73 変形式ハゲチャウシカナイオン
黄金色の波動の直撃を受けたアオ。
が、
「ぬおりゃあああああああ―――っ!!」
アオは青筋をメキメキ浮かせて波動を押し返そうとする。
ハゲチャウシカナイオンによって紫色に染まりかけた打撃点に、うっすら発光するサファイアブルー。紫色を圧倒しそうだ。
魔王は内心焦っていた。古の言葉どおりに強化されたハゲチャウシカナイオンであるが、それでもアオを一気に屠れるものではなかった。波動を放った瞬間、今まで感じたことのない強烈さを実感したにもかかわらずだ。
(魔王は勇者には勝てないのか……)
じりじりと押し返されていくハゲチャウシカナイオンの波動を歯噛みしながら見つめる魔王。もっと力が欲しかった。古の言葉以上のパワーが欲しい。このままでは……走馬灯のように転生してからのサッカー部での出来事が脳裏で過ぎっていく。そもそも走馬灯が過ぎる時点で破滅フラグではあるが。
魔界では経験したことのない出来事だらけだった。
戸惑いだらけだった。
だからヒューマンは下等なのだとも嘲った。
しかし――揉まれた。
学校生活で、ひいてはサッカー部で早坂やキャプテン藤堂などの部員達に揉まれた魔王は、ヒューマンの魅力は魔界にはないものだと学んだ。
パワーに劣るがゆえに、お互いを励まし合う。
知力に劣るがゆえに、学ぶ。
一人では成し得ぬ者に対して、複数人でチームをつくり対応する。
時に泣き、時に怒る。
劣る部分を強化するために、練習をする。努力をする――強くなるために。そう、ヒューマンはヒューマンなりに頑張っている、頑張っていた。そんなヒューマン達に圧をかけていた魔界での自分が情けないと心底思った。
だから、守らなければいけない。
せめてこの世界のヒューマンを、これからは魔王が守らなければいけない、そう強く願うようになった。
アオに押し返されていく波動は今や小さな玉程度に圧縮されていた。恐るべきアオの力だ。これだけの想いを込めて放ったハゲチャウシカナイオンも、やはりダメなのか。
波動がもう、魔王の目と鼻の先に迫る。
打ち返せると確信したアオが、踏ん張りながらも頬を緩めた。
「ははははは、残念だなミスティゾーマ。ほーら、おまえのハゲチャウシカナイオンは今やちっこい玉だぞ。まるでサッカーボールだな。サッカー部員に転生したおまえにおあつらえ向きのサッカーボールを喰らって、二度目の死を迎えろよ」
けけけけと嘲笑するアオ。
(……サッカーボールか)
魔王の頭に閃きが走った。
今まで攻撃呪文は手で放つことしか考えていなかった。もしくは魔導士の杖から放たれるもの。
でも……それだけじゃない。
魔王は校庭でのシュート練習を思い出していた。グーパンでひしゃげさせる顔面の感触に似ているから、何度もシュートを打った。蹴り、破裂させたボールの数はいったいいくつになっただろうか、数えきれない。
アオの背後に、あの品性の欠片もないゴールが見えた。
すると、魔王の体が勝手に動いた。この世界に転生して数えきれないほど練習してきた動きを――魔界でアオと対戦した際には、考えもつかなかったことを、この世界にきてパワーアップしたやり方での攻撃を、まさに魔王はする!
「だりゃあああああああっ」
魔王は回し蹴りをするように、足を振り上げ、そして蹴った。
波動を――サッカーボールのように圧縮されたハゲチャウシカナイオンの黄金色の波動玉を。




