第2話・つまりわからんことは人に聞けばいいということだ
2話目です、実際ログインするのは次話です
幼馴染が美少女・イケメンはテンプレですよね
「というわけで、教えてくださりやがってくれてもいいんでございますよコンチクショウが」
「まず言葉使いから学んでこい、話はそれからだ」
三神の自室、6畳ほどの部屋に収納付きのベッドと勉強用のデスク、デスクの上に乗っているパソコン。
一見すればそれ以外何もないように見える殺風景な部屋で、二人の男がそんな会話……? 会話らしい問答をしていた。
「……」
「……」
無言でにらみ会う二人。
なにも知らない他人が目撃すれば、背景に龍と虎と丘と海の荒波と雷が荒れ狂い、ゴゴゴとかピシャーンとかカッとかの擬音が見えたに違いない。
三神の自室であるので誰も見ていないが。
相対する龍と虎……いや二人の男は、片方が三神である。
もう片方の男はイケメン。
イケメンの説明など不要であろう、イケメンはイケメンという言葉だけで全てが説明できる。
イケメンがどれだけイケメンかなどと説明するのはイケメンではない人への冒涜だ、言いすぎだが。
このイケメンこそが三人組の一人、「光明院輝明」である。
ちなみに三神はこの名前を内心でどんだけ光りたいんだよと思っている。
名前の漢字5文字中4文字が光る系の漢字だからというくだらない理由だが。
しかし名前の通り、彼の人生は輝かしい。
ろくに勉強しないくせに聞いた授業内容は完璧に理解して覚えている。
トレーニングなんてろくにしないくせに運動部のエース連中なみの能力を持つ。
町を歩けばモデルやらないかと声をかけられ、女性と目が合えばハートをド☆キュン。
「で? なんでまた急にFGやろうなんて言い出したんだ?
お前そういうのほとんど興味なかったじゃんか」
テルが三神に告げた通り、今まで三神はほとんどこういったゲームの類をやったことがない。
やる暇が無かったというのも理由の一つではあるが(主にテルと綾華が原因で)、ゲームより現実で活発に動くタイプの人間だったからという理由が大きい。
どんなクラスにも一人くらいいなかっただろうか? ゲーム類をほとんどやらなかった子。
三神は特に不良グループの頂点にいるような男だったため、ゲーム好きな一般青年は声をかけずらく(というか近寄ることすらできず)、女性はそもそもゲーム類をやっている人口が少なく、要するに縁が無かった。
それが急にそれをやると言い出すのだから、テルにとっては趣味を共有できて嬉しいような不思議なような、といったところだった。
「理由なんざどうでもいいだろうが、とにかくやり方を教えてくれやがりませ」
「うむ、言葉使いを諦めたほうがいいのは理解した」
はぁ、とため息をつきながら、三神のデスクにぽつんと置いてあるパソコンの電源を本人の許可なく勝手に立ち上げる。
「待て」
パスワード入力画面をさも当然のように入力し、デスクトップが立ち上がったところで三神がつぶやいた。
「なんでてめぇが俺のパソコンのパスワード知ってんだよ!?」
あまりに自然に入力していたことで、三神も気づくのが遅れてしまった。
「俺がお前たちのことで知らないことなんてあるわけないだろ」
「て、てめぇ……(ピキピキ)」
事実その通りであるからなんともいえなかった。
綾華のスリーサイズまで知っているとは本人の談。(言おうとすると何故か超常現象の類が発生するので、テル以外は誰も知らないが)
「インストールは終わってる?」
「あぁ、綾華にもらったからな」
「んじゃ公式サイト見てないのか?」
「俺が見ると思うかよ?」
「デスヨネー」
三神は説明書を読まずにゲームをやるタイプである。
当然公式サイトどころか、Wikiなども全く見ていない。
そのためどうしても必要になるいくつかの手順を行っておらず、ゲームの起動がそもそもできないでいた。
その結果知ってるやつに聞けばいいという判断のもと、こうしてテルを呼び出して冒頭にいたるというわけであった。
「それにしても綾華絡みか、お前もほんと好きだなぁ」
「誰のせいだと思ってんだこの天然トラブルメーカー」
ちなみにテルは綾華が自分ではなく三神を好きだと思っている。
実際一緒にいる時間は綾華と三神のほうが長いし、普段から仲良く何の気遣いもなく話しているところを見れば、そう思ってしまうのも仕方が無いかもしれない。
自分に対してはどこか気を使っている綾華と、三神と自然に笑い合って話す綾華。
自分が入り込む隙は無いなと思い、二人には内緒で影から応援することを決めていたのだった、大体小学生くらいのころから。
「あれ、ってことは綾華もやるの?」
「あぁ、なんか用事があるから明日から~とか言ってたぞ
どうせだからおめーまとめて面倒みてくださりやがれ」
