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第30話・つまりテンプレとご都合主義ってわけだ

なんとかアップできたぞぉ~っ!!!


内容はタイトル通りです、はいはいテンプレテンプレ

 3日。

 

 まだ3日という人もいるし、たった3日という人もいるだろう、すごく……3日でした……という人も、いないか。

 

 しかし長いという意味の言葉で飾るばかりではなく、短いという意味の言葉で飾る人もいるだろう。

 

 例えば地獄の門が開いたかのような大量のモンスターの群れを、恐れるでもなく淡々と流れ作業のように戦い続けているこの三人がまさにそうだ。

 

「はぁ……」

 

 憂鬱げな表情を隠そうともせず、トロンは溜め息とスキルを吐き出した。

 

「余所見してんなよっと!」

 

 火系魔法スキル『フレイム』によって次々と停止していくモンスター達。

 しかし魔法に対して強い耐性を持つレッサーデーモンが、炎の壁を突っ切ってトロンに迫ろうとした。

 

 レッサーデーモンの鋭くとがった爪が、トロンの柔肌にぷつりと音をたてて食い込む……なんてことは全く無い。

 実際にはトロンとレッサーデーモンの間に割り込んだトライが上段から真っ直ぐに降り下ろす攻撃によって、マンガよろしく真っ二つに切り裂かれて体がズレていく、という図になっている。

 

「気持ちはわかるけど今は集中してくれ、トロンが頼りなんだからね」

 

 ドチャ、という肉の潰れるような音をたて(トロンは聞こえない)、近くによってきていたゴブリンディガーを倒しつつ話しかけるシャイン。

 

「うん……ごめんね」

 

 謝ってはいるが、トロンの落ち込んだ様子は変わる様子が無かった。

 

 いつもと明らかに違うその態度にはもちろん理由がある。

 いつもと違うのはなにもトロンだけではない。

 フレイムを抜けてきたレッサーデーモンにしても、普段ならトライがきっちりと倒しているはずだ。

 そもそもゴブリンディガーがトロンやシャインに手を出せるほどまで近づけさせるようなこともしない。

 シャインにしたってトロンが嫌がるような音が出るとわかっているのに、彼女を助けるためとはいえその近くで攻撃なんてしない。

 

 レベルがあがったから慢心している、慣れているから油断している、簡単には死なないから多少は平気だと割り切っている。

 

 それらも理由の1つではあるのかもしれない。

 

 しかし彼らの状況を知れば、それらは理由の1つではあるものの、根本的な原因では無いと理解できるだろう。

 

 理由。

 

 それは冒頭に戻ることとなる。

 

 3日。

 

 まだ3日という人もいるし、たった3日という人もいるだろう、すごく……3日でした……という人はやっぱりいないな。

 

 しかし長いという意味の言葉で飾るばかりではなく、短いという意味の言葉で飾る人もいるだろう。

 

 例えばこの三人にとって3日はどういう感覚になるか。

 三人ともこう答えるだろう。

 

 もう三日、と。

 

 

――――――――――

 

 

 リナと別れたあの日から、三人にとっては「もう」とつけるほどに短く感じられる三日が過ぎた。

 正確にカウントするならば、リナと別れた時間から正確に72時間経過したうえで翌日の朝10時になっていた。

 

 ネットゲームにハマった初心者が最初に迎える土日の午前中、今日は一日中ゲームだ!なんて意気込むのは経験者ならわかる気持ちではないだろうか。

 

 例に漏れずにきっちりと朝からログインした三人は、同じようにログインしているかもしれないリナを待ちはした。

 待ちはしたものの、待てど暮らせど連絡1つこないリナに不安を感じているのだ。

 

 説得に失敗し、仲違いでもしてしまったのかもしれない。

 それが原因でFGを辞めてしまったのかもしれない。

 

 いや、それならまだマシかもしれないというのがネットの世界における認識の一部だ。

 言葉巧みに誘導されて現実リアルの住所など、個人情報を話してしまった結果、殺人事件とまではいわないが、取り返しのつかない事態に陥ったという話がネット上で溢れている。

 

