表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/52

第11話・つまり本番はこれからだってことだ

そう、やっと本格的な冒険・・・の準備です


何事も準備と情報が大切です(体験済み)

 前衛組合の受付、すごくモン○ンな待合所でトライと受付の男性が会話をしていた。


「話ってなんだよ?」


「話ってのは素材のことな、モンスターからとれた素材は商人に売ってもいいけど勿体ない場合があるから言っとこうと思ってな」


 めでたくソードマン・ベネフィットに転職したトライは、そのままシャイン・トロンの元に行こうとして受付男性に引き留められた。

 話の内容は上記のものだったが。


「勿体ねぇ? 売る以外に使い道あるってことか?」


「たくさんあるぜ。

 そもそもモンスターってのはある種の金属みてぇな成分を全身に含んでてな、当然差はあるが加工して装備品が作れるんだよ。

 んで、そんな理由があるからここか商人組合に持ち込めば正規の値段で買い取ってくれるぜ。

 もちろん自分の装備を作成・強化したいってんなら工房の貸し出しも有料でやってる」


 今はいっぱいだけどな!

 と付け加える受付男性。

 そういえばと思い、改めて自分の装備を考えてみようと思い、諦めた。


「考えるも何も初期装備じゃねぇか」


「そういうこった。

 転職したのにそんなショボい装備じゃかっこつかねぇだろ?

 自作するにも最初はお前さんが持ってるのと同程度か、むしろ程度の低いヤツしか作れないからな。

 素材をある程度売ってくれりゃ、いくつか武器も渡せるぜ」


 聞くような言い方をしながら受付男性は手元に一つの紙束を置く。

 どうやら武器リストらしいそれを見ている辺り、彼の中ではもはや確定事項に近いらしい。


「あぁ、代理販売ここでもやってるんだ」


「代理販売って何?」


 話が気になったらしいシャインとトロンがトライの後ろから覗き込み、気になる言葉を発する。


「FGだと直接取引以外でアイテムを売れるのは商人系だけなんだよ。

 しかも1アカウント1キャラだからアイテム移動がめんどくさくてサブキャラでわざわざ作る人も少ない。

 それで製作側がプレイヤーの要望に答える形で実現したのが代理販売」


「それって商人系の意義が無くねぇか?」


「いや、販売してくれるのは自作の装備品だけだからそうでもないよ。

 このゲーム装備品は作れてもアイテムは自作できないからね、レアアイテムとかドロップ限定の装備品も同じく代理販売はしてくれないし」


 FGはシャインの言う通り、装備品に関しては素材と適切なアイテムと場所さえあれば誰でも作れる。

 専用のステータスと熟練度が必要だが、作ること自体はわりと簡単に可能だった。


 そこに楽しみを求めるプレイヤーも結構な数がいるが、当然それが商人系の職業についているとは限らない。

 商人系が多いのは事実ではあるが。


 作れる装備品は基本的に制限は無い、しかし適性を持たないものを作ろうとすると成功率も性能もバカにできないほど低下するので、普通は自分用のものを作る。


 しかし新しいものに乗り換えれば、古いものは売るか捨てるかしかない。

 NPCに売っても使った素材以上の値段になることは無いが、かと言って捨てるのはもったいない。

 そういった事情から製作側に多数の要望があげられた結果、実装されることとなったシステムだ。


「なるほどなぁ、んじゃさっそくなんか見るか。

 掘り出しもんがあるかもだしな!」


「ふむ、しかし代理販売は基本頼んだ場所にしか置かれてないから、ここに預けてる人は少ないんじゃないか?」


「兄ちゃん、そいつぁこのリストを見てから言いな」


「どれどれ……

 結構あんな、全部両手剣か?」


「そりゃ両手剣のページ開いてるからな、お前バカだろ?」


「じゃかぁしい! 自覚はあんだからほっとけ!」


 ズラッとリストに羅列された文字群は、軽く20個以上はあるように見える。

 普通の代理販売、特に人気の場所では1種類の武器でも100個以上平気で並ぶため、別段多い数字ではない。

 しかし転職の時以外ほとんど人が来ないような場所なのに、一体誰がこんなに卸しているのかがシャインには気になった。


「銘は……『フィーネル』……?