「あぁそうだったんだ、先に言ってくれればよかったのに。
おーけーおーけー、明日からな。
……よし、準備できた、ヘッドセットつけて」
「おう」
言われて三神はベッドの上に無造作に放り投げられていたヘッドセット、ヘルメットのハーフタイプのようなものを被る。
これがVR系のゲーム機に必要なもので、電波とか脳波とか電気信号なんちゃらかんちゃらをうまいこと使って脳に直接信号を送る「らしい」
詳しい原理は知っている人のほうが少ないので、「そういうものだ」と思っていただければ問題ないと思う、多分。
「スキャン開始するぞー、大人しくしてろよー」
「ガキじゃあるまいし、そのくれーわかってるっての」
ヘッドセットから何かが侵入してくるような、一瞬ゾワッとする感覚がする。
VR系特有の感覚で、何も知らない人が初めて体験すると気持ち悪くなってしまうらしい。
三神も例に漏れず気持ち悪くなりそうだったが、テルに反抗してしまった手前気合でなんとかねじ伏せる。
「うへぇ、気持ちわりぃ」
「すぐ慣れるって、できるだけ何も考えないほうがいいぞ」
「まかせろ、何も考えないのは得意だ」
「うん、逆にまかせられん」
テルがつっこみを入れたにもかかわらず、すぐに自然体となって無心になる。
「スキャン終了、んじゃ一回外してこっち来て……起きろボケェ!」
スパーンと小気味よい音をたててテルのツッコミが三神の脳天にクリティカルヒット!
「ぬあっ!?」
「なぜあの一瞬で寝れる!?」
三神が持つ特技の一つ、「一瞬で寝る」が発動した。
文字通り一瞬で寝れる、眠ろうと意識した瞬間に寝てしまうという必殺の一芸。
これが一番無心になれると思っての判断だったらしいが、どうやらやりすぎてしまったらしい。
「もう終わりか?」
ヘッドセットを外しながら、テルが操作しているパソコン画面を覗き込む。
そこには三神をひょろひょろにして全裸にしたような微妙に人間じゃないとわかる3Dのキャラクターが存在していた。
「これからアバターの見た目変更していくから、どちらかと言えばこれからが本番かな?」
「んなもん同じでいいだろ、こまりゃしねぇよ」
「そう楽観視できるもんでもないぞ?
確かに大きく変更することはできないからわかるヤツにはわかるけど、リアルと何もかも同じだと問題が起こりやすいんだよ。
例えばそうだな・・・ジュウだったらリアルでぶっ飛ばしたヤツに因縁ふっかけられるとか……」
「そんなヤツはぶっとばしゃいいだろ」
「おいおいゲームだぞ、リアルならともかくゲームの中じゃキャラの成長具合が強さに直結するんだよ。
やり始めたばっかのお前が勝てるような相手じゃないと思うぞ?」
「そういうもんか?」
「そういうもんだ」
「じゃあいいや、めんどくせぇからまかした!」
「ほほ~う?任せてくれるんだね?」
テルの名前、光明院輝明の光り輝かんばかりのその文字とは真逆。
真っ黒で地獄のような闇のオーラがテルから立ち昇る。(ように見える)
「・・・え?」
「そうかそうか~、まかせてくれるのか~。
いや~一回やってみたかったんだよね、自分でやるのは抵抗あったし」
「おい?何をやろうとしてやがりますかてめぇは?」
「ふっふっふっ、性転換できるなんて楽しそうだよね~。
どうせだから綾華なみのプロポーションで作ってみたいもんだねぇ~、フフフフフフフフフ」
「やめろおおおおおおおおお!?!?!?」
――――――――――
「・・・こんなもんか」
結局隣で指示という名目のもと、変なことをしないように監視しながら作成していました
「身長同じ、体重も同じくらい、体格はまぁ若干スリムだけどゲームを進めればその辺は多少変化していくから問題なし。
顔はイケメンにしといたからな!感謝しろよ!」
「アリガトウゴザイマシター」
「性転換いっとくか?」
「ありがとうございました輝明様! あなたのお陰で残りの人生超ハッピーでございます!」
アバターの見た目を説明させていただくと。
身長182センチ、体重74キロと若干痩せ方。
筋肉質の肉体は線が細く、ソフトマッチョとギリギリ言えなくも無い体つき。
顔はまぁイケメンだが、元々がそうなためか、睨むようなキツイ目元が若干怖い。
テル曰く「このくらいは普通にいるから大丈夫だろ」とのこと。
さらに「どうせなら普段できねー見た目がいい」という三神の要望を受けた結果。
髪の毛は真っ白な白髪で、肩の上あたりまでかかるほど長くしている。
目には人類に(というか生物に)ありえない黄色と赤と青の粒子のようなものが黒い瞳孔に散りばめられている。
どう見ても厨二病です、本当にありがとうございました。
「体格って変わんのか?」
テルの言っていた言葉に素直な質問をぶつける。
「変えないこともできる、変えられる範囲が広がるって言えばいいかな?
