第19話・つまり魔法は強かったってことだ
ゲームによって違いますけどね
大概のゲームでは強いです
「ゴーレムッ!」
戦闘が始まってから結構な時間を戦い、トライはもはやメタルゴーレムの動きをほとんど把握していた。
「遅ぇ! 足下も注意だっ、ぜっ!?」
雄叫びをあげながら再び突進するメタルゴーレム。
右手を十分に引き、突進の勢いを加算した強烈な右ストレートを放つつもりのようだ。
しかし悲しいほどの接近速度のせいで、トライへと近づくころにはバレバレな攻撃である、接近速度と比較してありえないほどの速さで腕が振るわれることを除けば。
しかしトライは足が遅い=攻撃が遅い、なんて常識に捕らわれて痛い目を見た記憶がある。
事前に余裕を持って避けることに専念したため、しっかりと避けることができた、これが相手をナメていたらまともにいいパンチをもらっていたところだろう。
体の正面に剣先を地面に向けるように構え、両手剣を盾にするように側面の腹部分をぶつけながら流れに逆らわず、メタルゴーレムの拳を右に逸らしながら自分も右回転する。
同時に姿勢を低くしていき、メタルゴーレムの足、膝の裏に狙いを定めて思い切り斬りつける。(残念ながらどんなに勢いがあっても「たたかう」だが)
膝の裏を叩かれ所謂膝かっくん状態になり、後ろへと姿勢を崩しそうになる。
「ゴレッ!? ゴ、ゴーーーレムゥゥゥ!!!」
膝の裏を叩かれ所謂膝かっくん状態になり、後ろへと姿勢を崩しそうになる。
そのまま倒れるかと思われたゴーレムはしかし、脅威の身体能力で無理矢理に反撃をしてくる。
かっくんされた足に踏ん張り超力を入れる、右足一本で体を支えるくらい力を入れ、逆に左足を一歩下げる。
さらに上半身を拳の勢いを乗せたまま左へとひねる!一回転したことでさらに増した勢いを持って、右へと剣を振り切って対応できないトライに振り下ろすようにして会心の一撃をお見舞いした! (どんなに勢いが略)
「なっ!? ぐぁっ!」
まともに上方から潰されるような攻撃だったが、間一髪でなんとか後ろへ半歩ほど下がることに成功するトライ。
しかしそれだけでしかなく、ダメージを減らすことには全く影響しない。
影響したのは地面に叩き潰されるように倒されるはずが、後方に大きくノックバックさせられることに変わったくらいだった。
バカみたいに最初の受け止めた一撃と合わせ、8000近くあるトライのHPはその3割程度まで減少してしまった。
「ゴレムス!」
「ド○クエかっ! 今のなろうでその手のネタは危ねぇんだぞっ!?」
「ゴレッ!? Σ( ̄□ ̄;)」
「今のてめぇは存在自体が危ねぇんだよっ! とっとと倒させてもらうぜ!」
「ゴレッ! (`Δ´)三3」
「うるああぁぁぁ!!」
「ゴーーーレム!!」
メタルゴーレムの危ない台詞とそれに対するツッコミももはや何度目かになるやりとりで、実はゴーレムの中身いるんじゃないかとさえ思う漫才のあと、二人は再び肉体言語の海に頭からダイブインだった。
「だらっしゃあ!」
「ゴッ!」
――――――――――
さらに5分ほど経過する。
装甲値の効果音はすでに最低らしき状態に変化しているのだが(ゴツンという金属よりも石を叩いたような音)、一向に倒せる気配が無い。
「おいシャイン! こいつはどんだけ硬ぇんだ!?」
こんなときは頼れる頭脳担当、シャインの出番である。
さすがベテラン、思い当たる要素の中から最も適当なものをすぐに言い当てる。
「多分単純に攻撃力不足じゃないかな?
