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第36話・つまりイベントスタートってわけだ

そそそそそそそれでは、つづっ、つつつづつづづきをはははなさせていただきましゅっ!?


「お、おおおお落ち着けってばっかおま、ここここの程度でびびびびってんじゃねーよっ!」


日間7位とかびびっててんぱってます

お気に入り登録してくださった皆様には感謝です

びびりながら書いた内容ですが、よろしければご覧ください

「やぁ、こんにちわ。

 こんなところまで誰かが来るなんて珍しいね」

 

 ジャングルと言ってもいいほどの密林の奥地。

 プレイヤー間では全5階層からなるジャングル型ダンジョンと言われるマップの最奥部2つ手前。

 四人の目的であるNPC「ドロージ」は、そのNPCに会うためで無い限り誰も近寄らないような片隅にポツンと一人静かに立っていた。

 

「こ、こんにちわっ!」

 

 一番最初に声をかけるのはやはりリナ。

 この場所へ来たのはある意味では彼女のため。

 彼女の将来へと続く道を探すために来たのだから当たり前といえば当たり前だ。

 

「こんにちわ。

 それで何か僕に用があるのかな?でなければこんなところまで来ないだろうしね」

 

 ドロージの公式設定では、彼は仲間にしたモンスターと共に歩むことを決め、文化の世界を離れ自然の世界でモンスターと共に生活している、ということになっている。

 実際彼の着ている服は先ほどまでトライ達が戦っていたモンスター「マッスルモンキー」というなんとも製作会社がネーミングをめんどくさがったようなモンスターの毛皮が使われている。

 肩と胴体の部分、それから腰周りと足の膝から下部分と、腕の肘から下部分を覆うように作られた防具。

 背中に背負ったリナのものより大きめの弓と、体の各所に入った刺青のようなボディペインティング。

 無駄に優男でイケメンに作られた顔が、たくましい体つきと装備に違和感を晒しだしていた。

 公式イラストではここに筋肉隆々の巨大な狼型モンスターが戯れている絵が掲載されているのだが、今はそのモンスターはいないようだ。

 

「あ、あのっ! モンスターと一緒に戦いたいんですっ!」

 

 モンスターと一緒に戦う、その問いに彼はすぐには答えなかった。

 それはプレイヤー間ではあまりよろしくない認識の行為。

 世界観的にも、モンスターとはすなわち無条件で倒すべき相手という設定になっている。

 彼がどちらの意味で捉えているのかと言えば、当たり前に後者の意味ではあるのだが、彼は少し困ったような顔で彼女に答える。

 

「モンスターと、か。

 あんまり喜ばれる行為じゃないってことくらい、わかって言っているんだよね?」

 

 プレイヤーにも、世界観的にもどちらとも捉えられる言葉だ。

 ドロージは当然後者の意味で言っている。

 それはリナを含め、この場にいる全員がわかっていることだ。

 

 しかし、リナにとっては前者の意味でも理解ができる。

 そのことでつい先日まで悩んでいた以上、その言葉をそちらの意味で意識しないではいられない。

 「喜ばれる行為ではない」、その言葉はリナが思っていた以上に強く、改めて言葉にされることでさらに強く、彼女の決心を揺るがす。

 

「リナ」

 

 言葉につまり、「はい」とすぐに答えられずに硬直してしまうリナ。

 その背中を押すのは、やはりというべきだろう。

 彼女に決心をさせ、ここまで導いてきて、これからも意識的にしろ無意識的にしろ、ずっと導いていってくれるだろうと思っている彼だ。

 

 リナは後ろを振り返り、声の発生源であろう彼を見る。

 そこにあるのは不適な笑み、初めてその顔を見た人なら恐怖が先に思いつくような凶悪スマイル。

 罠に落とされるか脅されるか殺されるかの3択を真っ先に思い浮かべるような笑みはしかし、彼の本心を多少なりとも知る彼女達にとって、逆に安心できるものだが。

 

 リナが知るその凶悪スマイルの持ち主、トライとはそういう人物だと彼女は知っている。

 

「かまわねぇよ、やっちまえ」

 

 俺たちはそんなことを気にしない、リナにはそう聞こえた。

 トライの両隣にいるシャインとトロンも、やはり同じことを言いたげににっこりと微笑んでいる。

 シャインからはなぜか威圧感のようなものが放たれているような気もするが、きっと気のせいだろう。

 

「……はい」

 

 リナはゆっくりとドロージへと向き直り、自分の言葉ではっきりとそう伝えた。

 ここでひいては何の意味があるのか。

 仲間と離れてまで、その仲間にたくさん手伝ってもらってまで、転職までさせてもらったうえで、ここまで来たのだ。

 それを全て忘れて断るなど、彼女にできるはずがなかった。

 

「それでも、それでも一緒に戦いたいんです」

 

「そうか」

 

 彼女の決心を読み取ったのか、ドロージはもう余計な言葉は使わない。

 

 口に指を円にして咥え、細く息を吹き出してピィーッと口笛を鳴らす。

 そして彼は自分の後方、ゲーム的には見えない壁となって進入できなくなっている森の奥地へと体ごと向け、何かが来るのを待つようにじっとしていた。

 

 ガサガサッと音がし、茂みを掻き分けて何かが迫ってくる。

 その音は段々と大きくなっていき、暗闇の中に巨大な何かのシルエットが浮かび上がり、暗闇にギラリと光る二つの輝きが見えた。

 

「おいでガラム!」

 

 ウォフッ!

