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7 結菜の部屋

◆◇◆◇


 帰宅し自室のカーペットで女の子座りの結菜は、物思いに耽っていた。


 復帰した碧人に会えた。それがこの上なく嬉しい。

 彼は自分のヒーロー。わたしは忘れない……彼がわたしを助けてくれたことを。

 ダンプに()かれそうになった時、彼は恐怖に立ち向かい、その身を盾にしてくれた。まるで勇者みたいに。

 ふと、記憶にない言葉が結菜の脳裏を掠めた。

『勇者の卵くん』

 どうしてそう思ったのか、結菜自身にも分からなかった。

 思考に耽っている際に、あ、ちょっとお尻を触られた気もする、と感じるも、何故か碧人相手なら笑って許せる気がした。まるで弟のおふざけみたいだ、と。


 そういえば――、

(碧人君と目が合った時、彼はわたしの髪に触れようとした)

 一瞬の出来事だった。すぐに彼は手を引っ込めた。

(わたしの髪を束ねようとした? おさげ? ……ツインテール? ひょっとして、この髪をツインテールにしたら……)

 結菜はスマホ画面を鏡にして自身の髪の片側を束ねた。……悪くないかも。これが両方になる、と。

 顔に血がついていることに真っ先に気づけよ、とつっこみたいところだが、血まみれが彼女の日常である。血ごときで彼女は1ミリも感情を動かされない。

(やってみよう)


 部屋の窓から湿気の多い風が吹きこんだ。束ねた髪の先がゆらりと揺れる。

 結菜は、自身の髪をきつく握り込む。

 ツインテールの髪が、神々しく光っていることに、彼女は気づかなかった。


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