装甲値も高いけど防御力も高いからダメージになってないんじゃない?」
FGでは装甲値と防御力は別のものである。
お互いに影響するので完全に別物というわけではないが、少なくともダメージの計算では別々に計算される。
例えば1000の攻撃をされたとする。
まず先に装甲値が計算され、装甲値が複雑な計算式のもと上回っていれば無効になり、下回っていればダメージが入る。
しかし下回っていても、そのダメージは防御力によってさらに減少することになる。
例えば1000のダメージが通っても、防御力によって8割減少すれば200しかダメージにならない。
装甲値の計算が先にされるためなのか、防御力によって与えるダメージが装甲値以下になったとしても無効化されたりはしないのが救いではあるが。
このため、例え装甲値を上回っていても簡単に倒せる相手というのは意外と少ない。
ついでに言うなら、メタルゴーレムは装甲値・防御力ともに高い部類に入り、少なくとも魔法以外でレベル20帯がまともにダメージを与えることはできない。
それはトライが熟練度とやっちゃった系のSTRをもってしても超えられない壁だった。
「装甲値はもう十分に減少してるだろうし、いい加減こっちも参戦したいところだけどいいかい?」
「頼んだ! 攻撃力不足じゃどうしようもねぇ!」
「出番!? 私の出番!?」
嬉々として杖を掲げるトロン。
溜まっているものがあったのか、単純に自分が活躍したいだけなのかはわからない。
恐らく正解は活躍する自分をシャインに見せたい、なのだろうが。
「ああ、出番だ。
よろしく頼むよトロン」
「よーっし、いくわよー!」
頭の中のスキルに意識を向け始めるトロン。
スキルのスイッチを押し、魔法スキル特有の「詠唱状態」に入る。
これは簡単に言えばダウンロードのようなもので、スイッチを押した瞬間に本人の脳内だけに詠唱バーが出現する。
これが100%になってから一定時間(スキルによって違う)内に、使用対象もしくは使用範囲の中心を意識することで魔法スキルが発現する。
「やってくれ! 俺に当てんなよっ!?」
ダメージは無い、無いのだがやっぱり人間怖いものは怖いものである。
トロンがフレイムを覚えた直後に一度巻き込まれたことがあるトライなのだが、いきなり炎に周囲を包まれたら誰だってビビると思う。
一時はあまりの過激さにショック死の危険が噂されたことがあったのだが、一応システム側で補助というか制限のようなものがかかるようになっているので、FGでとんでもないエフェクトの魔法に巻き込まれても現実でショック死するようなことは無い。
しかしたとえわかっていても怖いものは(略)
「だが断る!」
「断んなよっ!?」
「『ファイヤーボール!』」
トロンの頭上に人間の頭くらいの火球が生まれる。
メタルゴーレムをじっと見つめ、「対象」を「指定」すると同時に火球はメタルゴーレムめがけてまっすぐ飛んでいく。
「ゴッ!?」
狙いたがわず、腕を振り上げていたメタルゴーレムの顔面に火球がぶつかる。
赤く熱された顔面は黒く焦げ後が残され、心なしか一部が溶けたように歪んだ。
「ゴォーーー!」
「てめぇの相手は『こっちだ!』」
火球の飛んできた方向へと振り向き、トロンへと狙いを変えようとした瞬間にトライが「威圧」を発動させる。
それと同時に腹部へと横薙ぎを叩き込み、僅かなダメージと共に再び狙いをトライへと向けさせた。
「結構なダメージになってるみたいだね。
次はフレイムでやってみようか」
「はいは~い、それじゃあ詠唱開始するよ」
「俺に当て「だが断る!」最後まで言わせろよっ!?」
再び詠唱状態に入るトロン。
メタルゴーレムも気づいてはいるようだが、トライの壁に阻まれてどうしようもない状態になっていた。
二人の加勢によって一気に傾いた状況を、メタルゴーレム単体で覆す手段は残念ながら無かった。
――――――――――
「さくっと倒せたな……」
トロンの魔法が見た目以上にダメージになっていたらしく、メタルゴーレムはあっさりと倒された。
トライの努力はなんだったのかと言いたくなるほどにあっさりである。
「まぁでも動きも大体覚えられただろ?