 

 今にも出てくるかというところで、ドロージはそのシルエットに向かってそう声をかけた。

 その瞬間弾かれるように飛び出した巨大なシルエットは、ドロージへとまっすぐに突進にも近い勢いで飛び込み、剣かと思うほど巨大な爪を光らせ、人間の足ほどもある太さの巨大な腕を振り上げる。

 押し倒すように上からドロージへと飛び掛り、その姿を全て陽光の元にさらけ出した巨大なシルエットは、白に近いグレーをした巨大な狼だった。

 その人間の頭どころか首まで一口で咥えてしまいそうな大きな口を開き、押し倒したドロージに向かっておもむろに近づけていき……

 

 ベロン

 

「お、おい、ガラム」

 

 ベロンベロン

 

「ちょ、まて、今お客さんが」

 

 ベロベロベロベロ

 

「ガラム! ちょ、ガラム待てってば……」

 

 ベロベロベロベロベロベロベロベロン

 

「だ、誰か助けてーっ!」

 

 公式イラストの通り、仲間のモンスターと戯れる……一方的な気がしなくもないが、とにかく同じような光景が目の前に広がるのだった。

 

 ちなみにこのモンスター、プレイヤーが仲間に「できない」と言われているモンスターで、その名をクレセントファングという。

 ある特殊なマップのボスモンスターであり、普段はボスモンスターの中では弱い部類なのだが、リアルの月の満ち欠けに応じて特殊な条件が揃うと異常に強くなるというモンスターだ。

 しかも弱いと言ってもそこはボスモンスター。

 当然レベル30台がせいぜいのこの四人がどうこうできるレベルのモンスターではなく、助けを求める声に応じられるほど彼らは強くなかった。

 

「イベントバトルか!?」

 

「やめろ、マジでやめろ!」

 

「あんたちょっとは情報調べなさいよ!」

 

 訂正しよう。

 やる気満々のトライを止めるのに必死でそれどころではなかった。

 

 

 ――――――――――

 

 

「ふぅ、えっとそれでだね」

 

 ニッコニコの笑顔で尻尾をぶんぶん振り回してお座りしているクレセントファングの隣に胡坐をかいて座るドロージ。

 なんとなく全員座ったほうがよさそうな雰囲気だったので、全員が座って会話を続けている。

 リナだけがドロージの目の前で正座をしているのはなんというか、彼女がマジメだからなのだろう。

 

 余談だが、さすがボスモンスター、尻尾振り回しているだけで扇風機の弱ぐらいの風が発生している。

 

「モンスターを仲間にするだけなら一時的に『支配』という形でできるのは知ってるよね?」

 

 ドロージから改めて説明が始まるが、リナとシャインはその言葉に驚きを隠せない。

 モンスターテイマーが持つスキル「テイムビースト」

 最大の特徴であり、唯一の長所であるはずのこのスキル。

 その説明には「指定したモンスターを捕獲して戦闘に参加させることができる」という一文が記載されているのみで、他は仕様や確立、レベルがあがったら確立があがるなどの説明しか記載されていない。

 シャインはもちろん、リナでさえもその説明を「仲間にする」という行為として考えていたのだが、実際にはそれが「支配」であったということに驚いていた。

 

「支配、だったんですね」

 

「そうか、そうだね、今はそんなことも教えていないのかもしれないね」

 

 少しだけ、本当に少しだけ残念そうな表情をするドロージ。

 彼がこの表情の裏で何を考えているのか、このときは誰も想像することはできなかった。

 

「とにかくだ、本当にモンスターと『仲間』になりたいなら、支配なんていう上下関係じゃ駄目だ。

 『仲間』であるならば、対等な立場の友人として一緒になるのが一番いいと思わないかい?」

 

 全くの余談その2で申し訳ないのだが、ペットを飼っている場合に格下として扱うのはよろしくないと言われる。

 しつけ教室の先生などは対等に扱いつつ、主人の言うことを聞いたほうがいいことがある、と思わせるのが大事だと言う。

 ご褒美をあげる、褒めてやるなどを繰り返していった結果、自分から相手の下にいる立場だと自覚するようにするのが大事だという。

 これが最初から上下関係を押し付けるようなしつけをすると、ほとんどの場合は失敗するかストレスでケガや病気が増えるのだそうだ。

 

 製作会社がそこまで知っていたかどうかは定かではないが、少なくともビーストテイマーのスキルはこの「上下関係を押し付ける」というものに該当するようだ。

 

「仲間になってほしいのなら、いろんな部分で大事にしてあげる必要がある。

 ……まぁ僕は大事にしすぎて間違ったような気がしなくもないんだけど」

 

