69 これが――、結ばれたミスティゾーマとザキラスティアの真のチカラ
「なっ!」
けけけけと薄っぺらく笑っていたアオが表情を厳しくさせた。直後、
ドンッ!
光波動が放射される。
片腕でザキラスティア(美神)を抱いたミスティゾーマ(魔王)による打撃呪文だ。
「があああっ」
モロに直撃したアオは吹っ飛んだ。ゴロゴロと路面を転がる。
その途中、アオは結菜にぶつかった。
「うーん、むにゃむにゃ……あれ、あ、碧人君。な、なんか、あ、蒼い鎧を着てますね。ところで碧人君は、どどど、どうしてか弟みたいにいじらしく感じられる」
寝ぼける結菜はまだ夢の中。
「わ、わたし、うううう嬉しかった。ダ、ダンプに轢かれそうになった時に、あ、碧人君が、わ、わたしを守ろうとしてくれたんだ。み、みんな、わ、わたしを避けるのに。あ、碧人君だけは違った。だ、だから、その時から――――……くかー。うーん、むにゃむにゃ。でも、な、なんだろう、『お姉ちゃん』って懐かしい声を聞いたような、あとちょっとお尻を触られた気も……うーん、むにゃむにゃ」
再びの眠りに落ちる結菜。
そう。
これが、碧人がダンプに飛び込んだ真相だ。
『そんなの関係ぇねぇっ』と結菜にアタックしようとした転生前の大空碧人(性欲最大値振り切れ中)が、結菜の尻を触った瞬間、ダンプ事故に巻き込まれた。
だがしかし、因果はそれだけではなかった。転生前の結菜の弟。姉ちゃんを守ると意気込み、挙句、殺された弟が転生したのが、ジャパンでの大空碧人であった。
つまりは、転生前の結菜の弟・アオ(兄弟子トップ達に殺された)
→転生後のジャパンの大空碧人(結菜を守りたく・ついでにお尻も触りたくダンプに轢かれそうになった結菜のもとに飛び込む)
→転生後の勇者・アオ、であった。
かなり複雑である。
この複雑な因果を作ったのは、言うまでもない、例の転生神である。
打撃呪文の威力の凄まじさを物語るようにゴロゴロと転がり続けるアオ。
今度はマミりんにぶつかった。その衝撃で、
「ごおおおおお、お、おお?」
鼾をかいていたマミりんが半ば覚醒した。
「ふにゅにゅにゅ~。もう一度見たいな~。碧人君と結菜がダンプにぶつかった時に、碧人君からぶしゅばああああって血が吹き出た。その現場をまた見たいな~。せっかくスプラッターな機会への遭遇回数を増やせると思ってサッカー部のマネージャーになったのに~」
(……)
悲しいかな、マミりんも寝言で真相を暴露する。
ツンツンツンツン。お眠り中でも、その時を思い出して興奮しているのだろう。いや、マミりんは無意識の中で、母を思っていた。村人を惨殺された光景を脳裏に描いていた。無意識の中で矛盾するかのように、マミりんは怒りを覚えた。他人に対して初めて抱いた強く烈しい負の感情だった。けけけけ、といやらしい声さえ脳裏では忠実に再現されていた。
ゴロゴロと地べたをローリングしていたアオが、ようやく起き上がった。
髪は乱れ、途中でウ〇コの上を転がったらしく、自慢のサファイアブルーの鎧がクソまみれだ。
「このクソがああああああああっ!」
(おまえだろ)
勇者の威厳を傷つけられたアオが猛る。上段に構えたエクスカリバーの切っ先が闇夜を割いた。
雷がエクスカリバーに落ちた。
雷雲からかき集められた稲光がパチパチと弾け、アオが上段で構えるエクスカリバーを黄金色に輝かせた。
「ドギツイの来るわよ」
「ああ」
魔王はシールド魔法を張った。
ぶおおおおおおおおおおおおおおおおん
さっきとは桁違いにぶ厚い壁が魔王たちを囲む。
「足りないわ」
シールド魔法を唱える魔王の手に、美神が手を添える。
重ねられた手に温もりを感じるや、瞬時に発光した。
密かに魔王は絶句した。自分だけではここまでのシールドを張ることなどできない。
これが――、結ばれたミスティゾーマとザキラスティアの真のチカラ……。
ちょいと短編を書いちゃいました。
先ほどアップしましたので、ご覧いただけましたらめっちゃくちゃに嬉しいです!
原稿用紙3枚分ほどの短編です。
⇓
https://ncode.syosetu.com/n2741lt/