 さらには学校で全く会っていないという事実に加え、彼女の教室どころか学年さえ知らないままだ。

 まさかゲームで会ってないから心配なんですなどという理由で、わざわざ教師に教えてもらうわけにもいかない。

 

 ただただ不安だけが募っていく中で、その不安を払拭しようとひたすらレベルを上げる作業に没頭していたのだった。

 

 もちろん様々な理由も重なった結果、三人はふとした拍子に先程のような状態になってしまう。

 誰が見ても集中できていない。

 

 だから、彼らは気づかなかった。

 

 彼らがずっと、この炭坑に入った瞬間からずっと。

 蜃気楼のように一瞬揺らめいては移動し、透明ながらも歪んでいることがわかる謎の空間。

 人間一人がすっぽりと覆い隠されるような「それ」が、彼らの後ろをずっとついてきているということに……

 

 

――――――――――

 

 

 変化が起こったのは、最下層でメタルゴーレム3体と戦闘を開始した瞬間だった。

 もともとメタルゴーレムは最奥部にしか出現せず、同時に出現している数も少なく設定されている。

 とはいえ3体というのは不思議な状況というほどでもなく、1日1回くらいはあるかな?程度のことだ。

 弛んだ三人の思考はいつものことと思い、何を気にするでもなくいつもの通りに戦い始めた。

 

 だがその直後、彼らは安直な自分達の考えを後悔することとなる。

 

「お前達が悪いんだ」

 

 安全地帯セーフティーエリアと繋がる唯一の通路から現れた男は三人にそう言った。

 

 だが問題はそこではない。

 

 三人の下に辿り着く男の速さは尋常ではなかった。

 AGIに多く割り振ったプレイヤーだったのだろう、しかしそれも問題というわけではない。

 男が三人に発言したあと、同一マップ内にランダムで瞬間移動するアイテムを使ったことも、別に変な行為というほどでもない。

 

 では何が問題で、なぜ三人は後悔したのか。

 

 問題だったのは、男の後方から大量の「モンスター」が追いかけてきていたことだった。

 

 結果だけを言うならそれはMPKモンスタープレイヤーキルという行為だ。

 ほとんどのネットゲームでは禁止行為にあたり、罰則も利用禁止などそれなりに重いものになる。

 残念なのは、明確な証拠か現行犯でない限り立証が難しい行為であり、実際に処罰を受けるプレイヤーというのは意外なほどに少ないという現実だ。

 運営会社にとっても頭の痛い問題ではあるのだが、システムの仕様上どうしようもない、なんて珍しい話ではない。

 

「まずいっ! 逃げるぞ!」

 

 いち早くそれに気づいたシャインが声を上げ、撤退を促す。

 不測の事態だからという理由ももちろんあるが、1番の理由はモンスターの数が多すぎたからだ。

 どうやってかはわからないが、マップ中の全てを引き連れてきたのでは無いかというほどに大量のモンスター達。

 FGの仕様でモンスターが「重なる」ことが無いため、押し合い圧し合いしながら向かってくるモンスター達と接触するにはまだ余裕があることだけが幸いか。

 

「……『上等ぉっ!』」

 

「お、おい」

 

 しかし退くどころか、むしろ前に一歩を踏み出し、あまつさえスキルまで発動させたのはトライだ。

 

「最近はぬるい行動ばっかだったんだ、こんくれーが必死になれそうで丁度いい!」

 

 トライは必死になることで心のモヤモヤを忘れたかったのかもしれない。

 

「私達も付き合おっか、ね?」

 

 メタルゴーレム3体の向こう側に見えるモンスターの群れを見据え、杖を構え直してトロンはそう言う。

 

「トロンまで……」

 

 死は避けるべき、特に高レベルになればなるほどその意識は強くなる。

 理由はいくつもあるが、シャインは高レベルプレイヤーとして行動していたため、当たり前の判断として撤退を選んだだけだ。

 それ自体は間違っていないし、むしろ最も正しい判断とも言っていいだろう。

 三人の心境を考えなければ、と付け加えておけばだが。

 

「バカやりてぇ気分なんだよ、わかんだろ」

 