今はこれが限界だね」
「まぁそんとき聞きゃいいか」
「まぁそれでいいよ、あとは適正装備っちゅーもんを最初一個だけ選べるんだけど、どれにする?」
「何があんのよ?」
「初期装備だと……えっとこれだ、この中からどれか一個」
そういってパソコンを操作し、キャラクターの横にあったアイコンを選択する。
するといくつもの武器の画像とともに、それぞれの簡単な特徴が表示された。
片手剣:片手で使うタイプの剣。攻撃力は普通だが小回りが利きやすく、初心者向け。空いた手に盾やもう一本剣を持てるので、装備の融通が利きやすい。
両手剣:両手で使うタイプの剣。攻撃力は高いが小回りが利かない、両手を使用するため、装備が制限されやすい。上級者向け。
その他片手槍・両手槍・鈍器・斧・弓・杖・鞭などなど。
ちょっと数えるのがめんどくさいくらい種類があったので、三神は上の二つを読んだあたりで諦めた。
「多すぎるわっ!」
「それが楽しいんじゃないかっ!」
テル曰く、多種多様な武器の組み合わせと連携が心を熱くさせる! らしい。
「じゃあ両手剣で」
めんどくさいのでとにかく攻撃力が高そうなものを選んだ、シンプルイズベストである。
「じゃあ次、適正職業」
「まだあんのかよ!?」
「こっちは難しくないよ、前衛・後衛・魔法の3種しかないし」
「じゃあ前衛」
「ですよね、っと」
実際には両手剣を選んだ時点で前衛を選ぶのが普通なのだが、わざわざ言うほどでもないので黙っておくテル。
「あとはデータをヘッドセットに送信完了すれば、いつでも開始できるよ」
「ほうほう、どんくれーかかるもんなんだ?」
「ん~、3時間ってとこ?」
「長っ! 思ったより長っ!」
「何言ってるんだ、世の中には24時間かけて終わらなかった人だっているんだぞ」
「どんだけだよ! どんだけ作り込んだんだよ!」
ちなみにその人は累計48時間かけてアバターを作り上げたらしい。
「はぁ~・・・、まぁいいや、今から3時間じゃ夜10時だな。
寝ちまうかもしんねぇし、明日綾華にあわせてやり始めるか」
「そうか?10時くらいだったら俺もいるだろうから、気が向いたら連絡してこいよ。
俺の連絡先データいれとくな」
「おう、気が向いたらな。
飯食ってくか?」
「ご馳走になってやってもいいでございやがりますよ?」
「OK、ちょっと表でろや」
馬鹿な会話をしつつ、結局普通に漢の手料理を食べて帰ったテルであった。
完全に余談だが三神は両親が海外出張の多い仕事についているため、家事全般が完璧にできる。
漢の手料理はその辺の女子より美味いという理由で、しょっちゅうテルと綾華が食べにくる。
周囲からは綾華が親のいない三神をかわいそうに思って料理を時々作ってあげに行っていることになっていて。
「綾華様なんてお優しいんだ!」か「三神死なす! 綾華様の手料理食べられるなんて羨ましすぎる!」のどちらかの意見しか聞けない。
ちなみにイケメン君とヒロインもリアルの顔を詳しく描写する予定はありません
人間イメージって大事だよね!
※2012/8/27
テルのイケメンに関する部分がメタ発言っぽかったので修正
その他、地の文を本当に若干修正
※2012/9/4
文章を全体的に修正、内容には変化なし