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【日間ランキング84 位 ありがとうございます!】転生魔王はドS・ポンコツ美女たちと高校青春をenjoyする  作者: ヤマト・ロココ
第Ⅱ部 勇者アオ襲来 戦いの果てに

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68 〝処女魔王と魔王とが結ばれし時、偉大なるチカラが生まれる〟 ちゅーでもいい。

 魔王の胸に、彼女の温もりが伝わった。それは魔王自身の熱と合わさり、いつしか力が(みなぎ)っていた。青臭いけど、勇気みたいなものがぐんぐん湧いてくる。


 不意に、サッカー部に参加したての頃を思い出した。

 ――いいんだよ、ケガを押してまでやり遂げなくてもいい、おまえがケガを引きずる方が俺達には辛いんだ。先輩! だったら俺がおまえの分まで走っていやる。先輩!


 クソ茶番とこきおろした魔王が、結局は衝動につき動かされて「おまえの分は吾輩が走る!」と駆けた顛末(てんまつ)

 あの後、一時とは言えヒューマン属性に染まった自分を、魔王は悔やんだ。


 でも……、しかし……とても美しい自己犠牲だったじゃないか。

 魔王としては学べなかったものを、ヒューマンから学んだ。

 それは、心の豊かさ。感情の機微。相手への思いやり。


 だけど恥ずかしくて、魔王は認めたくない。

「あんた」

「……平気だ」

 大丈夫なはずない。


 ずしゃっ。

 魔王と美神とが錐もみ状態で地面に落ちる。


「なーんか、お熱いねー。抱き合いながら落ちるなんて。けけけけ」

 ひゅー、とアオが口笛を吹く。

 魔王は前髪に手を触れ、灼熱の業火を放った。

 アオが一瞬にして炎に包まれる。これで少しはダメージを与えられ――

「だからさ~」

 燃え盛る火だるまの中から、呆れ口調の声がした。続く、パチンと指のクラップ音。

 炎が消え、無傷のアオが苛立たし気に魔王を睨んだ。

「くそー、暑ぃな。クソみたいな火でも梅雨に浴びると蒸し暑い、イライラする」


 サファイアブルーの(かぶと)をアオは脱いだ。

 アオの顔全体が(あらわ)になる。目もとのほくろ、顔のパーツの何から何まで、まさに、魔王が転生している碧人と同じ顔だ。


「嫌になるよなー、目の前に自分がいるって。ドッペルゲンガーじゃあるまいし。しかもそれが弱いって。ムカつくこと100倍だろ」

 脱いだ兜をアオが指先でクルクルと回し始める。

 力の差に余裕を感じたが故の戯れなのだろう。転生前の碧人はそういう者だ。自分よりも弱いとみなすや徹底的に相手を貶める。勇者たる人格を有してはいない。

 ……『ここマジ、ちょーブラック』め……。


「碧人。いや、ミスティゾーマ」

 美神が魔王の耳元で呟く。息がちょっとこそばゆかった。

 そんな2人の仕草を、アオは目ざとく捉えて、

「じゃあ、殺す前に1分やるよ。おまえらそこでチューしちゃえば。けけけけ」

 と、再び兜を回すことに夢中になり始めた。くるくると結構上手に回っている。


「キスしなさい」

「へ?」

 アオのチュー要望にマジで応えんの? いや、それよりも――ごくりと魔王は唾を飲み込む。

 こんな危機的状況の中、魔王の鼓動はドキドキと高鳴っていた。

 この気持ち……しかもその相手がキスしなさいと言う。

「早く。キスして」


 美神が目をつぶった。

(!?)

 美しいメスなど見慣れてきた。妖艶、華やか、可憐。

 それなのに、美神がキスをせがむ顔は、魔王の心を射貫いた。

 同時に〝守りたい〟との熱量が(かさ)上がっていく。

 これはきっと運命。

 魔王は魔界で独身を貫いた。縁談すべてを断った。容姿も性格も器量もすこぶる上等なメスであっても。

 きっと、この時のため……だったのか――?


 知り合ってせいぜい2カ月の美神。いや、ザキラスティア。

 だが、きゅいんと心の奥深くで共鳴する。お互いの魂が、『魔王』という共通項を通じて、通じ合い、ひかれ合い、愛し合う。


 魔王は、そっと首を傾けた。

 鼻先どうしが軽く触れる。美神の唇に自身の唇を重ねた。想いを口から伝えるように、心を込めてのキス。


 ふと温かい光に魔王と美神はくるまれた。

 そのことに気づかずに、2人はお互いに目をつぶり、接吻(せっぷん)中だ。

 命尽きる今わの際に燃え上がった情熱。二人は持てる魂をすべて注ぎ込み合い、高め合い――。


〝処女魔王と魔王とが結ばれし時、偉大なるチカラが生まれる〟


 で、それは、ちゅーでもいいらしい。

 偉大なるチカラが、2人を包む。

 2人を(まゆ)のようにくるむ光の輝きが増した。明らかに純度が濃い。


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