 もはや必殺に昇華しそうな強烈!ヤクザスマイル(キラーン☆)を決めるトライ。

 シャインは説得しようとして、諦めた。

 二重の意味でこれはもう無理、と。

 

 トライとトロンのやる気はもちろんだが、動きの遅いメタルゴーレム3体を巻き込んでモンスターの大群が目前にまで迫ってきている。

 今から二人を説得して逃げ出すには、あまりに時間が無さすぎる。

 

「『フレイム』!!」

 

「『いくぜおるぁぁぁあ』!!!」

 

 スキルを発動させ、戦闘を開始する二人。

 これから始まるのが果たして「戦闘」なのか「抵抗」なのか。

 恐らくは後者なのだろうなと思いつつも、シャインは二人を絶対に見捨てたりはしなかった。

 

「ま、たまにはバカになるのもいっか」

 

「呼んだか!?」

 

 バカという単語に反応するトライだった。

 

 

――――――――――

 

 

「なんでだ……」

 

 歪んだ空間からそんな呟きが響いた。

 前衛系からシーフへと転職し、さらに上位へと転職した職業であるアサシンのスキル『ミラージュスキン』

 プレイヤーが周囲の景色に溶け込んでいるように見えるこのスキルを用いて、トライ達をMPKしようとした男がまさにその三人を観察していた。

 

「なんで、あいつらはまだ死なないんだ」

 

 件の三人を見る目は、歪んだ空間となってどんな状態かわからない。

 しかし穏やかな雰囲気でないことは間違いないだろう。

 

 彼は最初の1度だけではなく、あの後何度もトライ達に気づかれずに大量のモンスターを連れてきている。

 最初の1度でさえ潰されて終わりになってしまいそうなほどの大群、念のためと再びモンスターを引き連れて来てみれば、奮闘どころか徐々に群れを削り取っていく三人の姿がそこにあった。

 

 スキルで引き寄せられたモンスターが『フレイム』に焼かれ、耐えたモンスターは投げられた武器によって撃墜されていく。

 増えたメタルゴーレム4体に囲まれても、絶妙な誘導と体捌きによってギリギリ死なないように避け続ける。

 避けるしかしていなくとも、男の周囲に浮かぶ使い魔らしき4体の(スキルレベル上がった)リビングウェポンがメタルゴーレムを攻撃し続け、他のモンスターが集まるころには再び『フレイム』が発動する。

 無駄に使い続ければすぐに枯渇するヒーラーのMPは未だに尽きる気配を見せない、メタルゴーレムの直撃にギリギリ耐えるだけのHPを回復させ、絶妙な位置取りで他の二人に決してモンスターが近づかないようにしている。

 気がつけばそれらは前衛のスキル範囲に誘導され、まとめて『フレイム』によって焼き付くされていく。

 

「なんでだ、悪いのはあいつらなのに、なんであいつらは死なないんだ」

 

 男は歪んだ空間を纏ったまま呟き、再び転移アイテムを使って移動した。

 再び大量のモンスターを引き連れてくるために、彼らが死ぬまで繰り返すと心に誓って……

 

 

――――――――――

 

 

「きちぃ! さすがにきちぃ!」

 

 メタルゴーレムの攻撃に晒され、必死に紙一重の回避を連発しながら避け続けるトライ。

 

「MPがそろそろまずいよっ!」

 

 座り込み、じっとして必死にMPを回復させるトロン。

 戦闘中に座るなんてと思うかもしれないが、いっそ動かずにいてくれたほうがいい場面というのは少なくない。

 で、あれば、MP回復に補正がかかる座るという行為は限り無く正解に近い。

 

「くそっ、キリがないな……」

 

 高レベルでの経験があるシャインは、小技を駆使して必死にMP節約と援護をしてはいるものの、所詮はまだ1度の転職しかしていない低レベル帯のキャラクター。

 無限のように感じるMPなどあるわけもなく、時間がたつにつれて確実に減っていくMPに焦りを感じていた。

 

「しつけぇ野郎だな、俺らが死ぬまで続けるつもりか?」

 

「多分……よっ」

 