 あれ、これってNPCじゃなかったかな」


「NPC? NPCの鍛冶師が作ったアイテムってこと?

 そんなことってあるのかな?」


「いや、俺が知る限り無い。

 確かにフィーネルはイベントNPCで、イベントをクリアすると武器を作る! みたいなことは言い出すけど……」


 ちなみにこのイベントは武器製作支援イベントとして知られている。

 鍛冶師の娘フィーネルが一人前の鍛冶師を目指すが、女が鍛冶師なんて出来るわけがないと父親に止められる。

 それをプレイヤーが助け、色んな素材集めや鍛冶の手伝いなどをすることで、最後には父親に彼女特性の剣を見せて認められ、一人前の鍛冶師を目指して修行を始めるという内容になっている。


 プレイヤー視点では、イベントの過程で鍛冶レベルが一定まで上昇し、クリア報酬として低レベルの武器製作補助アイテムが入手できるという内容になっている。

 内容も近場のモンスターの素材集めであったり、街中で買えるものであったりするのでわりと簡単に終わる。

 同じだけレベルをあげるのに、普通に0から武器製作のレベルを上げる方法の倍近い速さで終了することもあり、認知度が高い人気のイベントになっている。


 そのNPCの武器が売っているというのは、シャインにとって複雑な気持ちだった。

 やったことがあるイベントなだけに、彼女の頑張る姿が容易に想像できてしまう。

 トライのおかげで、NPCも超がつくほど高度な対応をすることも知ってしまったため、彼女の武器なら1つくらい欲しいかな……なんて考える。


 しかし彼女は確かに鍛冶を目指したもののまだまだ駆け出しもいいところ。

 追加や続編イベントがあった記憶もないし、何よりプレイヤー用の代理販売にNPCが出品しているなんて不自然すぎる。


「ん〜? 随分売れてねぇんだな?

 一番古いのなんて半年前から残ってんじゃねぇか」


「そりゃ俺様が気に入った相手にしか見せねぇからな」


「つまり今まで誰にも見せたことは無いと」


「う゛っ、いやまぁそうなんだけどよ……」


 他愛ない話であったが、シャインはその会話をただの世間話で終わらせずに別の話を考えていた。


(ってことはプレイヤーはまだ誰も知らないってことだよな。

 武器の品質は全部同じみたいだし、また何かイベントの引き金になってるかも……)


「んじゃ一本買うぜ、オススメ教えてくれよ」


 頭より先に手が出るトライにそんなことを考える脳は無かった。

 慎重に条件を探っていきたかったシャインを無視してあっさり引き金かもしれない話を進める。


「おう、んじゃまず持ってる素材だしな、ああ1種類1個でいいぜ? あとは数だけ教えてくれりゃいい」


「うーい、ちょっと待ってくれぃ。

 えーっとまずオーガの牙が27個」


 言いながらアイテムを実体化させ、カウンターの上に置く。

 同じように全ての素材だと思われるものを次々取り出していく。


「オーガ戦士の証が22個、オーガ射手の証が1つ、オーガニウムが10個……」


「「オーガニウム?」」


「「ん?」」


 ちなみに前がシャインと受付男性。

 後がトライとトロンです。


 シャインと受付男性も文字にすれば一緒だが、シャインはどちらかと言えば存在そのものを初めて聞いたような疑問系であり、受付男性は珍しいものを発見したときの驚いたような言い方だった。


「なんだそれ、聞いたことない素材だな」


 とはシャインの言葉。


「おいおいマジかよ。

 あぁ、でも転職してねぇうえにその装備でオーガを倒したってんならありえる話しか……」


 受付男性だけがなぜか驚愕しており、しかも一人だけ納得してしまった。

 回りは……特に当事者であるトライは完全においてけぼりである。


「よぉ、おっさんよ。

 一人だけわかってねぇでどういうことか教えてくれよ」


「あ、悪い悪い。

 えーっとオーガに限らずモンスターは金属みたいな成分が含まれてるってのはさっき言ったよな?

