかったのかな?

 もしかして狼とか?」

 

 チラッ

 

 再び片目を開けてリナを見る柴犬。

 今度はフーッと長めに溜息をするように鼻から息を吐き出す。

 どうやらリナの疑問は間違いなかったらしい。

 

「あらら、狼さんだったのね。

 通りで犬にしてはずいぶんかっこいい子だなと思った~」

 

 チラッ

 

 3度片目だけでリナを見る。

 そのまま興味なさげに再び目を閉じるが、尻尾が本音を物語っている。

 ふわんふわんとゆっくりではあるが、尻尾が嬉しそうに左右に揺れていた。

 

「ふふ、君はここで何してるのかな?」

 

 今度はチラッとではなく、顔ごとリナに向けてくる犬……ではなく狼。

 その瞬間にリナには電子音が響いた。

 

 

ピロリン♪

 イベント「ビーストリンカーへの道」の条件を満たすモンスターです。

 このモンスターを「仲間」にしますか?

 

 はい

 いいえ

 

 

 リナはウィンドウ越しにこちらをジッと見つめている狼に向かって、話し始める。

 

「……ねぇ、私と一緒に来ない?」

 

 ワンッ

 

 狼は、犬のように一鳴きすることで返事をしたのだった。

 

 

ピロリン♪

 イベント「ビーストリンカーへの道」をクリアしました。

 スキル「グロウアップビースト」を取得しました。

 

※「グロウアップビースト」

 仲間にしたモンスターをマップを超えて共に行動することが可能になります。

 また、モンスターもレベルアップ・ステータス振り分けが可能になります。

 経験値はパーティーと同様に計算されます。

 ただしこの効果はスキル「テイムビースト」によって捕まえたモンスターには適用されません。

 

 

「よろしくね?」

 

 ワンッ!

 

 狼の尻尾は、激しい勢いでブンブンと振り回されていた。

 

 

――――――――――

 

 

「だからよ、焦ってレベル上げしたところでだな?」

 

「しかしレベルが上がれば色んな場所に行けるだろ。

 結果としてその方がアイテムも集まりやすいし、装備品を揃えるのも楽になるじゃないか」

 

「でもそれじゃ目的と手段が入れ替わっちゃってる気がしないかしら?」

 

 三人は未だに議論を続けていた。

 リナが狼のところに行っているのに全く気づいていない。

 

 ワンッ!

 

「そう、だからワンってなるわけでだな、ワン?」

 

 あぐらをかいて座っていたトライはぐるんと体ごと向き直り、自分のやや後ろにいたはずのリナを見る。

 当然ながらそこにリナがいるはずは無く、犬の鳴き声のようなものが聞こえたシャインの後方へと視線を向けてみる。

 

 そこにいたのは、子犬にペロペロと顔をなめられているリナの姿があった。

 

「……よぉシャイン、懸念が1つ解決したみてぇだぜ?」

 

「そう……みたいだね」

 

「もふもふだ」

 

 楽しそうに子犬と戯れるリナの姿、なんとなく殺気立っていた雰囲気は、その光景を前に徐々に霧散していく。

 トライを含め、誰もその存在を認識していなかった子犬。

 それは恐らくリナのイベントがキーになっているのだろうと容易に想像ができる。

 つまり今のこの光景は、それが終わったということを意味していたのだった。

 

「なぁ、シャインよ」

 

「なんだい?」

 

「ゲームってのはよ、楽しむためにやるもんだぜ?」

 

「……そうだな、そうだったよ」

 

 楽しむためのゲームで、楽しむために準備をすることは確かに必要ではある。

 しかし人は準備を入念に行うあまり、まるで修行のような苦痛を味わうことになる時がある。

 それも、誰に言われたわけでもなく自分から進んでその道を選んで。

 あまりにも長いその修行期間をプレイしつづけたプレイヤーは、いつしか楽しむために強くなるのではなく、ただ強くなるためにゲームをしている状態になることがある。

 それ自体はきっと悪いことではないのだろう、それそのものはきっと人間の本質でもあるのだろう。

 

 だが少なくとも、トライ達はそのためにこのFGというゲームをプレイしているわけでは無かった。

 

「もう少し、ゆっくりやろうぜ」

 

「そうよ、フェンリルはいつかぶっ飛ばすけど、今は諦めるってことでいいじゃない」

 

