71 ぶしゅううううっ
乾いた笑い声の中に、
「あ」
艶めかしい声が混ざった。
ぴたりとアオと魔王の動きが止まる。2人とも上体を屈めた。
(いつの間に……?)
すぐ近くに、目を覚ましたマミりんがいた。ツンツンさせながら目を爛々と輝かせて見つめる先には、かっさばかれた魔王の腹。つまりは、吹き出す血。
だが、それ以上に、マミりんの顔つきには今まで見たことのない真剣さがあった。
「けけけけ、で分かりました。けけけけさん……怒っていいですか? いいですよね。嫌いだもん」
彼女の声色から色気は消えていた。
そもそもこのような言葉をマミりんが言うなんて。その場に居合わせた結菜も魔王も目を点にさせる。
そもそも、けけけけで何が分かったというのか。また、『けけけけさん』という単語に対するツッコミもある。
「貴様、どけ」
けけけけ扱いされたアオが、苛立たし気にマミりんをどかそうと手で薙ぎ払う。
「あ」
あふれ出るマミりんの決意とは裏腹に、彼女の戦闘力は、しょせんはヒューマンである。むなしくてれんてれんと路面を転がるマミりん。破砕されたコンクリート片だらけなので、途中で服が破れた。わき腹から胸あたりが露になる。絹のように白い肌と――。
「な」
声をあげたのはアオだ。
マミりんの破れたブラウスから、ピンクのブラジャーが覗いている。以前、マミりんが勇気を出してネット購入したもの。
ほんの一瞬、マミりんがしてやったりの表情を浮かべた。
ぶしゅううううっ。
鼻から血を吹き出すアオ。
「ず、ずるいです。ま、マミりんさん」
ちょっと離れた所から声があがる。
「あ、碧人君に、ももも……モーションかけるなんて。だったら、わわわ、わたし、だって……」
えいっ
気の抜けた気合の声とともに結菜がそれぞれの手で髪を左右に束ねた。いわゆるツインテール。その髪が黄金色に輝いた。
「なっ!」
今度は、魔王は目を見開き、声をあげた。
ぶしゅううううっ。
2度目の鼻血をぶちまける勇者アオ。