 一部のモンスターは、その成分がモンスターの特徴を保ったまま圧縮・結晶化することがあんだよ、そのオーガニウムみてぇにな」


「珍しいのかよ?」


「珍しいか珍しくないかで言えば珍しい。

 普通に倒しただけじゃ取れないんだよ、装甲値を削りに削って1割以下にまで削らないと取得できない」


 なぜか原理は説明されず、しかもシステム的な装甲値や1割などという言葉を使って「取得方法」を伝えてくる受付男性。

 トライやトロンは納得しているようだったが、シャインだけがその話し方に違和感を感じていた。


(つまりこれもミニイベントか?

 条件は他にもあるだろうけど、オーガニウムの所持だろうなぁ。

 装甲値が落ちることを知ってるプレイヤーがどれだけいるんだか……)


「いや、しかしタイミングいいぜ。

 ちょうどフィーネル嬢ちゃんが次の段階に進みたいって言ってたからな、お前さんそれ持って嬢ちゃんのとこ行ってみてくれよ」


 またしても新たなイベントの発見である。

 シャインはその意味を理解した瞬間、鳥肌がたつのを感じた、ゲームなので実際にはそんな現象は起きないのだが。


 シャインはメインキャラを持っている。

 それなりに高レベルだし、最高とは言わないがそこそこ優秀な装備も揃えている。

 なによりイベントの類いをかなりやりこんでおり、すでに発見されているものに関しては、一人でできるものなら全てクリアしていた。


 余談だが、本人こそ知らないが、シャインはゲーム内においてそれなりに有名だったりする。

 理由はイベント限定アイテムのほとんどを所持しており、その全ての効果を完璧に把握して的確に使用することで、ゲーム内でも有数の強豪プレイヤーとして有名になっている。


 しかしそのシャインがやってきた全てのイベントが、トライによって「続き」を発見できるかもしれないのだ。

 もやもやしたまま終わったイベントなんていっぱいあった。

 続きがあるとわかっているのに、開始フラグが見つからなくて未実装だと思われてるイベントもある。

 全てが見つかるかもしれない、全てを達成できるかもしれない。

 何よりも、誰かのやった後を追うのではなく、自分達が「最初」になるかもしれない。


 ネットゲーマーなら誰でも一度はなりたいと願う、「発見者」になれるかもしれないというのは、シャインにとっても興奮してしまう状況だった。


「おぉ、じゃあ防具だけもらっとくわ。

 嬢ちゃんのとこは二人の転職が終わって覚えてたらな」


 が、トライにそんな興奮は無かった。

 むしろ本人は「え? みんなやってるんでしょ?」みたいなノリだ。

 自分がどれだけ凄い場面に立ち会っているのかまるで実感が無い。


 だからトライの代わりにシャインが返事をする。


「是非行こう、必ず行こう、死んでも行こう。

 むしろ今から行こう!」


「落ち着け、キャラ変わってんぞ」


 さすがに二人の転職を優先させることになったが、絶対行くと心に決めてシャインは転職へと向かうのだった。


 この後、通常会話で転職を進めた結果、ロックタートルで入手していたらしい岩鼈甲がんべっこうを持っていたため、同じイベントを三人揃って行うことになった。


本格的な冒険・・・まだまだ先になりそうです


トライ君はいつになったらタイトルに追い付くのでしょう?


※2012/8/27

メタ発言を修正

冒頭の読者に話す部分を削除

オーガニウムに関するシャインと受付男性の言い方の違い部分を修正

※2012/9/5

文章を全体的に修正、内容には変化なし

※2012/11/5

リストに羅列された文字郡→文字群


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