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44 無理だったら、あなた達、30日間××××禁止だから


「みな、そろったかしら」

 珍しく部活の最初から顔を出した美神を前に、部員達は緊張した面持ちでかしずいていた。今日も美神はタイトスカートである。湿気を孕んだ初夏の空気は、息を吸うだけでも肺にダメージが蓄積されていくみたいだった。実際、部員達はハアハアと息を荒げている。


 美神は生足だった。


「藤堂」

「はいっ!」

 威勢よく返事をして、顔を伏せたまま美神の前へ行き、膝まずいた藤堂。チラっと生足に視線をやるや、苦し気な呼吸になる。


「おまえも含め、みな呼吸障害を起こしているようだが」

 その言葉を心外に思う魔王。吾輩は生足ごときで理性を狂わされる男ではない。だが、チラっと目を向けた。ツバを飲み込んでしまった。

(なにっ!)

 その生理現象に納得がいかない魔王。吾輩はジャパンで毒されてしまったのか、と内省の海に沈んでいく。そんな魔王をほっといて、藤堂は部員を代表したキャプテンとしての回答を美神にする。

「みな、集合前にグラウンドを走っておりました。決勝トーナメントへの準備は万端です」


 嘘である。美神が現れる直前まで、部員達はきゃいきゃいとボール遊びをしていた。


「ほう、何周した? 顔をあげて答えよ」

 美神の声色が心なしか冷たくなった。

 まさに藤堂のメンタリティが試された瞬間であった。

 キャプテンに相応しいポーカーフェースで藤堂が顔を美神に向ける。同じタイミングで、暑いのか、日焼け対策用に羽織っていたドライ仕様のユニ〇ロの上着を美神が脱いだ。


 美神はノースリーブだった。腋からすらりと伸びる生腕が陽ざしを受け、白く発光した。いや、それよりも一瞬垣間見えた艶めかしい美神の(わき)に、藤堂は反応した。藤堂は腋フェチであった。


「フぁッ……」

 思考が吹っ飛んだ藤堂は、モブキャラのごとく息を吐き、固まった。だがしかし、藤堂はやはりキャプテンであった。一般高校生よりちょっとだけ強いメンタリティを発揮し、一拍の後、ハキと答えた。

「30周です」


 だが、部員達がヒヨった。

(え? 30周はちょっと誇張しすぎじゃね)

(俺、そんなに走れないし)

 頭の回転が速い者は、すぐにハアハアと呼吸をもっと苦しそうに、いかにも30周を走った感を(かも)しだす。

「ふうん」

 その美神の一言で、部員達の間に強烈な緊張が走る。

「部多谷」

「ぶぶぶぶひっ!?」

 まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのだろう。屠畜される間際の断末魔の叫びに近い反応を示す部多谷。


「ボ、ボクっちに何の用ぶひー」

 ぱっつんぱっつんのトレーニングウエアが、部多谷がしゃべるたびに悲鳴をあげている。

「明後日までに30キロ痩せなさい」

「――――ひぶっ!!」

 目を点にさせて廃人(豚)となった部多谷をねめつけながら、美神が説明した。

「あんたカルロスにふっとばされたでしょ。デブのくせに。中途半端に軽いデブは要らないの。だったら、痩せてスピード型になりなさい」


 ブラジルのサンパウロFC出身のカルロス相手じゃしょうがなくね。部員達の誰もがそう思うも、口にできる者はいなかった。

 明後日までの2日間で30キロ減量するこがヒューマン的に無理であることに気づけよ。魔王が美神に進言しようと口を開こうとした。


「無理だったら、あなた達、30日間××××禁止だから」


 びゅおおおおおおおおッ――

 一瞬にして凍え死ぬ地球環境貢献予定軍団。

 今日も夜ご飯を『やにわにステーキ ―素敵なあなたと アイ ミート ユ~―』で食べる予定だった部多谷に、地獄が訪れた。


またもこのネタですみません……w(←草って最高。遠い目をしながらキーを打つ)


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