 トロンが立ち上がり、再び『フレイム』を使おうと口を開ける。

 

「待てっ!」

 

 歪んだ空間がトロンに高速で近づいていった。

 一瞬早く気づいたシャインが声をあげるも、声を出すころには歪みはトロンの背後に到達し。

 

「『フレ』もがっ!?」

 

 突然現れたアサシンの男がトロンを後ろから抱くようにして押さえ込み、左手で彼女の口に封をする。

 音声コマンドによって発動するはずのスキルは中断され、殲滅されるはずだったモンスターの群れはトライに襲いかかろうと歩みを進め続ける。

 

「悪いヤツは、死ねばいいんだ」

 

 それだけ言った男は、シャインに捕まえられる前に再び『ミラージュスキン』を発動させて逃げ出した。

 

(まずいっ! 今から詠唱しても間に合わない!)

 

 男から解放されたトロンがすぐさま『フレイム』を発動させようとするが、恐らく発動するよりも先にトライが押し潰されるだろう。

 

 トライが死んでしまえば後はどうしようもない。

 前衛のいない魔法系二人など、使い捨ての大砲程度の意味しか無い。

 よくて1度の攻撃、それが終われば何もできずに死んでしまうだろう。

 

 バカなトライもそれくらいの予想はついている。

 

 だから必死に考える。

 

 男がトロンの行動を妨害した瞬間から。

 

 必死に手だてを探す。

 

 例えその辺に落ちている石ころでもいい、それが打開策になるのなら。

 

 必死になんとかしようと、希望を探す。

 

 例え自分が死んでしまったとしても、なんとか二人だけは無事で済む方法を。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 刹那のような時間の中で、トライは何かを「見た」

 

 それがなんだったのかは誰にもわからない。

 トライ自身、何かと聞かれれば明確に何だとは答えられないだろう。

 

 しかしトライは確実に何かを「見て」、そして的確に対応した。

 

 難しいことなど何も無い、ただ後ろに下がるだけだ。

 不用意と言えるくらいに、後ろの二人を巻き込んでしまうほどの距離まで。

 その行動の結果、トライを追ってくるモンスターの群れは。

 

 「一直線」になっていた。

 

 

 キュン

 

 

 胸が高なる!……わけではない。

 いつか見た光景が、トライの目の前で再現される。

 

 あの時と違うこともある。

 薄っすらと青く光っていた矢が、今回のものは矢を隠すほどにはっきりとした青い光となっている。

 それは強化されたことを目に見える形にしたかのようで、事実それは先日よりも明らかに強かった。

 

 どんなに強くても矢の形でしか攻撃判定の無かった矢は、青い光そのものが攻撃判定になったように幅広くなっていた。

 横に並んだ3体を同時に吹き飛ばし、かつてのように止まることなく貫通して次々とモンスターを葬り去っていく。

 

 やがてトライの一人分だけ横にずれた位置を通り抜け、かつてと同じように壁に激突して矢はその役目を終えた。

 

 その矢は、と続ける必要があるが。

 

 

 キュンキュン

 

 

 再び放たれる矢が2本、やはり同じ結果を残しながら次々とモンスターを葬り去り。

 もはや諦めるしか無いかという劣勢をあっさりと覆した。

 あとに残るのは青い光に当たっても倒れなかったメタルゴーレムが3体と、トライが一人でも倒せる程度に残った雑魚のみ。

 

 モンスターの群れがほとんどいなくなったことにより、その攻撃を行った人物がいる安全地帯セーフティーエリアとの連絡通路が三人の視界に移る。

 

 そこに立つ人物。

 たった3度の攻撃でモンスターを殲滅したその人物。

 それは彼らが待ち望んだ人物だ。

 

「へっ、遅ぇんだよ」

 

「えへへ、ごめんなさいっ」

 

 リナという名前のプレイヤーが、そこに立っていた。

若干中途半端ですがこれで第三章は終わりです


次回のアップはいつになることやら・・・


※2012/8/28

メタ発言を修正

全体的に若干修正、これはそんなにひどくなかった

※2012/9/12

文章を全体的に修正、内容には変化なし

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