実際にはここに雑魚が乱入してくるわけだけども、なんとかなりそうかい?」
「ああ、そりゃ問題ねぇ。
メタルゴーレムが複数だときっちいが、他のヤツならなんとかなんじゃねえか?」
「あとはトロンの魔法次第か……いけそうかい?」
「蝙蝠男さえなんとかしてくれれば大丈夫かな?」
レッサーデーモンのことを言っているらしいが、実際蝙蝠男にしか見えないのだからそう言いたい気持ちはわかるというものだ。
デーモンという名の通りレッサーデーモンは悪魔系のモンスターである。
だからというわけではないが、FGの悪魔系モンスターは総じて魔法に長けていることが多い。
肉体的なステータスが弱いわけではないが、魔法防御や魔法攻撃の威力が高めに設定されているのがほとんどだ。
そこだけ見れば場違いなほどのステータスを誇っている場合もあり、悪魔系というだけで何かしら対策はするべき相手というのがプレイヤー間の認識である。
レッサーデーモンはその中でも最下位に位置するモンスターではあるが、やはりというか魔法防御がマップ内の平均と比べると場違いなほど高い。
魔法で一掃するプレイスタイルで戦おうとすると、どうしても生き残ってしまうような敵のため、魔法職だけでこのマップに来るのはかなり難しい。
しかし魔法職以外では大量の雑魚うざい、メタルゴーレム出てきたらさらにうざい、しかも経験値少ない。
そのためほとんどのプレイヤーは地下1階か2階に留まることがほとんどで、トライ達のような特殊な状況でない限り地下3階には滅多に誰もこない。
逆に言えば現在のトライ達は回りを気にせず好き放題戦えるということになるのだが。
「まぁ、あいつはなんとかするよ、トライが」
「人任せかよっ!?」
「さっ、行こうか」
「スルーかよっ!?」
シャインはにっこり笑いながらトライを無視して進んでいく。
トロンが「は~い♪」なんて言いながらニコニコしてシャインについていくので、トライは発言そのものが空気が読めない状況になってしまっていた。
要するに置いてけぼりである。
「なぜだ、なぜ俺が負けたみてぇになってんだ」
OTZの形にうなだれるトライだった。
――――――――――
「だあああらああああぁぁぁぁぁ!!!」
安全地帯を抜け、メタルゴーレムが出現するエリアで戦闘を開始したトライ達。
長らく放置されていた影響なのか、そこは地獄絵図のような状況になっていた。
巨大な空間に所狭しと存在するモンスターの群れ、マップ毎にモンスターが同時に出現していられる最大数というのが設定されているが、それを考えても多い。
恐らく最大数に達していたところにトライ達が倒して回ったせいで、このエリアに集中して出現してしまったのだろう。
もはや三人の前にあるのはモンスターの壁である。
きっちりメタルゴーレムも混ざっているし、レッサーデーモンも結構な数がいる、ゴブリンディガーとバットはもう数えるのもめんどくさいくらいいる。
一体を倒した瞬間、津波のように襲い掛かってくるモンスターの群れをなんとか威圧で引き寄せながら、トロンの魔法スキルを待つしかないのが現状だった。
「詠唱終わったよ! トライ!」
「無理だ!余裕がねぇ! 俺ごとやってくれ!」
場面が違えばかっこいい台詞だったかもしれない。
本人達は必死でそんなこと考える余裕さえないだろうが。
「わかった! 『フレイム!』」
範囲の中心をトライの足元に設定し、トロンの魔法スキルが発動される。
炎の噴水が出現し、トライの周囲にいたモンスター達が次々と焼かれて停止していく。
「ゴレッ!」
「ゴーレムッ!」
「ギャース!」
運悪く範囲内にメタルゴーレムが2体と、複数のレッサーデーモンが入っていたようだ。
フレイムをくらってなお生き残ったそのモンスター達が、高ダメージを受けたことにより狙いをトロンへと変更する。
顔がトロンへと向いた瞬間。
ボッという音が2回響き、炎の中から歪んだ両手剣が2本レッサーデーモンめがけて飛び出した。
失敗作である歪んだツーハンドソードは、それぞれが別のレッサーデーモンにぶつかり、レッサーデーモンを空中で停止させた。
さらに音は止まらず、連続して同じように失敗作が炎の中から飛び出してくる。
3体・4体・5体・6体……
フレイムをくらっていないレッサーデーモンにもそれは向かっていき、倒すとまではいかないもののかなりのダメージを与えることに成功したようだ。
「どこへ行こうとしていやがる……」
ゆらり、という擬音が聞こえそうな影が炎の中に浮かび上がる。
黒いシルエットしか見えないそれは、まるで悪魔の如く恐怖を感じさせるような姿だった。
そこだけを見たならば、そのシルエットの主が初級装備しかしていない初心者だとは誰も思わなかっただろう。
「『てめぇらの相手は俺だ!』」
「威圧」スキルが発動し、歩き出し始めていたメタルゴーレムも足を止めて向き直る。
やがて炎がおさまってゆくなか、ゆっくりとその中心にいた人物に向かって改めて歩き始めた。
「行くぜ」
その中心にいた人物は、笑っていた。
最近ナレーションが自由すぎる・・・
どうしてこうなった
※2012/8/28
メタ発言を修正
結果あとがきが意味不明なものに変化、面白いのであえて放置
「頼れる頭脳担当~」付近を修正
装甲値と防御力の関係の部分を若干加筆・修正
メタルゴーレムを倒した直後を修正
「人任せかよっ!?」付近の会話を大幅修正
※2012/9/6
文章を全体的に修正、内容には変化なし




