77 筋肉ですっ!
凍りつく部員。
背後の体育館脇の小径からカツカツ聞こえてくるピンヒール音。しなるムチが空を裂いた。
「整列っ!」
キャプテン藤堂が号令の声を迸らせた。
じゃれ合ってボールを蹴っていた部員は、女王様への忠実なシモベよろしく乱れのない隊列を組む。
「碧人、おまえ何してんの。早くこっちこいよ」
早坂がチッと舌打ちして、整列をせずに群れからはみ出ている魔王を注意する。そんな矢先、
ビュッ
「ひいっ」
ムチの音に背筋を冷やすシモベ達。
だが、ただ一人、胸を熱くする者がいた。魔王。
最後に一目だけ。込み上がる感情で涙がぽろ――
カツッカカカッ!
(……へ?)
不自然な音。
ピンヒールの着地点がぶれて、美神が転倒する空気の乱れがあった。
飢えた雄豚達の股間が燃え上がる。
タイトスカートのままズッコケた美神。その両太ももの間に見える魅惑の三角地帯。純白レースのパンツ。
雄豚どもが一斉に上半身を屈めた。ただ、上半身を傾けた姿勢で、顔をねじり上げ、がっつり美神のパンツをガン見している。
「白」「レース」「むちむち」「清純な白」
部員達の幸せな時間が永遠に続くはずもない。
「何見てんの、この小汚い屠殺豚どもがあああああああっ!」
スパアアンッ!
ムチが大地を叩き、土埃が舞う。
「ひいいいいいいいいいいいいいっ」
「藤堂」
美神がドスをきかせて尋ねる。
「わたしのパンツを見たか?」
「見てませんっ!」
背筋を伸ばし、直立不動の姿勢で、声を張りあげるキャプテン藤堂。しかし、股間がもっこりと……。
「じゃあ、その膨らみはなんだ?」
美神がムチをしならせる。
ビシッ
「ああっ……」
股間に炸裂したムチの痛みで悶絶するキャプテン藤堂は、果たして十代男子を代表する皆の主将であった。
「き、きき、筋肉です」
「……」
閉口した美神は、呆れたように鼻から息を吐き、発情豚を見渡した。
「他の者も股間が膨らんでいたが?」
「筋肉ですっ!」
迷いなく雄豚どもは声を張りあげた。
「ほう」
サディスティックに美神が顔を歪ませる。勇者アオが見せた嗜虐的な笑みよりも迫力があった。
雄豚どもに瞬く間も与えずに、美神のヒューマン離れしたムチがしなる。
次々と倒れ、四つん這いになる雄豚ども。
「ああ――っ」
悲鳴のわりに、雄豚どもの表情は恍惚めいていた。もっとムチをくださいと所望するように。