 チラッとドロージがクレセントファングのほうを見る。

 すると狼は「え? なになに褒めてくれるの? きゃ~♪」みたいな感じでドロージに体をすりすりし始め、満面の笑みで尻尾をさらにぶん回す。(風がちょっと強くなった)

 はははと苦笑いしながらも、ちゃんと撫でてあげるあたりドロージも満更ではないようだが。

 

「羨ましいです」

 

 リナはその光景を宝物を見るようなキラキラとした目で見つめる。

 その後ろからトロンがもふもふを触りたいのだろう、ギラギラした目でクレセントファングを見つめているのだが、全員ドロージとクレセントファングを見ているので誰も気づかなかった。

 

「ははは、さて本題だね。

 僕はこの子をまだ子供だったころに拾ったんだ。

 理由はまぁ、冒険者だったころにこの子の親を僕と仲間たちが殺してしまったから……

 子供を守るために戦っていたことを、殺したあとで知ってしまってね。

 当時の仲間とはその時にモメてしまって別れたんだけど、その後はずっとこの子と一緒に暮らしているんだ」

 

 その言葉に再び息を呑むリナ。

 知られざる背景を知った喜びよりも、その悲劇の内容に心を痛めてしまったようだ。

 

「ああ、そこはあまり気にしなくていいよ。

 今はもう仲直りしているし、彼らも仕事を選ぶようになったみたいだし、冒険者として成功しているみたいだしね」

 

 ちなみにその一人が前衛ギルドのギルドマスター、トライがぼろ負けしたあの爺さんだったりする。

 そのことをトライ含めこの四人が知るのは大分先の話だが。

 

「まぁつまり、本当に仲間になりたいならそんな時代から一緒にいないとダメってことさ。

 愛情を持って1から育て上げる、一緒に育っていく、そのくらいの気持ちが無いとね」

 

 その言葉が終わった瞬間、リナの耳に聞きなれた電子音が鳴り響く。

 

 

ピロリン♪

 

 イベント「ビーストリンカーへの道」が開始されました。

 ドロージの話を聞いたあなたは真のビーストリンカーを目指して進みます。

 特定のモンスターと接触できるようになりました。

 モンスターを1体、『仲間』にしましょう!

 

クリア条件

 特定モンスターを仲間にする。

 

 

「っ!?」

 

 イベントが開始され、この内容を終わらせればモンスターの仲間ができる。

 リナがそう理解した瞬間を見計らったかのように、ドロージはさらに言葉を続けた。

 

「参考になるかはわからないが、最近森の奥に大型のビーストモンスターが住み着いたんだ。

 この辺にはいないはずのモンスターなんだけど、どうも様子がおかしいんだよね。

 今のところ暴れたりはしていないんだけど、ちょっと様子が気になるんだ。

 よかったら君たちで調べてきてくれないかな?」

 

 すると今度はリナだけでなく、パーティーを組んでいた四人全員に再び電子音が鳴った。

 

 

ピロリン♪

 

 イベント「フェンリル発見」が開始されました。

 森の奥地に住み着いたモンスター「フェンリル」を調査しましょう。

 どうしてこのモンスターはこの森に来たのでしょうか……?

 

クリア条件

 モンスター「フェンリル」を調査。

 

 

「フェン……」

 

「リル?」

 

 シャインとトロンはそのイベントに記載されたモンスターの名前を見て、「バグったか」と思ったらしい。

 それも知識のある人物なら当然の反応だ。

 

 ボスモンスター「フェンリル」

 伝説級のボスモンスターとして公式に紹介されているボスモンスター。

 攻略サイトなどにも「チートボス」「無理ゲー」「でもかっこいい」と説明されている。

 レベルがカンストし、装備も超高級品でガチガチにそろえたトッププレイヤーが10人集まって、消耗品や課金アイテムをガンガンに使いまくってやっと倒せるほどの強力な存在。

 ビースト系どころか現在確認されているボスモンスター中でも最上位を争うようなボスモンスターの名前が、そこに記載されているのだ。

 これで驚くなと言われるほうが無理であっただろう。

 何しろ相手は強化状態のクレセントファングを遥かに超える強さのモンスターだ。

 少なくとも今のトライ達では、腕の一振りで全滅すらありえる相手なのだから。

 

「……『調査』ねぇ」

 

 トライのその一言にハッとするシャイン。

 そう、調査であるならば、必ずしも戦う必要はないのかもしれない。

 というかその方向であってほしい、絶対にそうであってほしい、むしろお願いしますぐらいの勢いでその言葉を信じ込むシャイン。

 

「じゃあよろしく頼んだよ」

 

 その心情を知るはずもないドロージは、イケメン優男の顔でにっこりと微笑むだけだった。

ビクビク・・・

ひょ・・・評価落ちるかな?

ダメだこりゃって呆れられないかな?


超がつくほどビビリな作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします


※2012/8/28

メタ発言を修正・・・するほどの内容は特になかった

※2012/9/13

文章を全体的に修正、内容には変化なし

※2013/2/4

ラージエイプ→マッスルモンキーに変更

エイプは尾の無い猿のことらしい

(情報提供ありがとうございます!)

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