 やれることはまだまだいっぱいある、トライがトロンの言葉にそう付け加えた。

 実際に彼らはまだ始めて1ヶ月も経っていない初心者もいいところだ。

 それがフェンリルを倒そう、などと言い出してはベテランの古参プレイヤーには鼻で笑われてしまうだろう。

 今はまだ、準備期間に過ぎない。

 いつか、を実現するために、今はできないことをできるようになるための……

 

「ゆっくり、か」

 

 四人と一匹がいる教会の庭。

 そこに流れる空気は、ゲーム内とは思えないほどに穏やかなものだった。

 

 

 ――――――――――

 

 

 時間は流れ、実に6ヶ月という月日が経った。

 落ちた砂時計の砂が戻ることは無いように。

 過ぎ去った時間が変わることはない。

 

 

 

 あるマップ重厚な鎧に2メートル近くある巨大な剣を持つ男がいた。

 赤黒い鎧はまるで悪魔のような印象を受け、その内に秘めた効果が尋常ではないことが一目で分かる代物だ。

 「クリムゾンブラッドシリーズ」と呼ばれるその鎧は、かつてはランダムでアイテムを取得する特殊アイテムからしか出現しないと言われていた高級装備品。

 

 見る人が見れば、それは装備エリアカスタマイズというシステムが適用されている改造品だということが分かっただろう。

 このシステムは装備エリアをある程度自由に分割、または1つにするシステムだ。

 本来装備品は頭・体・腕・足・アクセサリーの5箇所に左右の腕という合計7箇所の装備に限定されている。

 これを例えば腕なら右腕と左腕に分割し、左右に別々の防具を着けるといった使い方が主流だ。

 逆にアクセサリーを除いた全てを1つにし、全身鎧として設定することもできる。

 この場合お店などに全身鎧としての装備品が並ぶようになるほか、防具同士を合成するような形で1つの防具にしてしまうこともできるようになる。

 どちらも特殊効果が性能低下してしまったり、場合によっては無くなってしまったりすることはあるのだが、装備の自由度が一気に上昇するため高レベルになればなるほど効果的なシステムだ。

 

 しかし分割設定した場合、1つのエリアに対して1つの装備品を設定してしまうと残りの部分は消えてしまうという欠点がある。

 つまり左右の腕で分割していた場合、両方の腕に装備するはずだった装備を右腕に設定すると、以降何があっても左腕部分が復活することは無い。

 さらには装備品の強化も分割すればそれだけ強化する場所が増えていくため、資金も素材も大量に必要になってくる。

 

 しかしそれを考えても、彼はあるシステムを知っているプレイヤーだったためにメリットが多い。

 それがレベルアップ装備品の存在である。

 部位によってその性能を調整して作り出し、それぞれに特殊効果を持たせることで、彼の今の状況は普通のプレイヤーと比較してちょっと頭がおかしくなりそうなくらいの特殊効果が存在している。

 

 ただでさえレアなクリムゾンブラッドシリーズで全身を包むプレイヤー。

 しかもそれが装備エリアカスタマイズを行っているということは、少なくとも見た目以上にそれを持っているということになる。

 

 そして悪魔のような兜を被ったその男は、その背にあった巨大な剣を片手で持ち上げ、頭上に大きく掲げる。

 艶のある黒い刀身、光を吸い込むようなその黒さ。

 それが今のFGにおいて最大の攻撃力と最大の重量を誇り、彼以外では持つことすら困難である物体であるということは、彼とその仲間以外は誰も知らない。

 余計な装飾の無い、実用性を最優先したようなその剣。

 男はそれを掛け声とともに一気に振り下ろした。

 

 目の前にいた「敵」に向かって。

 

「どおおおらっしゃああああああああ!!!」

 

 彼の目の前にいた「敵」

 それはクリムゾンデーモンと呼ばれる、まさに彼が着ている鎧のモデルとなっているモンスターだった。

 それが彼の気合のこもりまくった「指先に全力を込めてたたかうボタンを押した!」攻撃によって、上下に真っ二つ、一刀両断されたのだった。

 

 彼は、FGの中でトライと名乗っている。

ちなみにクリムゾンブラッドシリーズそのものではありません、あくまでもレベルアップ武器の防具版を装備しているだけで、見た目はわざと似せているだけです

この辺は本編で説明できればなと思っております


今後ともよろしくお願いいたします


※2012/8/26

削除の仕方がわからなかったので第39話をコピペして修正


※2012/8/28

メタ発言を修正

リナの走り方あたりを修正

というかリナに関する部分を大体修正、リナのときだけひどいな

携帯のパパに関する部分に追加→SeA様情報提供ありがとうございます

※2012/9/14

文章を全体的に修正、内容には変化なし

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